全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

22 2017
サクラダリセットは、残酷で優しい物語。

サクラダリセットBlu-ray BOX1
KADOKAWA / 角川書店 (2017-07-26)
売り上げランキング: 16,936


これは決して目立つような作品ではない。劇的に感情を揺さぶられるような作品ではない。でもずっと胸に響くような心地の良い鈍痛だった。どうしようもなく残酷なのに、優しい思いで溢れている。その相容れない2つの感情と状況が、同居しているのがすごいと思った。

キャラデザは居たって普通、主人公とヒロインの話し方は単調。しかも序盤は哲学的なような会話劇が中心でキャラクターたちにおよそ感情の動きが見られない。私はアニメから入った人間なので、すぐに感じたことがある。今でも思うことがある。『これは間違いなく円盤が売れるアニメではない』

でも、すっげーーーーーー胸に響くんですよ!

最後まで見たらあそこの会話はあの伏線だったのかーとかあの行動はあの想いからだったのかーーとか終盤にかけて一気にピースをはめ込んでいく爽快感も味わえる。この普通なキャラデザも、話し方が単調なのも、哲学的な会話も全部伏線となって全てが返ってくる。そうして気づいたキャラクターたちの真意に本当に心から胸を打たれ、この物語を見届けて良かった、と心から思えた。声優の演技も、アニメの演出や作画も、BGMも、ほぼ完璧に仕上げられた『メディアミックス』であることに二重に感動した。サクラダリセットとをアニメ化してくれた人たち本当にありがとうございました、この作品に出会えて良かった。と思っている今です。

じゃあ具体的にどういう物語なのかというと、能力者がいる街・咲良田市が舞台。能力バトルではあるけれど、主に頭脳戦と言った感じで、主人公浅井ケイは完全記憶保持、ヒロインの春埼美空は3日間の世界の再構成(世界を3日前の状態に戻すリセット)を能力として保持している。そしてその二人を引き合わせた相麻菫。主にこの三人の物語。
能力には強度があり、例えばリセットを使っても浅井ケイの能力の強度の方が強くリセットされる前の記憶も保持される……と言った感じ。能力には条件があったりなかったりする。基本的にはそんないろんな能力者とのあれやこれやなんだけども、それも全て伏線だったとわかった時の衝撃が本当に心地よい。何もかもが重苦しくて痛々しくて心地が良い。

シナリオについてはとりあえずネタバレすると衝撃も感動も魅力も削がれちゃうので、とにかく見てくれというぶん投げた感想しか残せないのが辛いところ。アニメはとりあえず4話まで見て、主人公浅井ケイの狂気に触れてください。2話まではちんぷんかんぷんで、浅井ケイに「何だコイツ」と大半の人が感じると思うが、それが後々に「ああ、あの感情はそういうことだったのか」と知ることが出来る。なんかもう殆どが伏線過ぎて何も言えない。

でも、他にもこのアニメはすごいところがたくさんあるんです。
まず第一に声優の演技。主役の三人の演技が本当に素晴らしい。浅井ケイは石川界人、春埼美空は花澤香菜、相麻菫は悠木碧で引っ張りだこな声優さんを主役に添えてるんだけども、三人共素晴らしかった。というのも主役三人共感情表現が乏しい。泣いたりすることも殆ど無いし怒ったりすることなんて全くと言っていいほどないし、笑ったりするのがたまーにあるかなぐらいで、その年にしてどういう育ち方してきたんだよと心配になるレベル。でもこれにも全部理由がある、すごい。そしてその演技力バリ高なのに感情表現の薄い演技がクセになる。物語が進んでいくに連れて、彼らの感情にも動きが出てきて、それを見事表現しているのが素晴らしい。
特にすごいと感じたのは、悠木碧ちゃんの「悲しい」という感情から来る演技。相麻菫は殆ど自己を見せないキャラクターなのだけど、とあるシーンで絶妙な声の震えで感情表現をしていたのが本当に素晴らしかった。自分はヘッドホンでアニメを見ているのだけど、ヘッドホンで聞いていたからこそ聞こえるレベルの繊細で些細な表現だったんだけど、それがまた相麻菫らしくて良い。相麻菫は自己を守る壁が強固で頑丈だけど、思わず出た動揺と哀しみが震えた声に乗せられていて、何度も何度もシーンを見返した。一緒になって苦しめた。

良いとこもっとあるんだけど、ネタバレせずに伝えるのが本当に難しい。自分はアニメ→小説を読んだ人間なのだけど、雰囲気を良く表現してくれているなと感じたし、BGMや間のとり方、長い小説の中で必要な表現を選ぶ取捨選択が良いと思った。小説を読めば各々の感情がより理解できるけれど、アニメはアニメとして、表情等の原画や演出でそれを表現してくれていた。小説では分からない、視覚や聴覚に訴えるものがアニメとして表現されていたのがとても嬉しかったし心地よかった。主役三人共も感情表現が乏しいからこそ、その心の機微を感じ取って上手く表現されていたように思う。

小説は小説として、アニメはアニメとして、表現できることをめいいっぱい表現してくれた事が嬉しかった。もっと劇的に分かりやすい表現に改変すれば、もう少し色んな人の目を引く作品になったのかもしれない。でもこのアニメは、原作を大事にしつつ、アニメはアニメなりの表現で描いてくれた気がするのです。派手さの無いキャラクターデザインは主題の話を壊さないし、あまり動きのない作画もここぞという表情の表現にぐっと胸を打つものがあった。アニメを見てわからなかった部分は、原作を読めば繋がるし理解も深まる。そういうアニメと小説の相互関係も良かったなと。アニメはやはり描写不足ではあるけれど、原作を手にとって見たくなるような余白な部分もあったのは逆に良かったのではないかな。
この作品は決して売れる作品では無いだろうけれど、最後まで見た人の心に何かを残してくれるような作品であったように思う。


ま、そんな建前は別にして、売れてほしいなあ。最初っからBOX発売でお財布にきっついですが、私は毎話腐るほど見直したぐらいこの作品が大好きですのでお財布が頑張ってくれる限りはついていこうと思っている。終盤は怒涛の展開なので、声優さんの繊細な演技力が遺憾なく発揮されていてその演技を聞くために何度も何度も見直した。お三方のファンの方は特に聞いたら楽しめる演技だったと思います。演技に胸を打たれたのは本当に久々だった。

