全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

タイトル長い。本当はソウタ、メイだけ別記事にしようかと考えたんだがこの三人はなんだか切っても切り離せないようなものだと感じたので、勢いで3人+真相+総評を続けて書く。いつものようにクソ長い感想がさらに連結して万里の長城になるが、それは私のチャームポイントのようなものなのでご了承ください。
あまりにも物語の根幹に関わりすぎるので総評以外はワンクッション起きます。総評もネタバレしないように頑張って書くが、そういう文章をあまり書いたことがなくとんでもなく自信がないので気にする方はご注意。このゲーム、半分くらいは謎解き要素メインなので、知らずに進んだほうが楽しめる……とは思う。


【総評】
・システム、音楽

システムについてはいつもの可もなく不可もないオトメイト。オトメイトゲーするたびに毎回言ってるなこれ。その意味は、使いやすいわけでもなくこれといって不便なわけでもない。サイケデリカのスタッフが関わっているらしくフローチャートシステムだったが、サイケの時はコレが私の足を引っ張ったが、今回は自分でいちいち選択するような手間もなく選択肢で進むいつものADVだったのでさほど意味はないがこれといって困ることもないシステムだったのは助かった。シナリオの出来はともかく、システムについては毎回余計なことをして足を引っ張るイメージしかないので。
一つだけ言いたいのは、私は鬼のようにスクリーンショットを撮る人間なので、モノローグの時にバックログを辿ろうとしたら「モノローグ」って文字しか表示されないのは身体が硬直したし(これ確かノルンでもそうだったよ!)、バックログ画面の右下に、バックログの文字と被る位置でボタン操作の説明が鎮座されていたのは結構邪魔くさかったのでもし次がある時は勘弁してください。
音楽についてはOP、ED主題歌共に凄く良かった。もちろんその他BGMも。勝利BGMはなかなかに胸が熱くなった。特にBADのムービーのほの暗さと、全力で「コレはBADなんだ!!」と言ってくる演出は必見。最初見た時は笑ったが、なかなか気味が悪くて良いと思う。

・グラフィック
オトメイト御用達・悌太氏の美麗なイラストだったが、いつもと違うのは塗りのテイストを変えてきた事。アニメ塗りっぽい仕上がりでしたが、これが近未来的な作品の雰囲気にあっていて良かった。ポップでスタイリッシュなキャラのキービジュアルに、ナンバーと色を印象づけることがとても効果的に働いていて、主人公含め10人という大人数の一人ひとりを上手く記憶に残させてくれた。カラーがキャラクターイメージにも合致しているし、そういった意味でもよく考えられている。
十三支演義のときもそうだったが、今回も立ち絵やキービジュアルに物語の謎や設定を上手く織り交ぜてくれたのはとても感心した。プレイし終えたあとに「ああそういうことか」と理解できるのは面白い。この方は本当に、こういうさり気なくそれでいてかっこよくデザインするのが巧みだなとしみじみ感じた。

・シナリオ、設定について
大方の謎や細かな設定については大体回収される。謎の散らばらせ方は上手いと思ったが、ややヒントをバラマキすぎというか「これがヒントです!」という演出をし過ぎかな、というふうにも感じた。が、この長くない話の中で、あと乙女向けという点を考えれば敢えて難易度を低めに設定したのかな、とも思わなくもない。ただ、やはり謎解き要素を入れるなら、こちらが全く気づかないような謎や伏線を敷いてネタバラシの時に目ン玉が飛び出るほどの衝撃を味わって見たかったな、という気持ちはやはり拭えない。『このキャラにこの設定がある』と大体察せられるし、キャラのEDで別のキャラの設定が判明しかかったりすることもあるので、ミステリにおいてはそれが致命傷になる部分もあると感じた。
ルートに寄っては恋愛過程に比重があるし、なぜ好きになったのかどこを好きになったのかを考えると辛いものがあるルートもあったけれど、やはり9人という攻略対象の多さとシナリオの分量的にはしょうがなかったのかな、という思いもある。これはライターの力量うんぬんの問題でもあるとは思うけれど、それ以上に大元のオトメイト自体がもう少し総量を広げてほしかったな、という思いもある。このシナリオを十二分に描かれて、その上それを体感した上でどういうことを感じられたのかな、というのを書き記したかった。まあ予算とかの問題もあるんだろうし、仕方がないと思う部分も無きにしもあらず。
逆を言えば、この1ルートそれほど長くない話の上で、謎を回収する流れは楽しかったし、どのキャラクターにも感情移入出来たのは素晴らしかった。ミステリであるおかげでもあるとは思うが、シナリオには引き込まれたし、飽きたり中だるみすることもなかった。各々の感情を考えたり共感したりする時間は充実していて、最初から最後まで綺麗に楽しむことが出来たし、私がオトメイトに唯一求める『萌え』という感情も堪能することが出来てとても満足だった。

あと一番胸に来たのは、BADじゃないがBADよりも胸に刺さって痛みが残り続けるお話見れたこと。心に残り、考えさせられ、それでもほのかに灯るようなものがあったのは何にも代えがたい時間だった。


オススメ攻略順は【 トモセ→キョウヤ→ミズキ→ケイト→リョウイチ→マモル→ソウタ→メイ→タクミ→真相 】
公式推奨順もこれっぽいらしいが、これの意味は徐々に謎をバラしていく感じと、あと心象的な意味も含めてだと思う。流れはこの通りにやっていくと、キャラクターの行動の意味がよく分かってよかった。


以下よりネタバレ含みまくったキャラ+サブキャラ感想です。真相については伏線もあったので大方の予想通りだったんだが、メイにはやられた……お前の思いという名の槍が胸に突き刺さって抜けないぞこのやろう……よくも……よくもやってくれたな。
一応公式の推奨攻略順とやらに沿って攻略しているんだがなかなかのジェットコースターで目が回っているそんな今。


●獲端ケイト
ケイト可愛いよケイト。攻略中私はずっと彼のことを可愛いとしか言っていなかった。脳内ずっと可愛いでしか埋まってなかった。ほんと可愛いぞケイト、天性の可愛さ!キュート!プリティー!ずっとそのままでいてくれ!

物語の謎としての絡みは、序盤で伏線がはられていた左腕の謎と前回参加者ってことぐらいなだけで、根幹に大きく関わってくることはなかった。というかそれ以上にケイトは私の好み過ぎて、割とそういうことどうでも良くなっていたし、ここまで本音で周りを威嚇し自分に傷を付けられまいとしている人間がスポンサーやプロデューサーさんとはとても考えられなかった。そういう意味ではコレ以上ないほど清廉潔白でしたねケイトさん。
割と序盤で主人公だけに前回参加者で左腕が奪われたことを告げるのだけど、もうその時点でケイトは主人公のことをある程度信頼していたのだろうし、気持ちが寄っていたんだろう。周りにろくな女がいなかったケイトを思えば、心優しく気遣い出来て純粋な主人公を見てイライラしつつも惹かれてしまう気持ちもよく分かる。そんな純粋な主人公を見て、『馬鹿だ』と思う気持ちと『傷ついてほしくない』という相反するような気持ちが同居していたのだろうか。どちらにせよ前回参加者なだけあって情報的な意味ではとても有利な立場だったろうし、早々に主人公に何の裏もないことを見抜いていた。他人を傷つけたくないからとペナルティーを受ける主人公を見て、思うところも多く在ったのだろうし。

ツンケンしながら周りに毒を吐き近寄らせまいと敵意をむき出しにしながらも、主人公も負けじとケンカップルな如く言い合う様子は本当にもう眩しくてニコニコしながら見ていた。対等な関係性で居て、強い言葉で威嚇するケイトに応戦する主人公も可愛くて良かったなあ。強いケイトの言葉に凹むこともあるのだけど、ほのかに垣間見えるケイトの優しさにも気づいてくれるし、喧嘩する二人をよそに心温まりながらその様子を眺めていた。
それでいて、きちんとケイトが料理が得意な理由と女性嫌いな理由も明かされていく。特に料理が得意になった理由については、誰かが食べてくれることを常に意識しているからとても胸に来た。同じく料理が好きな人間としては、自分を含んだ誰かのために創ることの重みもよく分かるし、そこに思いをのせていたケイトの感情がとても響いた。

ラストは嫌がらせのごとくケイトが左腕を失うことになったドラマの再演を勝手に仕掛けてくるディレクターもナイスアシストで良かった。いや~~~ほんとこの世界恋のキューピッドの仕事ぶりには感動すら覚えるっす。キスシーンのあるドラマで、主人公が飛び入り参加して無事二人だけご帰還のハッピーエンドでした。なぜ二人だけなのかとか、なぜケイトだけ色んな意味での甘々判定だったのかとか疑問点はありますがそれは最後に回収していただけることを期待して。
とにかくもうこのルートはケイトが可愛かったし、ホント素晴らしくケイトが可愛かったし、いや~例えようもないほどツンケンするケイトがハイパー可愛かったのでとにかくもう大満足です。自己を守るために他人を言葉で攻撃してまで距離を取ろうとするケイトが大変に可愛らしかったですし、自分の気持ちに偽らないで正直に進む彼のようなキャラクターは大変に好ましい。女嫌いも克服できたし、家族ともそれなりに和解できたし、そしてなにより可愛い彼女も出来たし私の頭は今猛烈にハッピーハッピーです。こんな素晴らしい出会いの機会をくれてありがとうプロデューサーさん、ありがとうアルカディア。


●双巳リョウイチ
いやーーやってくれましたねえ!リョウイチさん!!仲間を裏切って期待を裏切らない!!素晴らしい!!
自分は推理小説はほぼ推理しないまま読むタイプなので、誰も信じてないし誰も疑ってない状態で進んでましたが、正直リョウイチだけは絶対なんかあるだろと思ってたし、その発言の気味の悪さに恐怖を覚えて次第に恐怖すら超えてだんだん楽しくなってきました。ラスト辺り付近ではもうワハハ笑いながらプレイしていた。
自分は序盤も序盤で彼の発言がすごく気味が悪かったので、特段彼が抱えている設定の謎については興味がなく、興味があるのは『なぜこんな言動をするのか』だけだった。だからリョウイチがスポンサーだとバラされても「やっぱりな」としか思わなかったし、どうしてスポンサーになったのか、彼が負ってきた人生と心の変遷しか興味がなかった。
ちなみに私が序盤で引っかかった発言は以下のものである。

リョウイチ「さっき手を握った時の反応やドラマの雰囲気を見て思ったんだが……」
腰に腕を回したままの状態で双巳さんは観察するように私を見ている。
リョウイチ「少しは慣れておいた方がいいんじゃないか?瀬名は……彼氏とかいるの?」
ヒヨリ「いま……せん……」
(中略)
リョウイチ「あんたが緊張してるようだからちょっとからかって緊張をほぐせればと思ったんだが……逆効果だったな」

善良な大人の男性を装っておきながら、こういうことを言うのが気味が悪いし気持ち悪い。要約するとキス以上のことがドラマでさせられるかもしれないから慣れておいたほうが良いというリョウイチにとってはアドバイス的な意味でのアレだったんだろうが、私にとっては逆効果どころか好感度下がるどころかマイナスにまで達した。こういう事言われて私が思ったのは、慣れろってお前で慣れろってことか?ってことで、それはあわよくば年下の女の子と練習がてら恋愛の真似事をすることを俺は受け入れるぞっていう最低の決意表明であって、それをこんな異常な状況でも冷静で物事を俯瞰できる(フリをしている)年上の大人の男性が言ってくるのが、ただただ気味が悪かった。リョウイチのすべてを知った今ならば、この言い方ってドラマなら何をされても仕方がないって思いが透けて見える。それは『ドラマの中でならば俺とそういうことになっても仕方がないし、俺はそれで主人公を傷つけてもどうとも思わない』ってことなんだろう。この発言を受けた時はもちろんそこまで考察しては居なかったけど、だとしても、つい先日まで見ず知らずだった男性に勝手に腰に腕を回されて、言われることが『やばいことされるかもだから慣れておけ』ってどういうことだ。慣れるわけ無いだろが?
これがもし、リョウイチが清廉潔白だったのなら、『もしそういうことになったらごめん、でも覚悟しておいて』みたいな言い方になるんだろう。というか清廉潔白じゃなくても心から相手を騙すのならそういう言い方をすべきだったのだけど、リョウイチはちょいちょい信仰心や俺は悪くない悪いのはお前ら精神が漏れ出ているのが気味が悪いところだし、今思えばリョウイチはしっかりとした助平心で主人公のことを見ていたんだろう。