導入部は小説の方が入りやすいとは思う。アニメは小説とは順番が違うのだけど、アニメはアニメで良かったと思った。理由についてはネタバレ含んだ感想で後述します。
小説については、角川文庫と角川スニーカー文庫から出てるけど、スニーカー文庫の方が挿絵があるのでおすすめです。この挿絵が本当に美しい。個人的に好みの絵柄ですごく良かった。

サクラダリセット  CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)
河野 裕
角川書店(角川グループパブリッシング)
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ぶっちゃけるとこのアニメを見始めた理由は「今期の石川界人補給アニメにするか」程度で、1話見た時はキャラクターが何を喋ってるのか半分も理解してなかった。2話以降を見るか本気で迷ったくらいだ。でも見るたびに次を楽しみにしている自分に気づいたし、2クール目に入ったぐらいで気がついたら小説を全部買っていた。挿絵のためにスニーカー文庫の方を買い直したぐらいだ。そしていつの間にか石川界人そっちのけでアニメにのめり込んでいた。いや、石川界人氏の演技力にものめり込めたけれど。

サクラダリセットという作品に出会わせてくれたアニメに本当に感謝。このアニメを作ってくれた皆々様に本当に感謝。優しいのに激重で窒息しそうなほど息苦しいこの物語が、私は大好きです。

以下よりネタバレ感想です。
17 2017

何度もプレイしたゲーム

1位はおそらくテイルズオブジアビス、2位は三國無双2、3位はスマブラ(64)とかそのへんかなあ……と思いつつ。アクションってハマるとプレイ時間が半端なく長くなるしその時間が苦痛じゃなくなるんだよな、すごいなって思いながらの雑談。


●三国恋戦記に関する雑談
色々言われてるし、色々言ったけど、なんだかんだ魁恋戦記、楽しみました。前作恋戦記の記憶を頑張って拭って評価しても、まあそれなりな普通のゲームだったんじゃないかなと。でも私が一番気になったのは、作りの雑さなんだよなあ。これはヴァルプルガの詩のときからこの傾向があって、シナリオの適当さ加減が辛かった。なにより一番適当シナリオだったのが前作の根幹にかかわるライターだったのだから、シナリオのできの悪さよりそちらのほうが悲しかった。例え二次元でもキャラクターとして産んだ以上は親(製作者)には可愛がって貰いたいものです。だから自分はできの良し悪しに関わらず、作り手が「これが作りたかったんだ!」ってプレイヤーに伝わってくる作品は憎めないし好きになる傾向がある。そういう作品って必ず味があるからだ。前作はそれがヒシヒシと感じられたから、出来もよく何度もプレイしたくなる作品になれたのだと思う。

途中からもう前作をプレイし直したくなってウズウズしてしまって、引っ越しの際に売っぱらったのを買い戻してプレイしたら、もう雲長とか孔明とかの反応で序盤から崩れ落ちた。前作は二週目以降にキャラたちの反応に対する印象が大きく変わるのが上手い作りだ。だから何度プレイしても新鮮さがあるし、楽しい。そして苦しい。
自分はフルコンプしたADVゲーを振り返ることはそうそうないし、2週以上したのは両手で足りるぐらいなのだけど、恋戦記は今回で三週目に当たるのが、思い入れの強さを物語っているなと。魁の出来はまあ残念だったけど、私が好きなのはこの作品なのでそういう意味では大したダメージはなかった。あとヴァルプルさんの存在はやっぱり大きかった。ヴァルプルさんも今プレイしたら印象が変わりそうな気がする、約一名を除いて。

なんだかんだ言ったけど、魁→前作恋戦記をたどると、魁のキャラがあそこで頑張ってたなあとか、恋戦記のあのキャラもあの時頑張ったから今があるんだなーとか思うとなんだか感慨深い。仲穎は皆が言っていた醜悪な見目を体感できる(言うほど醜悪ではなかったが)。ちなみに前作の用語辞典には本初・華陀以外が載っていた。華陀はまだしも本初がないのはちょっと笑った。
前作をプレイしたことがない人は是非とも魁→前作で恋戦記の世界に浸ってみて欲しい。と肩までどっぷりな人間がそう申しております。

ちなみに無印三週目の感想はすでに7年前に書き終わっている個別の感想記事に追記していこうと思っている。久々に自分の感想を読んで、だいぶ感想の書き方も変わったわなーなんて思った。感じ取り方も大きく変わったような気がする。ちなみに物語を追っていく書き方は今の私にはできん。理由は時間がないからだ。過去の自分は暇だったのだ。
私が感想を書く理由の第一は、過去の自分がどう思ったのかを未来の自分が振り返るためなのだが、そんな未来の自分である今の自分が昔の感想を読んで思ったことは、一周目にプレイした自分はパワフルでエネルギッシュでアホのようにゲームを楽しんでいて我が事ながら羨ましいっす。記憶をなくして孟徳ルートとかもう一回プレイしておっぱいだおっぱいおっぱい!とかIQを地面に埋まるぐらいまで下げて叫びたかったし、でけえ妾御殿!すげえ!とか言って腹抱えて爆笑したかったし、孔明ルートで二度と立ち上がれなくなるぐらい膝から崩れ落ちたかった。
そう感じるゲームに、出会える未来があると良いな。おっぱいに出会いたい。エロゲーで出会うおっぱいと乙女ゲーでふいに出会うおっぱいは違うんだよ!(拳を握りながら)

というわけで無印恋戦記は三週目でも楽しかった。EDの個別イントロは、初めて攻略したときのことを思わず思い出して二重に感動したなあ。何度もプレイしたくなるゲームが良いゲームであるとは限らないけれど、自分にとって特別なゲームであることは確かなようです。

あ、そうだ。初攻略から七年経ってからようやく3メイン+孔明のドラマCDを購入した。聞くのも楽しみだけど感想を書くのも楽しみだ。
ちなみに思いでがえしはエロネタいっぱいで滅茶苦茶萎えたので売っぱらったままです。雲長の後日談だけは記憶に残っててもう一度みたいなと思って買い戻そうか迷ったけど、エロネタがなあ。魁でもそうだったけど、一般ゲーでの不必要なエロネタは邪魔くさいとさえ感じる。上でおっぱいが妾御殿がとか言ってる人間が何をほざいとるんじゃと自分でも思うけれど、性行為とおっぱいはちがうんですよ。
最近になって気がついたけど、行為を匂わせる程度の描写の中途半端さも嫌なのだと気づいた。私は壁に耳を当てて喘ぎ声を聞きたいんじゃない。襖を全開にしてくれ。

それにしてもまさか恋戦記三週目に突入するとは思わなくて魁を初める前にプレイしていたブラハが停止してしまっている。ブラハもブラハで面白い部分もあったんだけど、攻略対象に感情移入が出来なくて若干クリックする機械と化してしまったのがなんともかんとも。


●ついでの三國無双の思い出
戦国無双もやったけど、三國無双のがやっぱり好きです。でも私の中の三國無双の記憶は3ぐらいで止まっている。2はやりすぎて3D酔いして吐く寸前までプレイしたあの懐かしい記憶が蘇る……あの頃が一番ゲームを楽しんでいた気がするなあ。いま主でプレイしているADVも楽しいっちゃ楽しいんだけど、私の中ではADVはあくまでも読み物で、ゲームではない感覚が強いです。
恋戦記で三国志熱(?)が復活したので7with猛将伝を購入したけれど、故郷へ帰ってきたかのような安心感でした。董卓はやっぱこうでなくっちゃな!ってほどの醜悪な見目だった。恋戦記の仲頴が周りからこう見られてるんだとしたらやっぱツライな、乙女ゲーフィルターってやっぱ大事。
コーエーは今ではネオロマの方でよくお世話になっているけども、もともとの始まりは三國無双だったなあと。女の子のキャラクターが好きで小喬ばっかり使ってました。でも小喬の夫が周瑜だと知って「あんなロン毛の…手籠めに……」と当時の私はかなりショックだった記憶が今蘇った。前にも語ったかもしれないけど、孫策の汗が飛び散るムービーで弟と二人で喘息引き起こすまで大笑いしたあの懐かしき楽しい思い出よ。ADVは一人でも楽しめるけど、アクションは絶対2P以上が楽しい。ゲームってやっぱ誰かとわいわいやって時には友情を、時には亀裂を生むのが良いです。今プレイされてる新作ゲームも、あと10年もしたら「名作だったね」と過去のように語られるんだろうなあ……。

全然関係ないんだけど、装甲悪鬼でちんこ晒してたあのお方によく似た声が聞こえて「あっ……ちんこ晒してた人の声が聞こえる……」ってなったのがホントどうしようもない。ちなみに装甲悪鬼やってた時も「あっ……頭から触角生えた人の声が聞こえる……」ってなったのを思い出した。演技も声もだいすきなお方です。

次は横山三国志を読破したいなあ。ネタはよく知っているけど、読んだことはないので。


●アプリゲーの話
FGOはイリヤピックアップで全部の石を砕いて粉々にして出てきたのがギルだったので、イリヤ最萌の私は暴れまわりました。お前、物理的な意味でイリヤのハートキャッチしたやつやんけ。
起き抜け一発の物欲センサー作動してないときに回してギルが出たときの心情はとても言語化できない。とりあえず笑った。
FGOは一度も課金したことはないけど、月姫のアルクが出てきたら課金するかもしれない。出てこないだろうけど。月姫リメイク?そんなのは夢幻なので、真月譚月姫というアニメを見て頭を混乱させようと思います。

シャニライはとりあえず一回目のイベントが無事何事もなく終了して拍手を送りたい。DLもロードも高速で、混雑が予想されるイベント終了間際も通常営業を貫いていた。石もたくさんサービスしてくれているし、うたプリという作品の中でこれほどまでに丁寧に作ってくれたコンテンツを提供してくれるとは思わなくて、お礼の意味を込めて課金した。微々たる課金だけど、中のスタッフさんたちにこれでおいしい昼食でも食べていただければ幸い。なんとなーくシナリオを読んでみたけれど、普通で楽しかった。何度も言うが、私がうたプリゲームに求めていたのはこの普通さだ。普通であることの素晴らしさよ。
次は最萌のトキヤURイベントなので課金した石はすべてかち割ろうと思う……ちなみに物欲センサーマックスなのか、私のアカウントはトキヤ率が異常に低い。逃げられているのか。避けられているのか。ちなみに笑えるほど出るのは、一回目の11連で見事SRをだぶらせた一十木音也氏です。イベントの一十木氏もお出迎えしたのでさらに一十木氏だらけです、いや、好きだからいいんだけどここまで偏るとは思わなかった。
欲を言うなら初期曲をもう少し増やしてほしいけど、それはまあ徐々に増えていくだろうと予想しつつ。あと難易度もうちょっと難しくしてほしい……体力ギリギリだけど最後まで叩けたー!っていう快感がほしい。
それでも丁寧なコンテンツではあるので、私のアプリゲー体力が続いていく限りは、細々と付き合っていこうかと思っています。


もうそろそろ秋アニメの開始だなあ……アニメ業界もネタが尽きたのか過去作のリメイクが多くてちょっと悲しい。原作ありもいいけれど、オリジナルアニメ好きなのでもうちょっと増えてもいいと思うんですけどね。お金の問題か……悲しいなあ。
10 2017
魁ってタイトルが初出され、それを見て合言葉のように男塾!!と叫んだあの時から、フルコンプの今があるのがなぜだか感慨深い。続編をプレイ出来るとは思っていなかったので、そういう意味ではプレイできて良かったなと思える出来ではあった。これは自分が求めていたような恋戦記じゃないけど、確かに恋戦記の雰囲気を残していた、恋戦記のような作品。

あ、もちのろんで前作のネタバレがあります。


●華陀ルート
無印恋戦記でぶん投げた本の謎を今更ながら掘り返して頂けるとは思わなかった。でも掘り返し方が中途半端、ようやく本当の姿が見えてきたってところで掘るのを止められた。もうちょっと頑張って全部掘ってくれよ……。
というわけで本は未来で作られた、過去に飛べるお遊び的な物だったらしく、華陀は未来から本を使って飛んできた未来人だった。ただやっていれば長岡再来だなということはなんとなく察せられるし、未来人と言われてもそれほど衝撃を受けなかったのは少々残念。ちなみに華陀の発言に「バグ」とあったので、機械的なものである可能性が。分かったことはこれぐらいで、誰が何の目的で作ったのかとか、なんで未来で作られた本が過去である主人公の時代にもあったのかは明かされることはなかった。