リョウイチ「ゆっくりとした心臓の音を聞いていると、気分が落ち着くだろ?
胎児の時に記憶が蘇る、らしい。確かに母親のお腹の中は一番安心できる場所だろうしな。
単純に鼓動の音が同調しているのかもしれない。でもこれで……俺に下心がないことも分かっただろ」

え!?どこが!?
下心がないどころかドスケベ野郎じゃん!一回りも下の付き合っても居ないJK抱きしめといて何言ってんの!?正気か!?(じゃなかった)
安心させる方法はもっと他にあるはずだし、主人公より長生きしてたらそれぐらい知ってるはず。これを善良な人間を装ってやるから気味が悪いのだ。ほらトモセやケイトみたいに大声で正直に自分の気持ちを叫んでみろ、『俺は女子高生が好きです』って。……そういう風に言われたほうが自分に正直な人間だと、好感を持って見られる。
ただこのキャラクターについては凄く良く出来ていたと思うし、ちょいちょい漏れ出てる信仰心については素晴らしく良い塩梅だったと思うので、そういうの気味の悪さは嫌いじゃない。ただ好きと言えるまでは振り切れ方が足りないが。物語の謎を小出しにする意味合いや、プレイヤーがリョウイチに対する疑念を持たせる上ではその漏れ出方はとても上手いなと思った。おかげで一度もリョウイチを信じることなく終わったのはなんだかちょっと寂しい気もするが。

あーあと裏でキョウヤのこと脅したりキョウヤだけやたらと厳しく当っていたのはとっても陰湿で良かったです。良かったと評するのも如何なもんかとは思うが、リョウイチの性格が素晴らしく表現されていたと思った。本当に何も思っていないのなら気にならなかったのだと思うが、リョウイチにとってキョウヤはなりたくてもなれなかった存在であったように思える。自分が持っていないものを持っている人を見ると妬ましい。隣の芝生は青い。……どんだけリョウイチは敗北感味わって生きてきたんだろう。まあスポンサーという立場である以上、敵側であるキョウヤに対しての攻撃は表立っては出来なかったのだが、この陰湿な攻め方が非常にリョウイチらしくてよかった。

リョウイチ「俺には分からない、何が正義かなんて。俺から見れば、お前も絶対の正義には思えない。
正義はいったいどこだ?どんな形をしている?ただ思い込んでいるだけじゃないのか?
ほら、見えなくなってきただろ?形なんてない。信じるほどのものじゃない」

両親がスポンサーで、自身も妹を無くし、それでも敵が何であろうと立ち向かおうとするキョウヤを、ドラマの役を装って責めた陰湿なリョウイチの言葉が五臓六腑に染み渡る。それほどキョウヤが眩しくて眩しくて、自分がそれに屈したのだと認めたくなくて、なんとかキョウヤを引きずり降ろそうとしているようにしか見えなかった。キョウヤもキョウヤで弱さを抱えた人間だから、罠にハマってDEADENDになってしまうのだが、自身がスポンサーだとバレてもキョウヤだけは許せなかった。きっと本人は認められなかっただろうが、キョウヤに対しての敗北感はリョウイチにとって相当耐え難いものだったのかな。キョウヤルートで傲慢な卑屈が語られていたが、リョウイチはそれを認められなかった姿なように思えた。傲慢に卑屈を振りかざしている。
しかし、リョウイチに好意を抱いた主人公が、それでも人殺しの手助けは出来ないと線引きをして、リョウイチと対話するシーンはとってもゾクゾク来て良かったです。リョウイチの真髄ここに顕る。

リョウイチ「お前がここに残ることで、これからここに呼ばれるはずだったたくさんの人間を救うんだ。
いい話じゃないか。言うなればヒーローだ。
それに、痛みなんてすぐにわからなくなる。俺が一緒にいるから。怖いことなんはなにもないよ」

本性現される前から怖かったのにこれ以上怖いことってあるんですかね。狂ってしまえよ楽になるぞ、ということなんだろうが、狂ってしまって楽になるのは逃げなんじゃないか。ヒーローという単語を出す辺り、本当にキョウヤに対して劣等感抱いてたんだなあ。その劣等感をバネに不屈の精神を構築してほしかったが、そうでなくなった姿のリョウイチを拝む事が出来たのはとても興味深かった。リョウイチは心のどこかで、キョウヤのように現状に立ち向かう姿が正しいと感じているにも関わらず、そうなれなくて他人を異世界配信に引きずり込む自分の立場と比べて、勝手に悔しくなって、それでも自分を否定しきれなくて、自己肯定するために『自分はヒーローだ』という言葉を発したように思えた。キョウヤを殺してもなお、拭えないキョウヤへの敗北感が滲み出ている。キョウヤは別にお前のことそんなに意識してないってのにさあ……そういう意味ではリョウイチの『負けた姿』を見ることが出来たのはとても興味深かった。
圧力に勝った姿に人は喜びを覚えるけど、負けた姿にも美と共感を覚える。これを良い悪いで判断することは難しいが、ここで重要なのは他人の命運が掛かってるってことだが、そこをお構いなしに自分を守ろうとしたリョウイチの感情のすべてを否定しきる感情も正直私の中にはない。ないが、……なんかやっぱりいけ好かないんだよな、個人的な好みの問題で。他人に自分の感情を預けるのはきっと楽ではあるんだろうが、そうまでしてしまったら面白いとは思えない。俺がプロデューサーになってやる、って言ったら私も彼にハイレベルの興味を抱けたんだろうが。

それでも、彼がこの狂った世界を受け入れ、称賛する理由が明かされたのは良かった。

リョウイチ「『独りになりたくないから、独りの奴を作る』んだ。
そうすれば、自分が独りじゃないってよく分かるだろ?自分が幸せだってよく分かるだろう」
明瀬さんだけに対する言葉だとは思えない。かつて通り過ぎた何かに対する、恨みの言葉に聞こえる。
(でも……原因が何だったとしても、今こうして双巳さんは独りになってる)
(双巳さんは独りになってる)

怒涛の追い打ちをかける主人公に手足痺れる。大事なことだから二回も言われてる。なんかもうかわいそうだから手加減して上げてよ。独りでも幸福な人は居るだろうが、リョウイチにとっては不幸なことなんだろうな、それは。まあその尺度に関してはお前ん中ではな、で済む話だが、リョウイチがこの世界を受け入れてしまった理由を語るシーンはやはり、共感できるものがあった。始まりは小学生の頃、きっと理由も覚えていないほど些細なことでクラスの中で孤立させられる。二度目は勝手に心の支えにしていた弟が思春期で離れていったこと。そして、スポンサーに出会い、誰よりも公平に接してくれて道を示し、リョウイチを裏切ることがなかったことで自身もスポンサーになったと。
小学生あたりの頃に除け者にされる経験は言うなれば殆どが経験する道なので、大いに共感できた。主役になれない自分を嘆く気持ちがあるのも理解できる。自分という存在がある限り、自己顕示欲というのは切り離せないものだし、そこを『狭量な自分』と称するリョウイチにも大いに共感できたし理解も出来る。ただリョウイチからは、他人から裏切られたことを嘆くばかりで、自分が信じてもらう努力をしたのかというところが殆ど見えないところがただただいけ好かないのだ。あがいて、もがいて、それでも無理だと闇に落ちる話も好きだし、逆にそこから救われる話も大好きだが、『この世界は公平じゃない』と嘆くばかりで何かを変えようと動いたのかが見えて来ない限りリョウイチはきっと独りのままなんだろう。世界は公平じゃないと嘆いたまま。当たり前じゃないのか。極端な話、リョウイチさんはスポーツ見て順位表みんな同率一位とかでも面白いんですかね。
主人公に『選んでもらった』という優劣を実感してそこに嬉しいという感情が伴っているくせに、それでも公平な世界は素晴らしいと言い続けるリョウイチ。それを崩されるのが嫌だから、主人公を一旦は拒否したんだろうが、まあものの見事にキスぶちかまされたのでやっぱり女子高生が好きだったんじゃないか……という他ない。公平なのが良いと言いながら心のどこかで他人を見下し、自分と違う意識だったと知った途端に異世界人を見下し、好いてくれる女の子にだけ心を開く……これをいけ好かないと評する他にない。
他人に傷つけられたからと言って、何の関係もない人間を傷つけてもいい理由になんてならないと思うが。まあそれでもいいとリョウイチは思ったんだろうし、そこに対して思うことはあるが、たった二度の経験で世界は公平じゃないと憎むだなんてさぞかし生きにくいのだろうなと思った。もしかしたら語られないだけで印象的な2つだけを上げたのかもしれないが、リョウイチからはそれを感じられなかった。リョウイチは他人から優しくされたことも思いやられたことも一度もなく今まで生きてきたとはとても考えにくいし、他人に傷つけられたら他人を思いやろうという気持ちを学ぶのだろうと思うが、そうはならないどこまでも独善的なところが双巳リョウイチの魅力なんだろうな。ただやることなすこと中途半端すぎる……振り切れるならもっと振り切ってくれ。

ラストは主人公の説得や諸々の展開が在って、主人公を信じる事に決めた。ここで射落が「信仰の対象を主人公に変えるのか?」と厳しいお言葉を掛けてくれるのがとても良かった。的を射ている。もっと責めても良いっすよ。
ここでリョウイチがそんな簡単に宗旨替え出来ない、主人公は二番目というのだが、ほんとこの人最後まで何を言っているのかわからなかった。世界観変えられるぐらいにまでそこそこ長い間心酔していたくせして、ぽっと出の主人公の言葉と行動にフニャフニャにされておいて何を言ってるんだ?運命の女の子見つけたから宗教やめますじゃかっこ悪いとでも思ってるんだろうか?左手薬指専用の指輪作ってるやつの言うことなのかそれは?こんな事になっておいてプロデューサーが一番なわけ無いだろ主人公が一番に決まっているだろうが一体何を言ってるんだ。

まあここまで語ったけどリョウイチの感情は大体理解できたが、一番理解できなかったのはそれでもリョウイチを好きになった主人公の感情の流れだった。年上のお兄さんに優しくされることは魅力的だろうが、描写やエピソードが足りなすぎて、敢えて辛辣な言い方をするが、キョウヤを殺したあともリョウイチを信じようとしていたのは正直結構引いたしあまり理解も納得もできなかった。それでもなんとか耐えられたのは、キョウヤの一件を「許せない」と線引いてくれたからだった。あそこがなければ結構納得の行かないまま進んでしまった気がする。
リョウイチに確認したいのは、もし自分が独りにする相手を選べる立場だったら痛みも感じずに何の迷いも苦悩もなく生きられていたのか?ということ。独りにされる痛みを知ったから嘆き悲しんでいるけど、じゃあ選べる立場だったら本当に誰も選択しなかったのだろうか。何の関係もない赤の他人を巻き込み、自分と違うと知った途端異世界人を見下すリョウイチが、自分を守るために独りにする人を選ばないとは、私は到底思えない。

主人公が異世界側に堕ちるEDも見てみたい気もするが、なんというかリョウイチは信仰してるって言う割には信仰心足りなさすぎて、堕とされるならもっとマジヤバでガチヤバなやつにやってもらいたいので、リョウイチさんは追い苦悩して今の数百倍ぐらいはのたうち回って痛覚どころか闇の感情しかなくなるぐらい堕ち直してきてもらえますでしょうか。よろしくおねがいします。