未来では争いが起こっているらしく、それに苦しんだ医大生の華陀が本を使って過去に飛び、本を無くして戻れなくなって困っていたところを本を持って居る主人公を見つけて近づこうとした。おそらく華陀の発言から、華陀は一周目であろうことが察せられるから、長岡氏よりは幸運なのでは。

薬草の曼陀羅華から名前の華陀を取ったことで字ではないことが伝えられた時は思わず感動した。曼陀羅華というよりはチョウセンアサガオという名称のほうが馴染み深い。そしてチョウセンアサガオ=毒というイメージが強くて、そしてそれが上手く話しの中にも組み込まれていて良かった。仲良くなっていく流れも上手く組み立てられてて伏線も綺麗に回収されていた。でもやはり丁寧というわけではない。流れが大きくざっくりとしているといった印象だったけど、それでも、他のルートよりはポイントは抑えていた気がする。
なんだかんだ一緒にいる内に仲良くなっていきながら、本の効果で少し先の未来に飛んでしまう。華陀は主人公から本を奪おうかどうか迷っている描写が何度か見られたけど、飛んだ先で死という結末を受け入れたのを見て、「終わり」が来れば主人公を帰せると知っていたからこそ流れに沿ったんだなあーと。主人公が自分に想いを寄せていると知っていていてもキスしなかったのは、いずれ迎える終わりからくる主人公へのダメージを軽減させるためで。ただそれを主人公が最悪の形で知ることになったのがエグくてよかった。想い人の斬首ってハイパーエグいな……。

主人公が願ってまた飛ぶ前の時代に戻ってきたけれど、そこで未来の自分に嫉妬させる展開になったのは上手いなと。未来人が未来の自分に嫉妬っていうのがなんだか面白い。「死」という終わりをどうにか捻じ曲げようと、これまた薬の知識を使って事実を捻じ曲げたのは手に汗握る展開でクライマックスにふさわしかった。ただ華陀が自分の居た時代を捨てて主人公の居る時代についてきたのはあっさりすぎた。まあこんだけの事があって、自分の時代に帰りたいから本渡せと言われても凍りつくしか無くなるが。帰ってきたら戸籍とか立場とかどうなるんだ?という現実的な疑問は全部場外ホームランして、タクシーの中でイチャついて運転手にちゃんと乗ってくださいみたいな事言われてもイチャつきを止めなかったのは大笑いした。運ちゃんは客を選べないから本当に可哀想。この時の運ちゃんへの感情移入が半端なかった。

華陀以外のキャラクターは全て主人公より立場が上だからか、華陀へはかしこまることも萎縮することもなく、対等なやり取りだったのは和んだ。一番主人公が主人公らしく入れたのは華陀ルートだったんじゃないかと。おちゃらけた華陀とのボケとツッコミのような流れも見ていて楽しかった。他のルートはどれも緊張感があったけれど、そのおかげで華陀ルートの色が違って見えたのは良かった。

ちなみに弓矢の設定は使われた部分もあったけど、おまけみたいなもんで笑った。後々役に立ったのは華陀から教えられた薬の知識だったから、まあこれはこれでいいんじゃないでしょうか。弓さんは別の場所でがんばってください……。


【サブキャラクター雑感】
・主人公(木下巴)
前作主人公との違いは、より普通の女子高生ってところだろうか。弓矢の設定は置いておくとして、彼女の反応は「普通の女子高生」ならまあそうなるよなっていうような反応だった。では前作主人公が普通の女子高生では無いかというと、あれは上手く物語に対して色付けされていた印象。ファンタジーを上手くファンタジーとして調理してくれていたというか。
今作は現実的なことを現実的に受け止めて現実的な反応をしていた。弓矢の設定を持っていながら、人に対して打つのを恐れ、一度打ってしまっただけでもトラウマ化する。そりゃそういう反応になるわ、と思った。的に向けるのと人に向けるのとでは大きく違う。これがファンタジーに色付けされていたら、簡単に覚悟を決めて人に撃てるようになるのだろうけど、彼女は『普通の女子高生』だった。そんな覚悟、すぐに決められるわけではない。全くと言っていいほど違う異国へ来て右も左も分からない大混乱な中で、内向的な性格がさらに内向的になって臆病になって行動力と判断力を失ってしまうのも理解できる。
ただこれが物語的な意味で面白いかって言うとまた別の話。思っていることを外に出さないのはやきもきするし、前作をプレイして本の使い方を知っていれば「駒を使って意志をもって願うんじゃ」とか画面の外から天の声でも授けたいのだけど、使い方を知らないのだから使わない。そもそもこの本も前作主人公のためのアイテムみたいなもんだったから、今作主人公にとっては異世界へ飛ぶだけのアイテムにしかならないのがなーー。そこはシナリオ次第だったのだけど、まあご覧のとおりなので。
設定を色々盛られていたけど、何一つ上手く使われることはなかったのはある意味可哀想だった。

・浩太
主人公のことを好きな男の子。戻ってきた主人公に「お前じゃない」と思われる、告白しようとして図書室に呼び出したけど「どうでもいい」とすっぽかされる等など今作で一番報われて欲しいキャラクターランキング、堂々の第一位。私は浩太と結ばれるのが一番幸せな未来なような気もするよ、頑張れ浩太、君の未来は明るいはず、たぶん。

・孟徳、公瑾
孟徳はともかく、公瑾はもうちょっと伯符とのやり取りが見たかったなあ。出番も少しだけ、やり取りも些細な物過ぎて辛かった。孟徳に関してはこの時代でもきっちりズルい男でした。前作プレイしてたら孟徳に心揺らがされる、相変わらずの魔性のキャラだった。

・孟卓
ルートをよこしてください。孟徳と仲違いするまでの過程が見られたら良かったなあと思わざるをえない。

・盧植
玄徳の師になる人だと言うから、深く話に関わってくるのかと思いきや、ポッと出てきていつの間にか居なくなるまさかの使い捨てキャラクターだった。出て来る意味はあったのか。