●茅ヶ裂マモル
初っ端からネタバレをかますが、異世界人と人間のハーフとのことで、もうどうやって子供作ったのかその過程が気になって頭の中ぐるぐる回ってたので恋愛模様に関してはちょっとスルーしてしまった。それでもリョウイチルートよりは優しく穏やかで誰にも見せずに苦悩している彼に惹かれるのは理解できたが。
彼のルートも色々伏線が貼られているのは感心した。味覚に関すること、聴覚に関すること、やたらと固執する違和感のある右腕……などなど。この謎を散りばめつつ回収していく様は他のルート同様、わざとらしくなくうまい回収の仕方で、かつ主人公とのやり取りもあってとても楽しく見ることが出来た。
異世界人はどちらかと言えば、過激であればあるほど感情が揺さぶられて楽しめるのだろうが、彼の本質はそれとは真逆で、穏やかで思いやりがあるのでなんとも切なくて良い。逆に彼との対比で、リョウイチのほうが過激で他人などどうでもいいと思いがちなのが面白い。どっちが異世界人なのかわからないですね。どっちも人間なのか、どっちも異世界人なのか、それともどちらでもないのか。
右腕を大切にする理由は切なさを極めていて良かった。自分が生まれてきた理由を考え、愛情があって生まれてきた証なのだと、異世界人化している右腕を『自分である』と捉えて大切にしている。それでも過去の映像を見て、狂人になってしまったように見える母の姿を見て落胆し、自分を愛してくれる存在などいないと諦めたところに現れたのが主人公だった。主人公も異世界人の本当の姿を見て具合が悪くなってしまったり、それを見て『自分は受け入れられない』のだともらいゲロが如く具合の悪くなるマモルを見るのは心苦しかった。もちろんこの話は主人公がマモルを受け入れてこそ輝くし、そういうラストで終えられるのだけど、厳しいことを言うと、もし右腕とそれ以外の状態が反転していても主人公は好きになったのか?と問いたい。異世界人化しているのが右腕以外で、それでもなおマモルの内側が同じでも主人公は同様に愛することが出来たのだろうか。到底受け入れられない異物を受け入れ、自分と全く違う生物であることを理解し受け入れ、それでもマモルのことが好きなのだと、そう言ってくれる展開のほうが見てみたかった。まあ乙女ゲーである以上そういう展開がウケないと言われてしまえばそれまでだが、このテーマでそれを扱う以上、そこまで描いてほしかったなという気持ちを捨てる事が出来なかった。
だから、最後に自分の個性である右腕を切り離してしまった彼を見て、私はなんとも言えない気持ちになった。それはマモル自身の個性で、ずっと大切にしてきたものであって、例え主人公とは違うものであろうと、なかろうと、そのまま大切にするべきだったんじゃないのかな。それこそがマモルの苦悩であったとは思うが、その体で生まれてきて与えられて、今のマモルを形成してくれた大切なマモルの一部であるように思えたので。

そうそう、リョウイチは自らスポンサーになった人間だが、マモルはスポンサーにならざるを得なかった半異世界人で、この対比は面白かった。中身もほぼ真逆なのが色々と考えさせられるものがあってとても良い。ラストシーンも対比していて、マモルは過去の自分と決別して、新しく生まれ変わることに決めてこの世界に終止符を打とうとする。どこまでも対比していてその点がすごく面白かった。

マモル「あなたと生きる世界は、幸せに満ち溢れていますね。どんな傷も、苦しみも、怖くない。
小さなことに思えます。生きることは幸福です。……あなたがいれば」

若干危険な考え方なようにも思えるが、愛する存在を得て世界が変わるのは乙女ゲーにとても相応しい。でも誰しも心の拠り所を持って生きているものだし、誰にも愛されず誰も愛することも出来ずただ漠然と生きるしかなかったマモルが唯一手にしたかったものを手に入れられたのは良かったなと思ったし、心温まった。

いや、しかし、本当に……どうやって子供作ったんだろ……エロゲ脳なのでそればかり気になってしまう。
(追記:裏バレブック読んだら解決しました。とりあえず私のエロゲ脳が心配するようなことは無くてほっとしたような、種のそういうことを超えなくて残念なような……)


お次は残りの3名です。実は初見の段階だとメイが最萌だったのが自分でも意外だったが、なんかとんでもない闇抱えてそうじゃないですか?いや抱えて無くてもいいんだが、なんかこういう中間管理職タイプを好きになってしまう傾向にある。気がする。ソウタは辛辣な言葉を投げるが、言っていることは至極まっとうで、話が進まなくなりそうな時に素晴らしいタイミングで投下してくるので大好きです。自分に正直に生きてそうなやつが好きなんだ私は。タクミについては私のショタコンセンサーがあんまり引っかからないのが残念。でも12歳の小学生なら間違いなくショタなのでタクミくんは胸を張っていい。これで中学生だったら私は膝に土を付けて倒れ込みながらおいおいと嘆き悲しむが。
女1人!男8人!性別不明1人!のドキドキわくわく共同生活!
男女比すごすぎて裏切り者がどうとか以前にプロデューサーの助平心が透けて見えるようでプレイ前からテンション上げ上げでした。この男女比露骨すぎてむしろ推せますよプロデューサーさん!

舞台は近未来、今よりも情報統制がされて機械も発達していた。ある日突然アルカディアとかいう異世界にぶち込まれた主人公は、強制的に異世界配信という異世界人たちに見せるドラマを演じさせられることになる。……強制されることがドラマぐらいでよかったな、ほんとドラマでよかった。この男女比でむしろさせられることがドラマだけってある意味捻くれてるっていうかいい趣味してるな。

そんな感じで飯も用意してくれるし風呂は一瞬で済ませられるし掃除も洗濯もしなくてもいいし周りはイケメンパラダイスだし、もうずっとみんなでここで適度に暮らそうや……って思いながら重い腰を上げてプレイをしていた人間の攻略感想です。


●萬城トモセ
乙女ゲーにおいての幼馴染枠って大体不憫枠なのでスタートダッシュから主人公好き好き!その他みんなじゃがいも!な態度を取る彼をこれ以上ないほど不憫なものを見る目で見てしまったのは申し訳ないとは思っているが、例にもれず本当に不憫だった。
トモセは露骨に主人公に好意を寄せていることを隠さないし、近づく男どもも普通に牽制する。このどう考えてもアレな男女比にも一番最初に物申してたし、主人公が大切で好きなんだなあというのは嫌というほどこちら側に伝わってくる。むしろ暴走しがちでちょっと抑えろと言いたくなるほどトモセの苛烈な感情は画面越しに波動となって体感できた。

そんな画面越しの私にすら伝わるトモセの好意を、頑なに見ないふり気づかないふりをする主人公。理由は、肯定否定してもどちらにせよこの関係が崩れてしまうのが嫌だから、らしい。ナンヤソレ。
幾千幾万もの幼馴染たちを攻略し、その他のルートで彼らが散るところを見てきたが、自身のルートでさえこの理由で返答も貰えずにずっと濁らせられているトモセを思うだけで、下戸の私がトモセの代わりに自棄酒でも呷ってやりたいとすら思った。そして便器にでも顔を突っ込んで胃の中のものと合わせてその感情やもろもろを水に流してやりたい。もちろん主人公にそんな態度を取られてしまうトモセは次第にこの異様な状況を「むしろこの世界でドラマしとけばチューとか恋愛関係疑似体験出来るしラッキー」とか解釈しちゃうのである。涙と胃液が止まらん。妄想の世界だけでオッケーって気持ちにまで下がってきてるなんて可哀想だ。
いやこれでもトモセはここへ来るまでも相当に待ったんだろう。作中でも言及されていたが、主人公を焦らせてもだめだと気遣う発言も見受けられた。そのトモセがこの非日常の世界を手にすることでストッパーが壊れてしまう様は不憫ではあったが、とても楽しく見ることが出来た。平然を装っているのに、中身が壊れ始めている。異様な世界に順応して壊れていく様子はトモセには申し訳ないが面白かった。普通ではない狂い方だし、それは主人公への感情が引き金だなんてとても美味しいじゃないか。
主人公の今の関係が心地よすぎて壊すのが怖いという気持ちもわからなくもないが、トモセの感情を有耶無耶にして逃避して気づかないふりをすることは、それ以上にその関係が壊れるリスクを背負ってでも踏み出そうとしたトモセの感情すら踏みにじる行為でもある。もし、ここで幼馴染以上に見られないという返答をしたのなら、トモセも諦めるなり諦めずに頑張るなり気持ちを次に進めただろうし、私も「それならしゃーないな」で納得出来たんだろうが、誤魔化すというのは対等な感情を求めたトモセにあまりにも失礼に思える。
そのうえ主人公は、いまはそういう問題じゃないだろ、という態度を取る。ある意味とてもご尤もであるが、悪い言い方をすればトモセの一世一代の感情から逃げたゆえの結末であるので、ここで主人公が怒るのはお門違いというかなんというか……この二人の騒動に巻き込まれる周りの人が可哀想だ。よく皆キレないでこの二人のいざこざ見守ってたな。皆大人だな。他8人だか7人だかの生命がかかってんねんで。

主人公の荒療治でトモセも周囲を気遣う目を取り戻し、主人公もなんだかんだトモセへの気持ちを自覚して、ディレクターに交渉して元の世界に戻る。色々端折ったが、ラストのトモセの戦いはそれまでの伏線も回収していたし、トモセの演技への情熱も感じられるようで良かった。あんなに頑なだった主人公の感情がいざこざであっさり感情を自覚したのは結構不思議だったし、もう少し丁寧に気持ちの変遷を描いて欲しかったという感情はあるが。それだけトモセへの返答を濁らせる主人公になかなかにストレスも溜まったのだけど、トモセの思考回路がそれ以上におもしろ愉快だったのでオッケーです。多分プロデューサーさん辺りと仲良くできそうな気がしなくもないな。


●明瀬キョウヤ
私はこういう明るくて統率力あって希望に満ち溢れた人間が実は裏で闇営業してましたみたいなのがなかなか嫌いじゃないので、豹変してくれ~!狂ってくれ~~!って願いながらプレイするという悪趣味と言うにふさわしい目で見守っていたのだけど、残念ながら清廉潔白だった。すまん!明瀬!申し訳ない!この世界には特殊な性癖を持った人間ってのが存在するんだ!

恋愛描写についてはやはり濃いとは言えないのだけど、この環境下では多少の吊り橋効果的なものはあるものだし(リョウイチも触れていたが)、昔からこういう主人公たちに圧力を掛けてくる黒幕は恋のキューピッドを担ってくれているので、可愛い年下の彼女も無事にゲットだぜ出来たし結果オーライなのではないだろうか。協調性あるしリーダーシップあるし頼りがいもあるし、希望も忘れないしその名の通り明るいし、主人公が惹かれて好きになるのもよく分かる。
それ以上に伏線回収が綺麗でそういう意味でとても楽しかった。主人公を妹みたいに扱う→実際に妹が居てそれが行動理由になって情報局に入る、会話が上手く噛み合わない部分がある→記憶が消されている、明瀬の両親がスポンサーだった絡みの話などなど……もちろん物語の核心に迫る部分は隠されているし、そこにやはり多少なりともフラストレーションは貯まるのだが、まあそれは後々回収されることを楽しみにしたいと思う。

そうそう、キョウヤの「傲慢な卑屈」に対する会話はなかなかに面白かったし考えさせられた。

キョウヤ「あれもこれも出来ないと不安がって、努力せずにいることが怖い。そういうのが、卑屈……かな。
そしてそれを人にも求めるところが、傲慢なんだと思う」
申し訳無さそうな目が、私を見た。
キョウヤ「瀬名。俺はあの時、『友人の死を受け止めて乗り越えるべきだ』と思ったんだよ。
そういう『努力』をすべきだと思ったし、もし俺なら出来ると思ったんだ。……俺なら、な」
大きなため息が出る。悔いるように頭に手を当て、言葉を重ねた。
キョウヤ「俺は他人も同じように出来ると、そうすべきだと思い込みすぎだ。それが俺の傲慢、かな」

……割と普通のことじゃないのか?度合いにもよると思うが。一歩踏み出すのが怖いのは割と誰にでもよくあることだと思うが。
絶対できる!俺なら出来るから!はポジティブな言い方をすれば相手への期待だし、「この人ならそれが出来る」と思うことは、相手への信頼でもある気がした。もしキョウヤがどんな人にでも同様のことを思うのならそれは『やりすぎ』に変化して『傲慢』になるのかもしれないが、なんとなく、キョウヤはある程度人を見て発言しているんじゃないかなあと思ったし、主人公にこれを明かした時点でやはり主人公を信頼しているからこそなのだと感じた。
まあその解釈はともかく、それを誰かはわからないが他者から言われて凹んでいる明瀬がとても興味深かったというか。こんなにポジティブ街道まっしぐらな言動を繰り返しておきながら、いざ他人から指摘されて、自分は感情を押し付けすぎていたと一歩引く事が出来るのなら、明瀬は間違った道に進まないような気がするな。というか、トモセとか獲端とか見て元気だしてほしい。アレぐらい空気読まなくても割と生きていけるから、たぶん。

ちなみにこの発言も巡り巡ってラストあたりで明瀬に直撃するところも良い。きれいな伏線回収だった。そこで主人公が立ち上がって助けに行くところも良かったし、主人公もきっと辛い時に明瀬にたくさん助けてもらったのだろうし、良い相互関係なんじゃないだろうか。凄い安定感のあるカップルが完成してしまった。
そこでラストでディレクターが一人残してその他が帰るか、その他を残して一人が帰るかの選択を迫るのだが、あっさり自分が残ると言うもんだからアル●ゲドンのテーマ曲が脳内で掛かってしまった。トモセルートの凝部もそうだったが、こんなにかっこいい「俺はここに残る」はとてもシビれた。

あとこのルートで拍手を贈りたかったのは、陽キャにありがちな、敬語やめてタメ口OKだよ~!な発言を主人公がスルーしまくって最後まで敬語を貫き通したところ。よくやった主人公!よくぞ美しい日本語を守ってくれた!
そして皆の前で俺たち付き合ってまーすを繰り出したあとにトモセが明瀬に「しばらく無視するんで」と面と向かって宣言するのが笑ったし正直トモセのそういうとこ凄く好きですね。そうそう簡単に割り切れない思いを抱えているのはルートを通ったのでわかってはいるけれども、嫌がらせすることも嫌味を言うこともなく、主人公の明瀬への気持ちも認めて、引くところは引く。本当に主人公のことが大切だったのだなあと他者でのルートでも見せられると、逆にこちらが辛くなってくる。美味しいものでも食べて元気だして行こうぜトモセ……。


●射落ミズキ
性別不明の御一人だが、最後まで見事性別不明を貫き通し「答えはベッドの中で」を繰り出されたのが妙に笑いのツボを刺激されて大笑いした。私は疲れているのか。……いや、でも最後まで性別不明を貫き通しあとはプレイヤーのご自由に、というのは誰も裏切らなくてそれはそれできれいなオチだなと思った。自分は答えがほしい人間なのでどちらか示して欲しかったが。主人公はもうどちらでも良いという判断をしているし、私自身もどちらが来ても「美味しい」とは思うが、できればやはり男性であってほしいので私の脳内では男性で終わった。

明瀬ルートが自己を犠牲にして全員を救う話だったが、射落ルートはそれとある意味対称的であると言える。明瀬が全員を救えるキャラクターなのだとしたら、射落は何らかの犠牲が必要なキャラクターだった。要するに主人公属性がない御方なのだが、こういう人が主人公になると上がる問題、みんな大好きトロッコ問題です。
少数と大多数、どちらか選択できるとしたらどちらを助けるかの思考問題。射落は過去異世界配信の協力者となった兄を止めきれずそのせいで大勢の人を異世界配信で亡くしたことを悔いており、次その選択が迫られる時が来たら迷いなく少数を犠牲にする方を選ぶと宣言される。これほど立派に建設されたフラグもあるまい。思考実験なので明確な正解は存在しないし、この問題を提示された分だけ答えは存在するのだと思っている。どちらを選択しても悔いは残るし、誰かの生命は助からない。だとすると、こういうのは選択時に『どちらを選べば自身の心が軽くなるか』なような気もする。射落がした選択もきっと、大勢を選べば射落の心が多少なりとも軽くなるからだろうなと。まあそれだけの意味じゃないってことも理解は出来るが……難しい問題だな。選択時は良いと思っても選んだあとに後悔することも多いだろうし。

プロデューサーさんを追い詰め、今まで犠牲になったその他大勢と、ここに居る10人とを天秤にかけるも、管理局側にも異世界配信に協力者がおり、一転して逆に選択を迫られるシーンは正直めちゃくちゃ興奮したし、美味しいシーンだった。大変にいい趣味をしていらっしゃるプロデューサーさんが提示した選択は、射落が大切に思う主人公と、自身の兄を含めたそれ以外の人間。ここに来るまでにやり取りで少しずつ近づいて、信頼して、嘘をついていたことを悔いて、ドラマの中ではあるけれど主人公を刺殺して、それでも射落を信じてくれた主人公と、自分の兄を含めたその他大勢の生命。どちらをとるか。天秤にかかる重さが重ければ重いほど選択は難しくなるし、そうなればなるほど私はむちゃくちゃ興奮する。ここでどちらを選んでも私は射落を責める気持ちにはなれなかったし、それは関係ない部外者の視点から見ているからに他ならない。ここまで射落の思いや感情を追ってきたからこそ肩入れしてしまうけれど、他に犠牲になった人にもそれまで追ってきた人生というものがある。残酷かもしれないが、それでもこれは射落ミズキの物語だし、理性で動いてきた射落が最後の最後で自分の主人公への気持ちを認めて、感情で動いてたった一人を選択したのは、イヤな言い方をするならば、恋愛ゲーとしては正しい姿なんだろう。ここでもし射落が主人公を選ばなくても、それはそれで一番大切なものを失ってまで使命を貫いた思いの強さを評価したように思える。それでも射落が主人公を選んだことは、それとはまた違ったとても良い部分の感情も含まれているようで、そしてそれは本来人が持ち得る直情的な意志のようで、それまで自分の気持ちや感情すらも欺いて来た射落の姿が見えたようでも在って、なんだか射落が身近に感じられた。
あと主人公自ら犠牲になろうとする点はとっても興奮した。愛する男のために自己を犠牲にするだなんて美しいじゃないですか。好きな展開が怒涛のようにやってきて興奮しっぱなしだった。

残念だったのはラストシーンで、二人で異世界に残ってなんだかんだ選択できなかった人たちを助けているというオチ。人命に関わることなので心証は良くなるが、究極の選択をした重さは全くなくなるのでそういう意味ではとても萎えた。あとなんだかんだ黒幕も協力してくれている(規制が緩和された?)的な発言があったのも頂けなかったなあ……黒幕がどういう思いで彼らを手助けしたのかはまだわからないが、そんな中途半端ことするぐらいなら最初からこんな迷惑なことしないでくれるかという思いだけが残った。
最後に。CV緒方恵美の破壊力はとんでもなかった……ほんと素晴らしく性癖のツボを押してくる声帯だったし、演技もミズキの正体不明な感じを出してくれてとても良かったです。


いやしかし管理局の人に二人も入られてるとか黒の組織ばりのスカスカっぷりです。敢えて引き入れたんだろうがいいんかそれで。
今の所異世界配信側の意志が全く明かされないしわからないので、なんでこんな事すんだろ的な軽さで見ている。明瀬の両親も射落の兄もどうしてこんな狂ってるとしか言いようがない事に感化されるのかが理解出来なくて、ここが最後まで理解できないとちょっと厳しいものがあるが、それは最後まで見た上で判断したいと思う。
自分も大概拗らせの民なので、ほんとに裏切り者って一人なんか?皆諸事情抱えてるんじゃないか?と思って居て、誰も信じてないし誰も疑ってないみたいなイケメンパラダイスを心から楽しんでしまっている。これは間違った楽しみ方なような気もしなくもないが、明瀬に求めて居たように狂ってほしい人は何人か居るのでその辺りを楽しみにしながらプレイしたいと思います。

今の所一人だけ全く相容れないのは双巳リョウイチさんという御方なのだけど、この方の恐怖発言集が作れるぐらいスクリーンショットを撮っているので、彼のルートでは存分に殴り合いたいと思います。黒幕であろうがなかろうが殴り合いで決着を付けます。
とにかくめっちゃ疲れた。色んな意味で。


Navelから派生した新ブランドCitrus。ロープラで攻略対象一人、選択肢一個。話はそこそこ長くロープラにしては頑張っている方だとは感じたが、長けりゃ良いってもんじゃない。導入部はともかく、物語が一旦落ち着いてからラストに進むまでの中だるみが半端なくて、途中で何度放り投げようかと迷ったぐらいのつまらなさだった。それでも投げなかったのはこのゲームの攻略対象が一人だとわかっていたしロープラだったからクリックしてりゃいずれ終わるだろうという半ば投げやりな気持ちだったが、そんな考えも粉砕されかけるほどの退屈さを体感した。エロシーンはいくらがギブりそうになったが根性でラストまで見た。こっちも金払ってるから出されたものは全部食ってやらあ!の精神でなんとか最後まで平らげた。が、それが美味しかったかとか消化して満腹中枢刺激されたかというとまた別問題。そんなわけでロープラの良さよりもロープラだからこその悪さのほうが目立ってしまって私の中の海原雄山がひたすら唾飛ばしながらキレていた。

詳しい理由は後述するとして、システムについては普通のADV。不便なところはなにもない……というか選択肢も一個しかないので周回プレイ等の不便さもない。音楽についても良くも悪くも気になるような点はなかった……と思われる。
CGについては横顔や一部角度の絵が相変わらずアレだったけれども、鈴平絵が好きな人は満足出来るんじゃないでしょうか。私は有馬の顔面の作りが非情に好ましいという理由でこの作品を購入したのだが、そういう意味では期待したものが得られて満足でした。


さて、シナリオについて語るが…………正直この作品を楽しめたのは導入部だけだった。もう一声するとエロシーンさえないサブキャラクターたちは好ましく見れた。つーか自分はこっちのおっぱいのほうが揉みたかった。おっぱいは大きさじゃない質と形だと自分も思うが、中盤怒涛のすぴかお嬢様とのエロシーンがあるなら一回ぐらいでかいおっぱいとか中くらいのやつ揉ませてもらっても良いんじゃないでしょうか。連続して意味があるんだかないんだかよくわからないエロシーンが挟まれて、私は朧気な意識の中で有馬のちんこの長さ最初と違くないか?随分伸びたな?とか大変どうでもいいことを考える始末だった。

話を戻すが、導入部についてはまあまあ楽しめた。ヒロインである乙部すぴかはただの食事では栄養を摂取することが出来ず、人の生命を食らって命を長らえる特異体質で、5年前のある時本能に目覚めて周りの人間の生命を食らった。その惨事の中でも生きていたのが有馬だった。以降有馬はすぴかの従者としてそばに居ながら、生贄として下半身からカッスカスになるまで精(液)を搾り取られる良いんだか悪いんだかな日常を強いられていた。すぴかは過去の惨事の時に有馬の父親を殺してしまい、有馬から普通の日常を奪ってしまったことを悔いており、そして有馬もなんだかんだお嬢様を憎みきれず首を絞めようとしても決心がつかず……な微妙な関係性は見ていて面白かった。問題はこのすぴかの性質の謎が明かされる中盤から、すぴかが主要人物の生命を奪ってしまうところまで話が殆ど動かず二人はそれまでの色んな意味での絞り絞られの関係性から、有馬との男女としてのセックス楽しいな~な描写がひたすら繰り広げられるところである。
これが本当に全く物語が動かず、同じ話を何度もし、かつ敵対していた立場の危うい人間を屋敷に連れ込んだり、いきなりアナルに突っ込んで開発したりメイドプレイを楽しんだりしていてその様子をずっと眺めさせられるのは非情に良い睡眠に誘われた。……一度や二度ならばまあ普通のセックスしてこなかったもんな、楽しんどけ楽しんどけとか思いながら見ていたが、それが三度四度と続くと、いい加減もうセックスするなと真逆のことを思わされている不思議。これが抜きゲーならいくらでもセックスしようがなんだろうが納得できたんだろうが、Navelの派生ブランドで正直これをやられるのは注文したものと別のものが出てきた感がとてつもなかった。
あと、何度もいうが、この間驚くほど話が動かないのである。大半がセックス過多な描写なのでそれもあるが、それでも物語が動かない。物語が動かない上に二人の思考を見させられるのだが、それもまたなんだか納得行かないものだった。これは後ほどキャラ感想のところで書きたいと思うが、簡潔に書くのならば二人共現状を打破しようという意志が全く感じられないのである。
一応すぴかや乙部家の謎などの解説も入るが、それを受けて、次はどう対応しようとか、敵がいる中で攻撃された場合どうするかとか、全く動いてくれないのである。全く動いてくれないどころか有馬が髪フェチだとかという鼻に小指を突っ込みたくなるほどどうでもいい設定を掘り下げられ、ハーレム状態の有馬がすぴかやサブキャラクター達の髪を梳く話とか見させられたときは序盤の有馬の比ではないぐらい私の気がおかしくなりそうだった。