●総評
・システムについて

改善された所もある、改悪された所もある。が、結論から言えば大きくマイナス。
過去の私の発言によるとジャンプ機能がついて居なかったらしいが、今作ではちゃんとついていて便利だった。あと前作より画面が大きくワイドになった。デフォ名で進めるとちゃんと名前を読んでくれた。
無くなった機能が複数ある。まず単語をクリックすればすぐ意味がわかる用語辞典、用語辞典はあるが、単語をクリックすれば出てくるような機能は無くなった。好感度システムについては完全消滅で、EDに入る前のキャラごとの演出は無くなった。ED後のおまけシナリオも無い。続編と銘打つなら、前作の機能はそのまま搭載させるのが当然だろうと思うのでここまでされると逆にアッパレを差し上げたくなる省きっぷりだった。ただそれは前作と比べた評価で、普通にADVとして楽しむなら問題はない。ちなみに軍議システムがないのは今作主人公は軍師を選ばないのでそこは当然のこととして受け止めた。私がアレをあまり楽しんで居なかったというのもあるけれど。
個人的なアレだけど、ボイコレは主人公のセリフも登録出来るようになりませんかね……だめですかね。

・グラフィック、音楽について
前作から比べたらより現代的になったなあという感じ。見れて嬉しい出来ではあるのだけど、仲穎のキススチルとか一部誰これ状態になったのは気になった。ちなみに孟徳の若い頃の立ち絵も初見は誰だお前状態だったけど、面影はちゃんと残されているので。あと大人孟徳は服をちゃんと着られるようになったんだと笑った。
音楽については相変わらず素晴らしい出来でした。以前の恋戦記らしさを残していながら、場面を邪魔しない心地よいBGMだった。ED曲が好きです。

・シナリオについて

前述したけどもキーボードを弾け飛ばすような理解に苦しむ突拍子も無いような描写、展開はなかったような気がする。ただ理解出来ても納得が行くのとはまた別で、そしてさらにそれが面白いと感じるのはまた別だ。キャラが減り、シナリオ量も減り、必然と前作で描写されていたものが省かれた。共通ルートがないため、他キャラとの関わりあいが薄く、一部キャラクターを除き会話もないどころか一切出会うこともない。この時点で大きく前作の恋戦記らしさが省かれていたような気がする。そもそも『三国』である必要があったのかなという疑問も湧いてしまった。

こういう理由、こういう性格だからこういう話の流れになったという理由付けは割りと納得がいったし楽しんだ所も多かった。しかしシナリオ量が減ってしまっていて、本来描かれたはずのキャラのやり取りも減り、感情移入がしにくくなった。シナリオの量が多いことは決してプラス要素ではないけれど、前作と比較すればやはり1/3もあるかないかぐらいの印象を受けた。シナリオ量がなかったとしてもポイントを抑えた作品は多々あるけど、アクが強く歴史上明るい未来を辿っていないキャラたちなので、やはりある程度の量は必要だったのではないかな。せめて前作と比較しても1/2ぐらいは欲しかった。

あと主人公の項でも語ったけど、一部設定が放置されている所も多々ある。キャラクターも放置され気味で、三国志で出てきたからとりあえず出しとく感も否めない。そういうところを全部引っくるめて、雑なシナリオという評価に落ち着いてしまったのがなぜだか悔やまれる。キャラクター造形は相変わらず良いのに、それに付随するシナリオがついて行けてないというのがなんともまあ苦い気持ちにさせて頂ける。

ライターに寄って表現が違う所もあったけどそれは誤差の範囲内。出来が違うのは流石に誤差では済ませられないんだけど、前作ライターが担当したルートが一番悲しい出来になっていたのは本当に悲しかった。シナリオじゃないところで落ち込んでいた。

これが本当に製作者が作りたかったものなんだろうか。前作は丁寧に作っていた、そして作りたいものを作ったという気概をプレイしていても感じることが出来たので、「作りたい」ではなく「仕方なく作られた」という意志しか感じられないことが、私にとっては一番悲しかった。

オススメ攻略順は、
【 伯符→奉先→仲穎→本初→華陀 】
華陀は攻略制限がかかっていたからどのみち後半になるかと。奉先と仲穎はからめた方が流れが分かりやすいかなと。



伯符ルートとかプレイしていた頃は、これが続くと思うと辛いなと思っていたけど、プレイし終えた今はそこそこまとまりがある、そこそこ楽しいゲームに落ち着いた。嘆き悲しみはしたけど、これはこれで楽しんだし、私は魁が嫌いではないのだなと感じている。前作が秀作すぎたのでグレードダウンな印象はやはり否めないんだけど、こういうのは楽しんだもんが得をするもんだと思う。ただ、価格が見合ってないんだよなあ。これで無印恋戦記と同じような価格なのははっきり言って、損。そしてこれがまたすぐ加筆修正されてVitaあたりにでも移植されるんだろうなと思うとやっぱり印象は良くない。
あと魁っていう意味は先駆者、一本槍っていう意味があるらしいのだけど、全くシナリオと関係なくて笑った。

この作品とは関係ないんだけど、自分は先にヴァルプルガの詩をプレイして、先に三国恋戦記の期待を折られていて良かったと思った。ヴァルプルさんをプレイした時は「プレイして良かった」なんて気持ちは湧かなかったのに、まさか魁をプレイして「ヴァルプルさんをプレイして良かった」と思うとは思わなかった。久々にヴァルプルさんの自分の感想を読んで思ったことだけど、ヴァルプルさんへの悪い印象と魁への悪い印象はほぼ一緒だった。違うのは期待値の大小に伴うダメージ具合だ。
例えれば、好きな人に裏切られるのと嫌いな人に裏切られるのに近い。「裏切られる」という結果は同じでも、好印象を抱いている人に裏切られる方がダメージがデカいのは当然のことだ。だからつってヴァルプルさんが嫌いなわけではないし、アレはアレで殴り合いとか色々楽しんだけれども。
ヴァルプルさんをプレイしたからこそ、最小のダメージで楽しめられるところは大いに楽しめた。これがまた順番を変えて、魁を先にプレイしてヴァルプルさんを後にプレイすれば逆の結果になっていただろうことは、面白いなと感じる。

辿ってきた過去、感じてきた物、考えてきたこと、プレイしてたその当時の心境や状況に寄って、感想や印象が大きく変化することはやはり面白いなと感じながら、買い戻した三国恋戦記で師匠を救ってこようと思います。

以下より私が登録したボイコレです。せっかくなので記念に。
08 2017

仲穎、本初ルート 感想

特別悪いわけでも無いが良いわけでもないっていうビミョーな評価のゲームになってきているけども、恋戦記にそういう評価をつけるのはやっぱり寂しい気もする。
残すところあと一人になったが、今のところキーボードのキーを弾け飛ばすようなシナリオには出会っては居ない。こう書くと「出会いたかった」みたいになるが、ヴァルプルさんで散々弾き飛ばしたので、個人的には結構楽しめている部類に入るんだよなあ。しかしながらやはりこのゲームが恋戦記と思うとうーーーーん、ってのをひたすら繰り返している。もったいない。とにかくもったいない。