そんでそんなセックス三昧な日々を送っておきながら、唐突に「何度か体調を崩しかけていた」とか数行で語られて、ではセックスしなければよかったのでは?とか湧いてくる疑問も苦虫を噛み潰した表情でなんとかゴミ箱にぶっこみながら、あんなにセックスしておきながらも愛した有馬を殺すのが怖いから今まで見たく精を搾り取って来ませんでした、有馬は結局私を愛してるの愛してないの?みたいな話をされ、私はゴミ箱に胃液ごと苦虫を吐いた。私の中の雄山はすでに意識を失っていた。序盤有馬が戻ってきて普通のセックスを合意で受け入れてた時点で答え出てねえか、と思うが、これがまた微妙な曖昧な表現で濁らされて居たのがなんというか……この物語の理解は出来るが納得いかない部分の一つ。
そんでもってまた唐突に(一応理由はあるのだが)、夜中に急に目覚めて町中をさまよい歩いたところでサブキャラクターの一人の生命を食らってしまったところでお嬢様は唐突に何かが吹っ切れたのかやっぱ有馬の生命食べたくないから別の人間食べて生きるわとか言い出し、私はまたもや苦虫を奥歯で噛みしめるプレイを強いられた。ラスト付近でも有馬が「実はお嬢様がこういう体質の人間だって知ってました。祝い子を目覚めさせるために頑張ってました」とか告白してくれるのだが、いやいや序盤も序盤の物語が動き出してその情報を教えてくれた月子を有馬が撃った時点でなんとなく察せられないか?つーか有馬が祝い子を知っていた時点で答えは出てるのでは?とか思う私をよそに、まるで衝撃の新事実が如くな反応をするすぴかお嬢様を見る頃になってようやく自分の中の雄山が覚醒しむしろ苦虫の味を吟味する方向へ転換した。もうかなり終盤だったけども。

大味で説明したが、こんな感じで一度解決したと思われるようなことをもう一度掘り返されるのは納得し難かったし、中盤アホみたいにエロシーンばかり挟まれるのも苦痛で仕方がなかった。二人共自分やお互いの感情を考察しようとしておきながら、結局それを吐き出すことはなく関係性は変わったと思いきや実はそんなに変わってませんでした的な感じになるのは二重に展開を見させられているようで、このロープラの短い話の中でそれをやられるのは苦痛でしかない。
ライターの癖かもしれないが、文章の構成も言い回しを替えて同じことを二重に表現されているところも多々見受けられた。だから小難しい表現を使っていないのにも関わらず、とても読みにくく理解しにくい。決定的な表現を使わず、曖昧な表現で躱されるのも効果的なこともあるが、それも何度もやられると、状況がなんだかよくわからない事になって各々の心情を捉えにくかった。なので最後までなんだかよくわからないがよくわからないまま解決した話で終わってしまった。そんな感じで、まったりとしていてそれでいてしつこい芳醇な苦虫の味と苦痛により大変悪くなった口内環境だけが残っている。


以下よりキャラ感想。話の構成も合わなかった上に、主役二人も合わなかったので楽しめなかったのにはとても納得している。ロープラとは言え新作で購入したゲームが合わなかった悲しさを堪能した。これもまた一興。だが納得はしていない。


●乙部すぴか
とにかく自分とは相性の合わないヒロインだった。これに尽きる。ロープラで一ルートしかないゲームのヒロインが相性が合わないのだから、私にとってこの苦痛の惨事とも言えよう現状は当然のことであろうと、そういう意味では非情に納得している。
何が合わないかって言うと、現状を打破しようという意志が感じられない点である。例えば他人の生命を吸い取ってしまうのなら、それを加減する練習をするとか、一晩で有馬を搾り取れるだけ搾り取る的な方法じゃなくて、週に一~二回とか平均値の回数でやってみるとか、なにか別の方法を取ろうとしなかったのは疑問。その上ただ有馬とセックスしまくっていたくせして、結局他人の生命なんてどうだっていいわみたいな開き直られるとどうしようもない。序盤の有馬の父親を奪ってしまった苦悩は一体何だったんだ。そもそも序盤も序盤で昼と夜で性格が違うみたいな二重人格の設定も、己の性質を受け入れてしまえばオッケー!融合!みたいなあっさりした展開もどうかと思った。お嬢様の昼と夜で分裂した理由も曖昧なうえ、他人の生命を奪ってしまった後悔と苦悩からだとしたらそれだと後半の展開と苦悩が軽すぎる。有馬の父親の生命を奪ってしまった上に、親しい人間の生命を奪ってようやく悪い方に吹っ切れられてもすぴかへの印象が悪くなるだけだった。
あとは、たとえ生きるためだったとはいえ、有馬の父親を殺し、その上で有馬に殺してほしいと願うのは傲慢だと感じた。他人の生命を奪ってしまう苦悩を味わっているのに、それを有馬にも味わわせるのか。それは有馬にとっての苦痛にしかならないのに、自分が苦しみから救われることばかり考えているようでどうにもこうにも心証が悪い。有馬の大切にしている人を殺したから有馬に殺されるべき、という考えは安易すぎるし、そこに有馬への意思確認がなされていないのも一方的すぎる。
この上で「悲劇の主役になるつもりもない」とか言ってくるので、どの口が言っとるんかと思った。後半すべて吹っ切って、やっぱ祝い子やったるわな展開になった時は本当に一体何を苦悩して何に耐えてきたのかと。立場があるから自由に動けないのはわかるが、立場があるからこそ出来ることもある。自分の生い立ちや性質を調べることもせず、理解しようという意志も感じられなかった。似たような立場の月子がきちんと自分の意志で動き行動しているからこそ、その対比がまた苦々しかった。苦悩だけが十二分に描かれていたけれど、苦悩から抜け出す行動をしてくれないと共感を得にくい。本人は否定したが、それは苦悩に酔っ払っているということにはならないのか。かつ自分の欲求を満たすためにセックス三昧なんてやられた日には、結局すぴかはこれ以上ないほど欲望に忠実な存在だった。


●隈方有馬
顔面が大変よい。それだけで五割許した。しかし許されない範囲が大きすぎるため五割許したところでなあ。
実はお嬢様を利用してました、祝い子の研究してました、とか言われてもそれがどういう研究でどう作用してどれだけの成功率だったかとかは曖昧にしか語られないし、有馬も有馬ですぴかにカッスカスにされてたからこれでイーブンで良かったんじゃあないだろうか。終盤にこれを言われても、だいたいなんか祝い子と関係あるのは察せられたから衝撃の度合いも少ないし、この事実を話さないですぴかの気持ちを受け入れる事は出来ないみたいな回答は、いまさら何を言っとんねんとしか思わなかった。有馬のその自己満足の感情のために死ななくてもいい人や苦しまなくていい人がこれから苦しむかもしれないということを全く頭にないのがキツイ。有馬も身近な人を殺されて自分も殺されかけて苦しんだのに、その痛みを忘れるのが早すぎる。それに、自分の状況を話してスッキリした上で有馬も有馬で「後はお嬢様が好きにしてください」みたいな他人に委ねる思考がいけ好かない。メイン二人が互いに負い目があるのはわかるが、だからといって判断まで放棄するのはいかがなもんか。
すぴかに精根尽き果てるまで搾り取られるから、他所の女と遊ぼうとは思わないし、自慰してその一発が後々の致命傷になるのが怖いから自慰も出来ないみたいなことを序盤で語られた時は、面白い設定だなあと思ったもんだった。が、中盤でお嬢様に吸い取られなくなった瞬間、正直麦の身体は興奮するみたいなことを語られた時は、喉元過ぎればなんとやらだなと思った。5年ですぴかにしか愛情を抱けなくなったとかいうエピソードがあればまた別だったんだけど、そういうわけでもないのにすぴかへの愛を語られても意志が弱いようにしか感じない。それが生理現象だということは理解出来るが、だとしてもこの短い話の中で、すぴかしか攻略出来ないのに浮気めいた表現をされるのは結局有馬の意志は何だったのかを捉えにくくされた。そういう感情を持ってしまうことが悪いというわけではなくて、それはこの短い話の中で描く必要があったのか?という話。リアリティはあるのかもしれないが、すぴかしか攻略できないことを強いられているプレイヤーの立場としては、それ正直に言う必要ある?と思ったし、その意志をわざわざ確認してくるすぴかに対しても同様のことを思った。すぴかもすぴかで自分の力のせいで有馬が自分にとらわれて正常な思考を無くしているんじゃないかと疑う気持ちも分からなくはないが、それは麦がいる前で確認するのは無神経すぎるし、結局有馬のことを信用していなんじゃないかという気持ちに向かってしまう。まあこれも後ですぴか本人が嫉妬だと認めていて、ただひたすらに麦が可哀想だった。というかそもそもカッスカスになるまで搾り取られてるのに寝て起きたらそこそこ動けるみたいなのも結構手加減してくれてるんじゃないのか。すぴかが無意識に手加減してくれていたのか有馬の体力が無尽蔵だったのかどっちだったのかはしらんが。
あーあと、俺はロリコンではないけどお嬢様の小さい身体でもちんこは勃つけどロリコンではないからマジで信じて、みたいなことをセックスするごとに何度も何度も何度も言われるのは自分でもよくわからんが猛烈に腹が立った。俺は小さい身体でもちんこは勃つ!ドン!みたいなふうに言われたほうがまだ納得が行った。その言い訳は一体何なんだ。意思表示するにしても一回でいいし否定すればするほど肯定の意味と捉えざるを得ない。
そんな感じで主役二人が自分にとって地雷も地雷で進めば進むほど私の表情は無へと近づいていった。


●阿久戸麦
私にとってのこの作品の聖域その1。麦は自分の立場を弁えているし、弁えていながらも度々有馬にユーモアあるアピールをしてくれていた。序盤で麦が冗談めかして「自分とどうですか」ということを有馬に問いかけるのだが、有馬はそれを『そうならないのがわかっていて冗談を言ってくれている』と解釈するのだけど、女心が全然わかってないので出直してきて欲しい。案の定終盤で状況に追い詰められた有馬に対して麦が一緒に逃げないかと有馬を誘うのだけど、心の底からここで選択肢がほしかった。私はそのまま麦の豊満なおっぱいを揉みたかった。その魅力的な谷間に指を突っ込みたかった。そんな面倒くさい女なんか捨ててこっちの色々弁えてくれながらも自分のことを好いてくれる可愛い女の子にしようよ。と、この時までは思っていた。しかしこの告白シーンで麦の株爆上げの有馬の株大暴落。

麦「……どういう風にですか? 幸せになってほしい、と言うだけなんて無責任過ぎませんか。どのくらい、本気なんですか」
有馬「もし麦さんがよその男と交際を始めたなんて聞いたら、機嫌が悪くなるかもしれませんし、そいつが君を幸せにできなかったら落とし前をつけに行きますよ」

なあーにいってんだコイツ。自分が落とし前付けれる立場だと思ってるのか。
これを振った側が言うのが本気で腸が煮えくり返るどころか地獄谷みたいになってるし、雄山も食べることを拒否するどころか既に店から飛び出して行ったわ。あ、麦の項目なのになんか結局有馬のこと語ってるな。振られた側にこういうことを言うのはタブーだとわかっては居るが、それでも言わざるを得ない。麦にはもっとふさわしくかっこいい素敵な男性と幸せになってほしい。こんな下半身カッスカス男なんて捨てて、素敵な男性とめいいっぱい幸せになることを祈っている。
この後麦は笑顔で有馬への好意を告げて自分の気持ちに決着を付け、すぴかの女給としての立場を弁えてすぴかを支えるところもただひたすら好感度が上がっていった。


●弓張月子
状況はいくらか違えど、月子とすぴかは立場が似ている。立場が似ている分、比較して、月子のほうの魅力が勝ってしまっている。祝い子として育てられて失敗作だと劣悪な環境下に置かれても、前を向き、後ろを振り返らず、自分の気持ちにも状況にもちゃんと決着をつけようとしている。現状を把握し、己の立場や状況を調べ、学び、自分がどういった方向に向かいたいかをきちんと考えて行動している。だからこそ何も動かないすぴかとの対比が目立ってしまったし、月子がなによりも強い意志で現状を打破しようとしているところがとても心地よかった。恨みの対象になるはずのすぴかに対してもすぴかの感情や気持ちを尊重しているし。多分麦と月子どちらかが欠けていたら私は泡を吹いて倒れていたかもしれない。
ED後に見れる黄昏逸話というおまけでも、この惨事の根源の存在にきちんと決着を付けてくれてもはやストップ高になるほど株を上げ続けていた。ていうかそれは本来であればすぴかや有馬の主人公勢がするべき決着だったと思うのだが。まあもはやどうでもいいし自分は月子が好きなので最後までかっこよく素敵な存在で居てくれたことには感謝。


●烏丸志乃
とてもいいキャラしていたオネエサン。お姉さんに食べられたかったなあ……エロシーン楽しみにしていたのに無くてがっかりだった。後半はすぴかを動かすために配置されていただけなのはとても残念だったが、物語から脱落したかと思いきや実は生きていたのは、ご都合主義だとは思ったがそれでも嬉しかった。志乃さんとえろいことしてほしかったなあ、嗚呼。


●女給長
この人が作中で一番すぴかのことを考えてすぴかを一番に行動してくれていた気がする。エロいことしてほしかった。



大正時代かどうかはわからんが、浪漫的な設定もうまく活用されていなかった。着物着てるぐらいじゃないだろうか。現代設定じゃないと通信機器あたりの設定を描かなくていいし、まあこの時代あたりにしておけば伝奇的な雰囲気が出るのもわかるが、どうしてもそれだけでは物足りなかった。
基本有馬視点で物語が進むのに、有馬が居ない視点になるといきなり第三者視点になるのも混乱した。大体すぴかを中心に語られるのだが、それならすぴか視点にすればよいのに結局第三者視点でお嬢様の心情とか語っちゃってるのでその辺りも統一してほしかった。物語の謎についても読んでいけば大体察せられてしまうし、どこかで見たような物語をなぞっているだけなのもワクワク感すら掻き立てられなかったというか。
5年でセックスするうちに情が移ったのも察せられるのだけど、それ以上に何らかの心を通わすエピソードでも盛り込んでくれればまだ二人の離れられない関係性のようなものに説得力が出たのになあと思いながら見ていた。描かれるのが二人の始まりとエロシーンぐらいだけなのでどこにも感情移入出来ずに感情が彷徨ったまま消化すら出来なかった感じが残っている。

中盤エロシーンが多めだったが、Navel系列のゲームに抜き要素を主体として求めている人ってどれぐらい居るんだろうか。少なくとも自分はNavelにはそういうものではなく別のところで勝負してほしかったし、Citrusがそういう方向性で行くのならば抜きゲなら抜きゲでもっとエロさを出してほしかったし、黒いものを描くなら描くでもっと黒くするべきだと感じた。全てにおいて中途半端。味のしないただ黒い色のついた香りだけする安物のコーヒーでも飲んでるようで、これなら自分はいっそのこと水道水を飲みます。
06 2019

CARNIVAL 感想

いやー、興奮した。自分でもびっくり、超萌えた。


CARNIVAL
CARNIVAL
posted with amazlet at 19.06.30
S.M.L (2004-05-14)

あらすじ
主人公・マナブは昔から、嫌な事があるとその記憶を無くしてしまう癖があった。そのことが原因で、ある日マナブは殺人の容疑をかけられ逮捕されてしまう。
しかし、護送中にパトカーが事故を起こし、マナブはその隙に逃亡する。
勢いで逃げたものの途方にくれたマナブは、幼馴染のリサのもとへと歩き始めた。ずっと返しそびれていた「ハンカチ」を返すために…。


MUSICA!が来る前に、残りの瀬戸口作品をプレイしておきたいなと思い始めた作品。あらすじはだいたい知っていたし、私は瀬戸口廉也という人の書く文章に抗いようもなく心を揺り動かされるので、始める前は割と心持ち軽くプレイを始めた。もうどうやったって揺さぶられるんだったら構えずにプレイしようと思っていた。
それまでプレイした2作でどういう文章が来るかは知っていたし、重いは重いでそこは期待していたものがちゃんと得られて良かった部分も在ったんだが、前述した通り想定外に大層萌え転がってしまってたまらんかった。いやあ学も理紗も可愛い。二人まとめてよしよしいい子いい子したい。(これとは全然関係ないが岡本倫先生が過去にツイッターで語ってたあの気持ちドンピシャ。)
それでもよくよく考えれば、キラ☆キラもSWAN SONGもなんだかんだカップルのやり取りでめっちゃ萌えていた部分もあったし、私が瀬戸口廉也というライターの好きなところは、きちんと男女の恋愛を描いているところなのかもしれない。過去にプレイした2作もそうだが、CARNIVALでも、学には理紗しか居ないし、理紗にも学しか居ない。それはとても危ういことだし、実際物語はもつれにもつれて危ういどころではなかったけれど、その引き離せない相互関係が大好きなのである。いろんなものが衝突しまくって擦り切れて行ったこの世界では、互いにボロ雑巾になりながら崩れそうな両足でなんとか支え合っていた。互いが互いに惹かれ合う理由が懇々と描かれていて、この部分がこの人が創る物語に惹かれる理由の一つなのだろう。私はとにかく、向かう未来が明るかろうが暗かろうが破滅的だろうが、運命的に因果的に惹かれていくカップルに弱いんだ。全く、まいったまいった。

まあそんな自分の性癖はともかく、桑島由一氏が作ったプロットからはいくらか変化しても、これまでプレイしてきた瀬戸口氏らしい心理描写は納得したし、全体的な構成も含めて楽しんだところは大きかった。破滅へ向かっていく物語を楽しんだというと悪趣味だなと自分でも思うけれど、物語の謎やそれぞれが負ってきた過去と行動理由は納得も理解も出来るものだったし、物語は悪化の一途しか辿らなかったけど「そらそうなるわな」という道筋では在った。それでも最後に救いがあったような気がするし、ライターがどういった意志を持ってこのEDにしたのかは知らないが自分はラスト救われる部分があった。
他2作はどちらかといえば心理描写重視で、物語の謎や全体的な構成に大しての面白さはそれほど感じられたことはなかったのだけど、学の多重人格、理紗の過去などを上手く織り交ぜて謎を作り、全体構成がまとまっていたのは、他の作品にはない楽しさで驚いた。やはりこの人の真骨頂と言えば心の内側の描写であるだろうけれど、そうではないところで楽しんだからなんだか不思議な心地。これは桑島氏からのプロットから引き継いだものが功を奏したのか、それとも御本人が上手く利用したのか。調べたところによると当初のプロットよりは大きく書き換えられたらしいが、まあどちらかはわからないけどそういった意味でも楽しかったです。
粗があったといえばお粗末な警察の行動だろうか。そもそも殺人事件の被害者の一人である理紗のことを警官の百恵が知らなかったり、殺人事件の容疑者である主人公が逃亡したのに全然ニュースになっていない事とか。まあ物語の舞台が理紗の家と夏祭りの会場と学校ぐらいしかないからではあるんだけど、それにしても疑問が残る。ただこれらは物語の主軸ではないのでスルーは出来た。気にはなったけれど。

学の母は夫となるはずだった男性(学の実父)に捨てられ、母は学にその負の感情を与え、学は逃げ場のない現状を武という人格を作ることで逃避した。誰が一番悪いかを簡単に決められないように出来ていて、誰を憎むことも恨むことも出来ない苦しさが読者側に残る。それでも、誰に感情移入するかで、その人にとっての『悪』は決まるのだろうな。ただ自分は、『この人が耐えれば』とか『この人がもう少し頑張れば』とか思うことは確かにあったが、それでも私には明確に断言して言うことは出来なかったなあ。強いて言うなら大人勢にはもうちょっと頑張ってほしかったけれど、大人だからといって強いわけではないし、大人だからといって心が壊れないわけではない。毎日同じ場所に針を刺せば、たとえ厚手の板だろうが貫通してしまうように、きっと心もそう出来ている。それは学の母も、学の祖母も、理紗の両親もそう。描かれはしなかったけど、日々のどこかで軋轢を感じて、心がひび割れて、他者を思いやる心を失ってしまった。困窮していればしているほど余裕という物がなくなるし、そうして皆どんどん苦しめあって拗れていく。見事と評するにふさわしい描写でした。

一体、何が始まりだったんでしょう。
 志村先輩や、三沢先輩がしていたことは、確かに良くないと思います。でも、ここまでされるほど酷い罪ではないとも思います。
 じゃあ、武君が悪かったのかとか、学君が悪かったのかというと、私には、そうは思えないんです。
 学君は、そうでなくとも、昔から大変なことがあって、きっといつも大変な思いに耐えていたんだと思います。
 その学君を守るために、武君がしたことは、確かにやりすぎだとは思いますけれど、武君は武君で、学君を母親から守ろうとしても、学君自身に否定され、そして、ずっと閉じこめられて、他にもやり方はあったのかもしれないけれど、きっと、選ぶことは出来なかったんです。
 じゃあ、学君のお母さんが悪かったのかというと、お母さんもきっと、辛い目にあっていたんだろうし。
 どこまでさかのぼっても、みんな辛そうで、しかたなくそうしたように思えます。
 世の中に、本当に悪い人なんかいるのでしょうか。
 この辛さや苦しみの連鎖はずっとどこまでも際限なく続くのでしょうか。

「悪い人」とは一体なんのことかと考えたくなるけれど、理紗のこの独白は見ていてとても痛かった。理紗自身に与えられる苦しみも、「そうするしかなかった」として享受している部分があるのが、ある意味とても不幸。きっとそれは受け入れてはいけないことだったんじゃないか。終わることのない負の連鎖だけれど、それでもそれは、たとえ家族であろうとぶつけて良いことになどならない。だからといって、ずっと我慢し続ける事もできない。毎日誰かは誰かしらの負の感情を受け、その誰かもきっと他人に負の感情をぶつけたり、きっと何かでその嘆きや悲しみを昇華しているのだろう。度合いの大きさはあれど。もちろん、私自身も。
明確な理由もなく悪として描かれがちなのはやはり父親(特に主人公側)なんだけど、瀬戸口作品にはどうもこの問題が上がる。きっとご本人の家庭環境から来る描写なのかなとは思うが、まあ推察してもしょうがないことだし、そこも主体じゃないですし。

現状が何も解決するわけではないし、この未来はきっと明るくはない。ただ、私の中でこの物語は単純に負だけが描かれているわけではなかったと思うし、どうしようもない現状の中で思考を練って、もがき苦しんでも、必死に幸福を求める姿には、なぜだか生きる活力のようなものを得られたような気もした。それは、例えば頑張ってる人を見て勇気が湧いてくる、とかそういうものとはちょっと違うのだけれど、手に入るか入らないかわからないものでも、自分の心を大切にしようとする姿はやはり胸に響くものがあった。なんとも言語化しにくい。でも、たった一瞬だろうと、彼らは人参という幸福を得たのだと思った。その先がどうなろうと知らん。たった一瞬でも、たとえ触れる程度のものであっても、二人は確かに幸せだったんだろう。それと同時に私もこの物語に救われたのでした。


話変わってシステムについてはまあ普通のADVでした。不便さはあるが年代を考えれば申し分なし。あ、一つだけ、音声が音飛びすることが結構ある割にはバックログ等で再生出来ないことがちょい苦痛だったが、途中から割り切った。UIはオレンジを基調としていておしゃれで素敵。
CG担当はSWAN SONGと同様の川原誠さんで、この方が描く表情はほんっとうにすばらしい。パンツもろ見えで学を見下す詠美パイセンの表情とか、三沢を殺した手で理紗を犯す武の表情とか、特に相手を征服する感じの表情が個性的で良い。挑発的でどこか色気が内包されていてとても好き。あと構図が素晴らしく凝っていて、見下ろしたり見上げたりする場面が最高。ワンショットっていう感じがする。オススメのワンショットは手作りの万華鏡を作った時にそれを覗いた時の理紗と学のCG。それまでの過程を含め、とてつもなくなんとも言えない気持ちになった。またこの絵柄で、この画力で、エロゲじゃなくてもいいので、どこかで出会いたいなあ。