●仲穎ルート
醜悪な見目っていうのを逆手にとって乙女ゲーイケメンフィルターバリバリ掛けたキャラデザを見て指さしてケラケラ笑いながらも見た目がどストライクだったのでプレイ前から結構オチていたし、割りと楽しみにしていた。あと三国志の中でも極悪とも言える行いをしていた人物を、どうプレイヤーに納得させるかのシナリオが見ものだったのだけど、楽しんだ部分半分、納得しきれない部分半分で終わった。これがまた私の評価を中間にさせる要因になってしまった。

昔自分に降り注いだ悲劇から、漢王朝を恨んで滅ぼすためにお化けと契約して、漢王朝を滅ぼせる代わりに周りからは醜悪な見目で見られるってのは上手い設定だなと思った。しかしそれで苦しむことになっても正直言って仲穎の自業自得であるため、そこでの同情の気持ちは全く湧いては来なかった。ちなみに化物と契約っていうのは、前作では殆どそういうファンタジー的な要素がなかったのを考えるとちょっと眉をひそめたけど、本自体がファンタジーだし伯符ルートでも呪いがなんだかんだやってたんで、慣れた。でも慣れたから良いかというと決してそうではない。やっぱ納得させて貰える現実的な理由がほしかったけど、イケメンフィルターかかってる以上は無理か……。
主人公は別世界から来たので本当の姿が見えるのは未だ分かるにしても、奉先も仲穎の本当の姿が見えるっていうのには答え合わせはしてもらえなかった。奉先は遠方の出身(モンゴル)らしいので、漢王朝(呪いの原因)から離れれば離れるほど呪いの効果が及ばないという私の勝手な解釈で納得した。

好きになる過程については、仲穎から主人公へはもう唯一無二過ぎて、過程が薄くても理解は出来たし納得も出来た。主人公から仲穎については、自分だけには優しい仲穎と民を虐げる仲穎とで揺れ動いていたけど、まあ異国に来て自分を救ってくれた存在ならそれにすがるのもわからなくはない。が、これがまた仲穎の行いを許せるかっていうのとは別の問題だ。牛裂きまでやって流石に主人公がドン引きして仲穎を拒否したけど、その後すぐ仲直りしてたのを見てる私がドン引いていた。
主人公がもうちょっと勇気を出して仲穎の行いを咎めればなんとかなりそうなもんだっただけに、見ていて本当にもどかしかった。主人公は自分がお世話になった人は助けに行くのだけど、モブに対しての悪行は苦しみはするけど積極的には助けない。自分が知っている人なら頑張って助けてモブはひどい目に合って苦しいけどその後を深く聞かないっていうのは、主人公への心証が悪くなりすぎて困った。一度ならまだしも、この描写が数回あるものだから、いい加減に動いてほしいなあと思いながらプレイしていた。これでお世話になった人さえ助けない展開だったら私は今頃キーを弾き飛ばしていたはずだ。
異国から来た何の立場もない主人公の状況を考えれば理解は出来るし、非日常過ぎる世界に臆病になるのもわかる。これはある意味正しい人の姿だとも思える。だがこれは乙女ゲーだ。どうにも中途半端に乙女ゲーフィルターが掛かっていて、結局何を見せたいのかが不透明なままだった。

仲穎の時代に終わりが来ると言うときに本が使われて元凶の始まり(化物との契約の時期)に飛んだのは今更かーいって思ったし、ラストで化物と戦って仲穎が記憶喪失になるっていう展開には終盤でこれかーいとも思ったけど、おそらく仲穎が今まで一番大事にしてきた主人公との記憶を喪ったことは、仲穎が今までしてきたことへの報いなのかなと。過去に飛んだことで、今まで仲穎がしてきた悪行も無くなった事になったけど、それで苦しんだ人は確かに居た。そのことへの報いだと思えば、このラストを受け入れることが出来た。単なるハッピーにならなかったのはむしろ良かったのかもしれないと思えた。漢王朝の民というだけで、何の罪もない人たちが苦しみ痛んでいったかと思うと、仲穎の行いは到底許されるべきではない。むしろ逆に記憶失うぐらいだったら安いもんだ。
ちなみにBADEDでは上記したことを仲穎本人の口から聞けるのが良かった。

「私はかつて、一族の死を百万の漢の民であがなってやると決めた。その時点で、私は許されざる者となったのだ」
(中略)
「たとえ過去に戻ってやり直したとしても、私は殺してきた者どもの断末魔の声を覚えている。血の赤さを覚えている。それは私の魂にしがみついた穢れだ。覚悟の上で選んだ道だ。だからこそ、やり直すことは許されない。私は私の罪を背負って生き、死ぬ」

ここまでして覚悟を持っていてこの結末なのなら、むしろ本望だろうと思った。作中何度か主人公が咎めても、おそらくそれで主人公が苦しんでいると知っていながら、悪行を止めなかった。進んだ時点でどんな事があっても止まらないという仲穎の覚悟だったと知ることが出来て、腑に落ちた。そして、過去に飛んでも結局同じ道を辿って同じ世界に帰ってきたのも、主人公を元いた時代に返すためだと知っていたからこそで、このBADENDの方が、強烈に胸に刻まれた。悲しくて苦しくて痛々しい悪役に与えられた仄かな夢のような時間で、相応しい終焉だった。
最後に元の世界に戻ってきた主人公が、幼馴染に本当の名前を呼ばれるのだけど、「それは私の名前じゃない」で終わるのが猛烈に良かった。一度も本当の名前を呼ばれないことが逆に胸に響く事になったのは思わず唸った。作中で主人公が本当の名前を言おうとしても仲穎がそれを拒否するのもなんだか哀愁があってよかった。いずれ帰る主人公の名前ではなく、今ここで自分の本当の姿を見せてくれる主人公が仲穎の求めたものだったのなら、『貂蝉』が大事なのも頷ける。
描写の軽い重いはあれど、それらを補うほどの設定が上手いと思えたルートだった。


●本初ルート
出会いは「切れ者なのかな?」と思わせておきながら、鳥さん牛さん動物さん大好きキャラだったのは……なんというかこう、どうしようもない気持ちにさせられた。
本初ルートはサブキャラクターが良すぎて、本初自体が霞みまくっていた。この世界に来てから主人公に色々なことを与えて支えてくれた女官の張さん、本初と仲が良く後に孟徳といざこざがある孟卓、真面目の道を真っ直ぐ歩き次第に歪んでいく公路、この頃からだいぶ達観していて世を見据えていた孟徳。これだけサブが輝いていたら本初が霞む霞む、本初ルートを攻略しながら「こいつら攻略できたらなあ」と思わせられた時点でとても悲しくなった。

それでいて本初はというと、特に何もしていない。マジで主人公共々THE直立不動を進むから、一体どこまでこれが続くんだと悪い意味でドキドキワクワクしていた。ヴァルプルさんで鍛えられたあの時の気持ちが少々蘇った。
仲穎を討とうと連合軍を組むことになり、それの盟主を務めろとと言われても「俺は相応しくない」といい士気と私の気持ち下げる。なんか主人公に言われたからまあいっちょ長やってみっか!と心替えしたあとも、主人公に肩揉みさせたり自分の天幕でいちゃいちゃしたりしていて「これが仕事って羨ましいなあ」と歪んだ目線で眺めていた。次第に周りの武将から、あいつ女侍らせてんぜ、と冷やかされると、『じゃあ冷やかされないために結婚すればいんじゃん?(意訳)』とか言われた。嫁探しのダシにされた仲穎とその他大勢の皆様の気持ちを思うと、もう……もう。

しかし本初が動かなくても周りが動く動く。激動の時代に巻き込まれない立場から傍観している意味での楽しさはあった。
まず先に公路に不審な動きがあって、本初の妾の子という立場から関係が歪んでいって対立していく。孟徳は先見の明があり、同盟を組んでいた頃あたりからすでにこの仲間たちがいずれ時代の流れに引き裂かれると予見していた。ちなみに孟卓はいつの間にかドロップアウトしていて、本文でたったの一行でそれが明かされて笑った。本初が何も動かずとも、どんどん立場が悪くなっていき、追い込まれていくのは、楽しいと評するのはいかがなもんかとは思うが、やはり楽しかった。この時代に立場のある人間が、「人が傷つくのはイヤだ」とゴネて何もせずに居るとこうなるのだなという流れだった。
体調に関しての伏線はちらほらあったけど、ラストに関しては、まあ本人たちが幸せなんだからこれで良いんじゃないでしょうかね。先が長くない描写については明るい気持ちにはさせてもらえなかったけど、誰からも邪魔されず静かに暮らせるなら未だ良い方なのでは。結局本初は、誰も苦しまない自分だけの世界を手に入れられたのは、ある意味皮肉だ。


なんでこの展開にしたんだ?と思うのが多々あるが、流れもオチも多少なりとも納得はいっている部分はある。それでもこんなに三国志演義の流れを汲まなくても良かったのでは。仲穎のようなオリジナルの設定のほうが楽しめられたのはなんとも言い難い。
前も言ったけど、シナリオ量が圧倒的に少なくなっている。描写も流れも適当になっている。多けりゃいいって問題でもないし、ダラダラ続く流れは逆に苦痛を呼ぶけど、この時代はコロコロ状況が変わるものでダラダラすることもなかろうものだし、もう少し丁寧に描いて欲しかったという気持ちがどうしても拭えなかった。拭うつもりもなかったが。

なにはともあれ、次はラストの華佗です。字じゃないのはなんらかの理由があるのだとなんだかんだ楽しみにしている。
03 2017

奉先、伯符ルート 感想

密林地帯のレビューを抱え震えて眠る日々でしたが、プレイしたらその酷評っぷりも分かるし、思ったよりもまあ良かったという気持ちもあるし、今の気持ちは更地みたいなもんです。意外にも。

この作品のレビューを書く前になんとなく書いて置きたいなと思う前置きは、私は「三国恋戦記への期待」と言うのはヴァルプルさん(※ヴァルプルガの詩のこと)でほぼ粉々に砕け散っており、魁を予約しプレイしたのも「まあ面白ければ当たりってことで嬉しいし、そうでなければまあそれもそれでそういうゲームもやり慣れてるからどんと来いや」みたいな割りと軽い感情だった。ただし私がヴァルプルさんに対して持っていた「恋戦記の期待」をそのまま保っていつつ今作をプレイしたらキーボードをガンガン叩いて「くぁwせdrftgyふじこ」みたいな意味不明の文字の後に「これが私の今の気持ちです」と添えた怪文章を残していたかも知れない。
改めて『期待値』という未知の感情の数値の大きさに不思議な気持ちを揺さぶられたのだが、それも含めて『感想』だと思っている人間なので。というわけで前作と比較する点は多々あります。あと無印のネタバレもあります。
……いやまあそれでも、私が前作を知らなかったとしてもくぁwせdrftgyふじこになっていたような気がする出来ではあった。特に伯符ルートとか。

以下よりキャラ感想。


●奉先
りょ、呂布だ~~~!!(逃げる雑魚兵役)
前作でも言った記憶があるが、私の三国志の記憶は私のゲーム史でも1~2を争うほどプレイした三國無双2であり、「赤兎馬乗ってるの?呂布じゃん……呂布が攻略対象なの!?」とここで気づいたほどのスッカラカンっぷりでプレイしていたのですが(そもそも董卓が攻略対象な時点で気づきそうなもんなのに)、彼はまだまともなルートだった。まともっていうか、起承転結の流れがあった。

圧政を敷く義父の仲穎をよく思っては居ないながらも、自分を信じてくれ家族にしてくれた仲穎への恩義の間で揺れて苦しみつつ、主人公もキービジュアル通り、弓矢設定を生かして戦場に立つ。最初に降りたところが戦場で子供に刃を向けられるというシビアな状況だったため、人の命を奪いかけたことに怯えた描写をそこそこじっくり描いてくれたおかげで、戦場に立っても人を殺せないことに納得がいったし、まあ一般人な主人公がトラウマ抱えてしまった後も人に向かって弓を向けられるようになっただけでも強いと思った。
本の策を参考にしつつ、主人公自ら動いて勝利を掴む流れもあり、シナリオの量はともかく、それなりのイベントは踏まえていたという印象を受けた。