フルアニメOPがこれがまた作画を含め素晴らしい出来。回転系の作画って難しいらしいが、このOPではそこそこ使われていて、かつギリ本編から逸脱しない程度に内容に沿っているところも好き。中身はこのOPのように明るくはないんだが、それでも遠くかけ離れているわけでもなく。学を取り合う理紗と泉、仲良く描かれている詠美と麻里。終えて見れば、ああなるほどと思うアニメでした。ちなみにタイトル画面で待機してると別バージョンのOPも見れて、それがまた良い出来で驚いた。
音楽も今知るとなんとごーかな方たちばかり。このOP、カーニバルの作曲はElements Gardenの上松範康氏で、BGM制作も藤田淳平氏と菊田大介氏とエレガほぼ総動員。女性向けでも男性向けでも色々お世話になってきた人たちに、まさか昔のエロゲまでお世話になろうとは思いませんでしたね……。カーニバルは桑島由一氏の歌詞も含めて、本当に好きな曲で、これをフルで聞きたいがために歌手のNANAさんのアルバムを購入したほど。シナリオライターとしての桑島氏はまだ作品に触れたことはないけれど、作詞家としては大好きです。ちなみに瀬戸口氏にはその才能はないらしい……(キラ☆キラで歌詞を書いたらしいが却下されたのだとか)


以下よりキャラ感想。いやーみんな業背負ってんなあ。背負ってんのか、背負わされてんのか。皆もうちょっと、俺は悪くねえ精神持っておこう。


●木村学(武・マナブ)
いやー開口一番こんな事言うのもあれだけど、ショタ時代超可愛かったっす。もうスチル大興奮でしたし、学も武も可愛かったですねえ……二人まとめてよしよししたい。よしよししてねんねんころりよとか歌いたい。おかげさまで枯渇していた母性がフルバーストでした。瀬戸口作品の主人公はショタ時代がみんな可愛くて毎度大興奮でショタコンとしてはいつもありがとうございます。こんな事言ってると理紗父とかが頭をちらつきそうだが、自分はかわいそうなことが大嫌いなので、理紗の代わりに理紗父の股間の大黒柱をわたくしご自慢の高枝切り鋏で刈り取ってやってこようと思う。あ、なんかよくわかんないが変な汗かいてきた。
ただショタコンとして言いたいのはショタから氷河流の声が流れてきたのだけは頂けなかった……いや、氷河流氏のことは大好きですが、ショタの声帯は違うんですわ、そこんとこもうちょっとこだわってほしかった。いや男性向けエロゲにこんな事言うのもあれだとはわかってはいるんだけど。

こんなに頭が良いのに、お母さんに愛される方法だけは分からなかったんだなあ……と思うと、本当に心が苦しかった。いや、頭が良すぎるのでわかっていたからこそ、多重人格になったのかもしれない。自分に逃げ場がないと見通せてしまったから。
序盤から自分を責めたりする思考が多くて、一体何故なのだろうと思ったら、そういう部分を『学』が引き受けていたんだろう。とても心根が優しい子なのだろうと感じていた。しかし、『武』の存在が明確になり、武の思考が覗ける二章『MONTE-CRISTO』を読んでから、これがすとんと腑に落ちた。もともと本質は学は自己を責める傾向にあったのだろうけれど、やはり心の何処かで「自分の所為ではない」と感じていたのだと。性格上、誰を責めることも出来ず、しかしそれだけでは心が成り立たず、生み出したのが非情に攻撃性の高い武という存在だった。自分を守るためのもうひとりの自己。なので武の残虐性、人に害をなすことへのためらいのなさはよく納得できた。学自身が、他者を責める心を持たない限り、武の凶暴性は増していく。学の外的圧力が増え、心が歪んで行くことに、武もエスカレートしていく。
こんなことを言うと私も学に圧力をかけることになるのかもしれないが、学は母親を責めるべきだった。もう少し細かく言うなら、母親を責める心を受け入れるべきだった。父親は責められるのに、母親は責められないのは、やはり子供にとって母親というのは何にも代えがたい存在なのだろう。特に、男性ならば。母親というのは無条件で愛情を注いでくれる象徴であるけれど、母だろうがなんだろうが、それ以前に一個の人間として存在する。母親というものはなるものだけではなく、させられるものでもあるような気がする。そして学の母親はそうなることが出来なかった姿なんだと思えた。だからといってそんな事は子供には関係がない。母にとってはこの現状に対しての不平不満は最もだけれど、だが行動には必ず責任が伴う。武も言っていたように、避妊しないでセックスした行動ゆえの現状だから、そこに対しての責任は発生する。
だから学は母親を責めて良かった。でも責めたところでどうなるのか、学はわかってしまえる。聡いから。そうして心は分割され、母親を責めることを武に一任させてしまったから、武はそのためらいのなさで最悪の行動に出る。武は自分が一手に母親からの暴力暴言を引き受けていたから、母親に対する感情が薄い。本来繋がっているはずの心が、思考が、分割された瞬間に、ストッパーが存在しなくなり、それはためらいのなさへと変化する。

「お母さんのこと好き?」
「何かへんなことばっかり訊くね」
「ごめん」
「別にいいよ」
「それで、こたえは」
「きまってるじゃん」
「どっちに」
「好きだよ」

これを屈託のない笑顔で答える学の笑顔がつらい……。もしかしたら、辛い現状から逃げるというよりも、お母さんをずっと好きでいたいがために、武という人格を作ったのだろうか。だとしたら今度は母親に『母親』を求められない武も可哀想で、結局みんな可哀想なんだ。辛い。

しかし学がいくら頭が良いと言っても、年相応の子供な部分も残している。万華鏡を作るエピソードなんかはもう、暴力が振るわれるシーンよりも心が痛かった。大人な私は、それが物語にとってどういうアイテムに使われるのか察してしまえる。でも学は、薄々感づいて居ながらも、母親に愛されるために、愛される手段を取らざるを得ない。そして毎度毎度、破壊させられる。そしてそれは心の傷として蓄積されていく。
唯一の救いだったことは、彼に理紗という存在が与えられたことだけれど、理紗も理紗で学の家庭環境とは違った「愛されなさ」がある。この二人が惹かれ合うことは結果として傷口を大きく広げることにしかならなかったが、たとえ一瞬だろうとなんだろうと、彼らは互いを愛することで初めて人に心から愛されたのだろうし、そこで欲しかった幸福を手に入れられたんだろうと思えた。だから私はその二人の幸福をおかずにガツガツ白米をかっ込んでいた。彼らの愛で今日もご飯が美味しいよ。
幼心ながらに心を分割させてしまえるほど、学は母親を愛していたのだろうと思うと、なんとも心が痛い。救いがあってほしかったけれど、無かったからこそ、二人の関係性は光り輝くのだろうと感じた。母親に愛されないことが、理紗との関係性をつなぐ最重要事項だったから。ああ、因果因果。

学にはもう一人人格があったらしく、これが学と武の二人に分けたらしいが、この人格が一番自己を俯瞰的に見れていたんだろう。感情すらコントロールして、周りの人間の状況を理解して、享受しているんだろうなと思った。それはそれで不幸だと思うし、本人も言っていたが結果的にそれは失敗だった。

「僕は母親殺しの罪で一生苦しみつづける。ただ、ちょっとの間だけ、猶予を持つ。今は無理だ。気が狂う。狂ったらラクになっちゃうだろう? それは駄目だよね。ねえ、理紗、ちょっと寝るよ。そして、起きたら、学は忘れてる。武に押しつける。ちょっとの間だけだ。でも、卑怯だと思ったら、学に教えてやってもいい。任せるよ。理紗に任せる」

自分の気持を他人に預けるだなんて卑怯だとは思いませんかね。しかもこんなとてつもなく重たいものを……でもそうせざるを得なかった現状も理解出来るし、この運命の上手く行かなさがとてもリアルで物悲しい。狂ったらラクになっちゃうっていうのが、自分の罪の重さを理解しているようでいて辛い。本当にどうでも良くなってしまったのなら、自分が苦しんできたことの価値もなくなるものなあ……。どの人格も、ちゃんと現状に立ち向かおうとして、でも出来なくて、膝を折ってしまったゆえの結果だと思うとなんともいたたまれない気持ちになった。

そうそう、私が一番萌えたのは学、武、理紗の三角関係。一章のCARNIVALでは学、理紗、泉の三角関係かと思いきや、二章以降に実はこれが学と武が二人して理紗を好きになっていることが明かされて一人大興奮していた。全く別の意識の別人格まで同じ女に惹かれるだなんて最高じゃないか。
ただ理紗が学と武は根幹では同じと判断していたように、私もそう感じていた。もともと抱えていた学の一部が顕著になったのが武なように感じていたので。武は自己分析は苦手なようだけど、側から見ている人間としては武も武で我慢しつつとんでもないフラストレーションを溜めていたようだし。それは母親への感情はもちろん、無抵抗の学への苛立ちもそう。こうなった時点で今度は武の逃げ場がなくなるのだが、そこにこの常人では受け入れがたいような現状を理解して接してくれる女の子が出てきたらそらもう好きになりますわ。武が初めて理紗を犯した時に処女じゃなかった時の反応とか見るとめっちゃ傷ついていてとても可哀想だった。心の中で大号泣しながら言ってそう。裏切られたと泣いてた学より顔グシャグシャにしながら泣いてそう。理紗が処女じゃなくて一番ショックだったのはあんただろうに……。
そんで理紗が自分が処女じゃない理由を淡々と語った後に、それまでとは違う意味でのセックスに入るのがもう萌えまくって祭りだ祭りだワッショイ状態だった。このセックス中の武の心の描写が、今までと違って相手を征服してやるというよりも、理紗という人間を観察しながら行っているし、ただただ行為に集中しているのがわかって、どこまでこの人達は私を萌え転がせば気が済むのだろうと変なことを考えながら見ていた。

もちろんのこと、学も学で理紗に捕らわれている。捕えるつもりはないだろうが、お互いに素晴らしい感情の絡まり具合で大変美味しゅうございました。学が理紗を疑い、泉とのやりとりで理紗への気持ちを自覚して号泣した時とかは学の理紗への気持ちの重さがようやく表に見えて、ある意味とてもホッとした。もっと早く自覚しても良かっただろうに、自分と関わると理紗が不幸になるからと自分の気持ちをコントロールしてきたんだろうなあ。実際はコントロールどころかコントローラーが爆発炎上してることにも気づかずに。
すべてを放棄してもう良いだろうと逃げることを選んで警官と3Pすることになったときに、理紗を人質Aと捉えて、心中でも理紗を犯すことから逃げていた気がする。それだけ理紗が特別だったんだろう。学の不幸なところは、頭が良すぎたり、色々考えてしまうところなのかもしれない。

なんでもかんでも意味・理由・根拠を欲しがる性格の、上手いやめ方を教えて欲しい。

よく分かるわあーーーー!これは考えれば考えるほど加速するばかりで鈍らない。そしてこれらを欲して、たとえ意味理由根拠を手に入れたとしても、自分自身が受け入れられるかどうかというのはまた別の話なんだ。
初めて祭り会場にきた時に、学は学で自分の母への気持ち等を自己分析しようとする。しかし、私が上記で語ったように、学は結局他者を責めることが出来ない。自分がいることで他人が不幸になるのならば自分が悪いという思考に繋がるのは、それこそ不幸だ。学がそう思うように育ってしまった環境だったのが、ただただ不幸。

「母さんがいなくて悲しい」
ためしにつぶやいてみた。あんまりうまく言えていない。

人の気持ちなんて複雑だが意外と単純で、結局学にとってはこれが正解だった。色々考えても、やはり母親が好きだったし、辛くても、悲しくても、母親が居てくれていたほうが良かった。武という存在を作り出してでも、自己を否定してでも、母親を愛していた。すべてが空回って最悪の結果になってしまったのがただただ悲しいが、そういう気持ちに持っていって貰えたことが、不思議と嬉しかった。半端なく苦しくはあるが。
そしてこれを呟いた時に眼の前に居たのが、そこに居るはずのない理紗という……これを運命と言わずしてなんというか。たとえ狂った運命だろうがなんだろうが、最高級のボーイ・ミーツ・ガールだった。


●九条理紗
ぶっちゃけ私は処女じゃなかった!第一章。スワソンのゆかっちってこれの第二章だったんだなあ。理紗と同じフィールドに、ゆかっちも居るような気がする。もちろん種類は違うが、なんというか中身が似ている気がする。ネガティブなのに結構ワガママなところが。いやでもそこが可愛い。