途中仲穎の謎が明かされて、仲穎の嫁にされそうになって焦らされたりもしたけどなんだかんだ結局奉先と一緒になれて、仲良くなって青姦したりしてて私の中の一般ゲーのセックスをマジ許さない人格が現れそうになりましたが、青姦はともかく主人公と致したことで気づいた事が上手くシナリオに盛り込まれていたので眉を潜めながらも読んでいてそこそこ面白かった。
終わりは囚われた奉先を弓矢で自由にして色々放り出して二人でハッピーエンドって感じの若干唐突で雑な展開だったけれど、主人公の特技の弓矢を遺憾なく発揮したし、流れは綺麗だったような気がする。が、納得できるかどうかはまた別だ。納得まで至るにはシナリオ量が足りなすぎるのである。
主人公は初っ端に恋とか知らないしまだ良いかなとか思っていたのにいきなり恋に燃え上がってるし、奉先も助けて上げたのに異国の訳の分からない少女のワガママをかなり我慢して受け入れているし、いつの間にか主人公にズブズブになっていてそこそこ置いてけぼりにされた。仲良くなるイベントがないわけではなく、質および量の問題な気がした。

いやあ何度も言うけど主人公初めてで青姦はおったまげた。自然を感じたかったという無理矢理な理由で自分を納得させた時の気持ちはまた格別でしたね。あと思いでがえしでエロネタたくさん入れられて無茶苦茶萎えたのを思いでがえした。


●伯符
まとめて一言でいうと、全てが雑。でも序盤の三国志の世界に来た何も知らない主人公と伯符とのやりとりは、前作の仲謀と主人公のやり取りを思い出してなんだかちょっと胸が痛んだ。伯符の『かなり偉い人』っていう立場を気にせずに、普通に怒ったり恥ずかしがったり積極的に意見しに行くのは見ていて心に残るものがあった。

それでも展開はぶつ切りで、戦の度に流れが一つ一つ切られていて頭のなかで繋がらなかった。主人公が伯符を好きになる理由はまだわかるが、伯符が主人公のことを好きになる理由は「自分の命を助けてくれたから」ぐらいにしか見つからないのが……異国の人間とのやり取りが楽しかったっていうのも何度か描写されたから分かるが、それもまあ濃いわけではなく。確か前作の仲謀ルートで、主人公が仲謀が自分のことを気にかけるのは本があるからだと悲しんだ描写があったように思うが、なんというかそういう風に疑うこともなく……描写も展開もあっさりしすぎているのが本当に惜しいと思った。せめて話の流れだけはしっかりしてくれたらと思わざるをえない。
あと気の強い大喬が出て来るのも、なんか惜しかったなーと。とても強烈で良いキャラクターだったのに、主人公が気持ちを自覚するためだけのアイテム的な感じにされてしまって残念だった。そこから二人が仲良くなったり、主人公と伯符を叱咤したりする存在になってくれたらまた味もあっただろうに。

最後の展開は特に唐突だった。EDに入った時は、リアルに画面「は!?」と叫んでしまった。人間本当に驚いた時は一文字しかでないもんなんだな……。
というのも、街で仲良くなった少年と弓矢で遊んでたら、実はその少年が暗殺者で、取り押さえる時に少年を傷つけてしまう。それらが心の闇となって主人公が唐突に病みだし、どうにもならなくなった伯符が街で評判の医者を呼んだら「アンタが人を殺しすぎるから呪われたんだ、もう戦をするな」と武将の人間にそれ言う?なことを告げられ、多少悩みながらもやっぱ女大事だわ!になった伯符がそのとおりに従ったら無事ハッピーエンドでした、おわり。シナリオライターはここで気を失ったのか。
病みだした時点で「???」だったけど、急に入ったホラー描写の時点でもう眉間の筋肉が無茶苦茶鍛えられたし、まだ続くのだと思ってクリックした先にEDが流れた途端全身の力が抜けた。なんでこんな唐突で意味不明な展開にしたのだと思ったら、恋戦記って元々三国志演義を元にしているらしい。それによるとこの展開はそれをなぞったらしいが……そこは仲穎並の乙女ゲーフィルター掛けてもよかったんじゃなかろうか。これは三国志演義ではなく三国恋戦記魁の物語なのだから。今までは三国志演義をうまく調理して乙女ゲーにアレンジしてくれていたが、これは味付けをせずに炒めただけの料理だった。素材の味を楽しめということだろうか。

ちなみにBADENDは伯符が死んで、その瞬間主人公を伯符として扱うようになったEDだったんだけど、こちらのほうが余韻が良かった。ここから伯符を好きになる公瑾とか見てみたかったなあ。



主人公に関しては今のところ普通に受け入れられている。共通ルートがないのも、これはこの主人公の物語だからと受け入れられているし、別時代の異国に飛ばされてた身としてはまあそこそこ頑張ってる印象もある。後ろ向きで、考えていることを表に出さない描写が結構続いたりするが、もともと内向的っぽい子なのでそれはまあそれで。彼女の現状はシビアだけど、むしろそれは当たり前であって、前作主人公が恵まれて居たんじゃないかなーと。本を使わないのも、過去こういうパターンで過ごした人も居たんだろうなと思った。それがシナリオ的に正解だったかどうかはご覧の有様だけど、それはライターの力量次第じゃないかなと思ったので、本を使わないことが悪いことだとは思わなかった。弓もあまり使わない展開だったのはどうかと思ったが。
主人公は長岡くんとかの立場に近いのだと思えば、なんとなく彼女の立場を理解も納得も出来た。しかしそれを思うと師匠ってほんとすごいブースターだったんだな。情報戦に強い人って大事だ。戦いは数よりも情報に寄って左右されるらしいですし。

多分全体に言えることだろうけど、圧倒的に描写が足りない。キャラたちが近づくイベントが唐突で、「そんなんで好きになっちゃう?」程度のシナリオ量しか無いので、細かいことは良いんだよと自分を納得させるスキルが必要とされる。恋戦記でも好きになる描写や展開は疑問符が残るものもあったけれど、それは丁寧な描写かつ全体のシナリオを壊さない程度の量で補われていた。だからこそ前作は感情移入も出来たし、感動までに至ったのだと思えた。

今のところは残念に思う気持ちのほうが勝っているが、恋戦記の空気を残しているところもあるし、新しい物語に楽しめている部分もあるし、更地の気持ちのまま進みます。