序盤ギャルゲにありがちな(少女漫画でもありがちだが)一匹狼な主人公を構い倒している事に「瀬戸口作品なのに珍しい。桑島氏が原案だからか?」と思っていたが、三章「TRAUMEREI」で理紗の事情や気持ちが明かされて、納得した。思った以上に学を手放せない人だった。そもそも理紗が家庭環境に何の問題もなく、普通に成長しているただの幼馴染だったのなら、学からは距離が離れたような気がする。困った事に、理紗は父親から性的虐待をされることで、己の気持ちや周りの感情を人よりも深く考えるようになった。それまでも本人の気質でそうではあったんだろうけど、この異常な行いをされることで、自分の感情や周りの感情・環境のことを観察し、考察する資質を伸ばして言ったような気がする。そしてそれこそが、学を理解し、事情や感情を察するに至ったのだと思うと……皮肉とはまた違うが、なんとも不幸なめぐり合わせだなと感じた。いや、自分はそういうのが好きだから、興奮しながら見ていたんですけどね。

正直、学の思考よりも理紗の思考のほうが理解し難かった。これはスワソンでもそうで、一見すると理解しにくそうな司の思考よりもゆかっちの思考のほうが普通じゃない気がした。この受け入れがたい現状を受け入れて、正しくないことをしながら、嘘を重ねてまで自分がいやなことを享受している、だから自分が悪い。側から見てる人間からすると「どこが悪いねん」と思うのだが、理紗にとっては間違ったことなのにそれを正せず、自分を責めていれば多少は気持ちは楽になり、現状がだらだらと続いていくことは『悪いこと』なんだろうな。どこが悪いねん。

 もし、誰か絶対の人に全部を話すことが出来て、その誰かが、これは正しい、それは悪い、と決めてくれたら、きっと何もかもがうまくいくのに、と思いました。

理紗も理紗で自分の感情を他人に預けようとしている時点で相当やばい気もするが、それだけ追い詰められていたのだろう。そしてこれを、同じく受け入れがたい環境にいる学に預けようとした。それでなくても、理紗は恋愛感情で学を好きだったのだし、学への気持ちを自覚することで、父の行いを拒絶する気持ちを加速させる。そしてそれは父を受け入れられないのにそれでもまだ受け入れている、という自己嫌悪にただひたすら陥る。こんな事言っちゃあれだが、学はわかりやすいゆがみ方をしていたが、理紗は表面は普通で内面がものすごいゆがみ方をしているから、他人にはそれが一切目に見えてこない。学や武ですらラストまで理紗の感情が見えなかったのだから、相当なものだろう。
学は理紗が大切だから理紗を引き離そうとし、理紗は理紗で学が大切なので(それが自分のためであろうと)学を追いかける。そのうちにまた武が出てきて……というこの関係は、何度もいうが、非情に興奮した。三人で三人を追いかけ回しているなんだか面白い構図。

理紗が自分のことを悪いと思うのも理解出来なくはないのだが、やはり自分は理紗は悪くないと思うし、学と同様、父親を責める心を受け入れて良かったんじゃないか。それを相手のせいにだけすることが出来なかったんだろうが、何かを変えようとするきっかけがなければ何も変わらない。まあ父親の行いを明かせば良い方向へ向かないだろうことが理紗も頭の良さで察せられているところがなんというかもう……性格上の問題でもあるんだろうが。

学が捕まり、いないとわかっていても約束した夏祭りの場所へと向かい、そこに学がいた時の理紗の心情は、ようやく捉えきれなかった理紗の感情が見えたようで居てとても嬉しかった。と同時に色々こみ上げるものがあってめちゃくちゃ目頭が熱くなった。破滅へ向かうしかなくても、やはり互いが互いに切っても切り離せない関係性なのだと思うととても興奮したし、結局巡り巡って彼らが出会えた事が私はとても喜ばしかった。お互いがお互い、自分の気持ちへ向かうことを決めたきっかけになったのだから。

こんな事言うの無粋だと思うが、父親をノーカンにすれば武(学)が初めての人になるし、ハッピーハッピーでええやないすかそれで。駄目か。駄目だよな……じゃあ最後の男を学にすれば良いんだ。駄目か。あかんか。まあどうなろうと、うだうだ考えないで、自分の中で一番大事な人を一番大切にすれば良いんじゃないでしょうか。いや、そういう問題じゃないということもわかってはいるんだが……やはり理紗の苦悩は最後まで理解し難かったなあ。いや、理解出来ないというか、納得できないのほうが近いか。スワソンのゆかっちの感想でも書いたが、それもまた一興。理紗がどう思おうと、自分は、理紗は自己を責めなくても良いと思った。

ちなみに武から変な女※認定されてたのは腹抱えて笑った。男性ライターで変な女に出会うことが出来るとは思わなかった。やっぱり変な女は老若男女世界共通ですべてを救うすごい女だと思った。いや、たしかに学や武を救う手助けをしたすごい女だと思う。
※『変な女』とは――女性向け作品(乙女ゲー、二次創作、少女漫画等)でヒロインによく掛けられる言葉。大抵は変わり者のヒーローに対し根気強く構い倒し、ヒーローが心を開いた際に変な女・変わった女認定される。「誰も近寄らない変わり者の俺にかまうなんて変わった女」である。


●渡会 泉
物語最大のトリガー。ある意味理紗とは真逆の存在。よく似ているのに、多分考え方は真逆なような気がする。理紗いわく「生きるエネルギーに溢れている」。知的好奇心旺盛で疑問に思ったら手首をチョチョイのチョイしちゃうことも出来ちゃう。そんないずみんが聡明な学に惹かれるのもわかるし、自己理解を深めようとして苦悩し続けている理紗と仲良くなるのもよくわかった。
しかし可哀想な事に、学にとって武を含めた本当の自己を理解してくれた理紗以上の存在は、きっとこれからも現れない。それは泉にも当てはまる。だから泉が学を好きになった時点で失恋が確定しているのがとんでもなく辛い。
泉EDもあるにはあるけれど、上澄み液をずっとすすってるような気持ちになった。風味はするが味がしない。吸っても吸ってもタピオカが来ない。いやミルクティーも美味しいけどタピオカも食べたいじゃないっすか。いつまで経っても本体が来ないような不思議な感覚。わかりやすく言えば自分の気持ちから逃げて色んな意味で逃避するのだが、儚い一瞬の夢を見ているようで、ある日突然学の気が狂れておかしくなるような気がするなこれ。

武の存在を否定するようになった学に、理紗への気持ちを自覚させるスイッチが必要で、その役目を担っていたのは恋愛的な意味でとても可哀想だった。それでもなんだかんだ、前に進んでいきそうな人な気がする。でもこういう己を確立した人にもっといい人は居るってなかなか言えないなあ……言えない……。


●志村詠美

「聞いて、私はね、家に、妹がいるの……。今の母親は、父親の二番目の奥さんで、その妹はね、母親の連れ子なの。だから、父親は嫌っていて、母親もそれに逆らえなくて、私が守ってあげないと、だれもあの子のことを愛してあげないの」
「ねえ、誰にも愛されないで育った子供の気持ちって、わかる?
 とても辛いのよ。一生ずっと、辛い思いをしていかなくちゃいけないのよ。妹に、そんなふうにさせたくないの。私は母親にはなれないけれど、でも、気持ちは凄いわかるから、なんとか、愛情をあげたいの。ねえ、わかるでしょ?」

自分の負の感情を学にぶつけていた詠美パイセンが、終盤になって報復とばかりに武に性的暴行を受けるようになってからこれを言うのは本当に卑怯な展開だなと思った。ハンターハンターのヨークシン編で旅団に、仲間を殺されて泣けるのになんでその気持ちをお前らが殺した人たちに分けてやれなかったんだってブチ切れたゴンみたいな気持ちになった。その思いやりの気持ちを学にも分けてほしかったよ。
いや、もちろん詠美は学や理紗の事情も知らないからこんな事が言えるのであって、タイミングや選んだ人が運が悪すぎた。……詠美パイセンに関しては色々と運が悪かったとしか言いようがない。ただ理紗も言っていたように、詠美が受ける報復にこの惨状は流石に可哀想だと思った。そこに詠美の家庭の事情は関係なしに。


●志村麻里

エロ枠その1。詠美と麻里の3Pルートは、麻里も理紗と同じような道進みそうでなんだか切ない気持ちになった。狂い方は違ってきそうな気もするが。ちなみに3Pのときの会話で詠美と麻里の会話を聞きながら学が「アハハ」って笑いながら、心の中で「なにこの会話。馬鹿みたいだなあ」って言ってたのが印象に残った。あの時が一番怖かったっす。振り切った瞬間だなと思った。


●高杉百恵
エロ枠その2。陵辱要素的な扱いで使われるキャラクターなのかなと思ったら相当な淫乱さんでした。私はそんなのには屈しない!からの淫乱っぷりには、そっちでくるのか、と意外だった。逆に学が吐くまで長時間もセックスさせられてたので目が点になったあと大爆笑した。体も心も作中一強い女性なのでは。この人が体力的な意味でもっと頑張れば事件はもっと早く解決していたはずだ。


●九条香織
エロ枠その3。理紗母。なんかもうちょっと……こう、なあ。なんとかならんかったんすかね、とやはり大人勢には物申したい。他人に自分の考えを預けようとしたり託そうとしたりする点は理紗に引き継がれた感じは確かにする。ただもうここまで大人になると自分でなんとかせんかいって気持ちが強くなってしまう。大人だからこそ可哀想な部分ってのもあるとは思うのだが。学が理紗を救ってくれると思いきやこの惨状に対して「自分が間違ってた」というのは、そら理紗さんキレますよ。
この作品って大人陣が総じて父親にも母親にもなりきれなかった人たちばかりで、敢えてそうしたんだろうし、そうしたからこその物語なんだが、それでもほんのちょっとだけでも、彼らが安らぎを感じられる大人勢が居たらどうなったのかなあと思ってしまう。



学も理紗も誰もかれもそうだが、他人に心を預けたりぶつけようとしたりしているが、結局自分の心を扱えるのは自分だけで、そこに誰かに全部預けようとするのは、みんな、疲れてるんだなあ。と思った。救って欲しいと思っていて、見ているこちらも救われて欲しいとは思うのだが、自分の意志や感情を全部預けてまで楽になりたいと思う気持ちって、どれだけ追い詰められているんだと思った。ただそうしたところで自分の苦しみが浄化されるわけではないし、きっと、救われるわけではない。多分それはきっと一瞬ラクになるだけで、何かを乗り越えたり出来るものではない気もするし。じゃあ乗り越えるってなんだよって言われると困るのだが、自分の感情や心は誰かに預けられるものではないし、泉が言っていたように「善悪の判断を決めるのが怖い人は宗教は必要」ってのもわかるが、完全にそちら側に移行できるものでもないように思った。完全にそっちに寄せられるのなら、自分って一体何?って話になるとも思う。そうなると自己の存在理由ってなくならないか、と感じるし。存在しなくても良い、って思えてしまう事が究極系なんだろうけれど。でも皆が皆同じ方向向いたらつまんないなって思ってしまいそうだな。

敢えてSWAN SONGと比べるが、文章量が違うのもあるが、やはり理紗の苦しみが伝わりきらなかったのは、理紗の性的虐待シーンがカットされてるところにある気がした。スワソンはこれがもう怒涛のようにきて逃れられないから、辛さや痛みが本当に刺激される。麻里のはあるのに……と思うと、本当に勿体がない。そこが描かれればもっと苦しめた気がするからだ。理紗がどういった思いで、感情で、父親の行いを受け入れていたのか、興味がある。こう言うとやはり自分は趣味が悪いなと思うのだが、理紗の自己分析と考え方が非情に興味深かったから、なおのことそう感じてしまった。そういう描写がきても私はずっと痛い苦しい辛いしか言わないだろうし感じられないだろうが、そこに共感することで、より自分の考えを深められるような気もするし。あーでもこの考え方っていずみんに近いような気がする。

現状悪化の一途しか辿らないと思うし、ラストシーンでもうひとりの学が言っていたように、一緒にいるのは良いことではないとは思う。ただたとえそれが一瞬だろうと、自分の感情や考えを受け入れて、苦しみながら、たとえ世間に許されなかろうとも、それでよかったんじゃないかと思った。彼らが世間の正しさと戦うか、それに従うかはまた別の話だ。
でもずっと物語を追ってきた一人としては、ちょっとでも、少しでも幸福に向かおうとする彼らを見て、やはり救われたし、単純に、良かったなあと思ったのでした。