全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

15 2013

桜哉 総評

私は工学系のお話が大好き……というお話は某乙女ゲー感想でウザいぐらい語ったかと思うんですが(個人的にはあれでも語りたりないぐらいなのが自分でも手に負えない)。
今回それを基にしている同人ゲーがあると聞き、プレイしてみたところ、予想以上に考えさせられるお話だったために驚き感動しながらコレを打っている状態です。また、自分がずっと乙女ゲーで欲しいと求めていた一つのテーマを真摯に取り上げて下さって、夢が一つ叶い、そして更に膨らんだのは言うまでもないです。

また、いつものように自分の感想は多分にネタバレを含みますが、出来ればネタバレ見ずにプレイするのが良いかな、と思います。ネタバレ見たところで「考えさせられる」ことに変わりはないのがこのゲームの良さだとも思いますが。
また、フリーの15禁版でも本筋のテーマは変わらないですが、シェアの18禁版は、きちんと『18禁』であることに意味をもたせていたのも良かった。

以下より感想です。


桜哉 - (TetraScope様)



簡単にお話を説明しますと、人型のロボットが普通に使われるようになった時代に、主人公の父親が自我と感情を持ったほぼ人間なアンドロイドを開発する、それが桜哉です。桜哉と幼少期から過ごしほぼ家族も同然だった主人公は、幼馴染である榛とのやり取りをきっかけに、少しずつロボットである桜哉との接し方、ロボットと人間…それぞれのことを考えていく……そんなストーリーです。

私が某感想で熱くなったのとはちょっと違うのは、桜哉は自我があり感情がありそれは、プログラムに則ったものではないことです。いや、厳密に言えば人の手が加えられているので、人工知能と言えばそうなのかもしれませんが、物語の描写からするに、桜哉は生物的な部分も持ち合わせているので、その点(自我がある)においては「ほぼ人間と同じ」と考えます。
ただ身体は子を為せるようには作られてはいませんし、食べ物も食べられるけど味覚がありません。あと性欲的な感覚もないそうな。お風呂にも入れるほどのハイテクっぷりには参った参った。

さあて、そんな彼と恋愛してセックスできるのか否か。
人のように振舞い、感情もある、だけど人ではない存在を、人として見る人はどれぐらいいるのでしょうか。……というのは某感想でも語りましたが。
人に寄せて作られているから、人に似てるのは当たり前。
そんな存在を人と判断する人がいるのを自分は否定出来ません。逆に作中で「アンドロイドは人間じゃないのに人に似てて何考えてるのかわからなくて気持ち悪い」と言った感じの台詞を見かけましたが、それもまた否定出来ないというか、よく分かる。
桜哉は『感情があるから人』なのか、『生命体じゃないから人ではない』のか。どちらもそうだと言えるし、そうとも言えないとも言える。他にもいろいろ理由があって、それぞれどう判断するのか。とっても曖昧で難しい存在。この判断基準は人それぞれ違って面白いんじゃないかな、と感じます。
ちなみに自分は最後まで、桜哉をアンドロイドだとしか思えなかった。どんなに人に近くても、人から生まれたわけではありません。また、自分がそういう工学系をかじっていたので、どちらかと言えば榛や主人公の父親(開発側)の考えに近い。

ただ、人でないからといって恋愛できないか、といったらそれもまた否だろうなと。
このゲームをやりながら「人間じゃないことの何が問題なのか?」と思った自分がいて、驚きました。それの判断基準もまた人それぞれだと思います。人間じゃないものとの恋愛もセックスも無理、という人もまた否定出来ないというか。結局やっぱり人間としての重要な機能が備わってない部分もありますし。

で、上記は人間側の考え方で。
このゲームの凄いところは、ちゃんと桜哉側の感情を描いているところかなとも思う。「たまに勘違いしそうになる」と桜哉本人も言っていたぐらいでしたが、人でないのに人を好きになり、相手に応えて欲しいと人のようなことを思いながらも、自分は相手に生物的な欲求を満たしてやることは絶対に出来ない。それは人間的な喜びを与えてやれないのではないかと考える桜哉は切なかった。そう考えるとピノキオって本当に救いのあるお話で、逆に『そういうハッピーエンド』を否定しているようにも思える。
ロボットなのに人みたい、でも人間ではない。桜哉がそこに苦しんでいながらも、感情があるからさらに『どうしようもない』のが見ていて辛かった。

以下より、心に残ったエンディング感想。

●END6「せめてアンドロイドとして」
生命ではないのに死を想起させるというか。主人公も『桜哉を、殺した、くせに』といった表現をしました。一方の榛は「壊す」と言います。ちなみに主人公の父は『殺人はしない』と言って桜哉を壊さなかった。それぞれ桜哉に対してどういう感情を抱き、判断を下しているのかが、これで簡単にわかるところも面白いですね。
きっと主人公を傷つけたという感傷もあったのでしょうが、自分は人間になれない(または愛した人間に人間的な幸せを与えてやれない)という絶望と、自分の性質的に主人公以外に想いを寄せられないと判断してしまったのかな、なんて思いました。もちろん主人公にある意味否定された辛さも。
このエンディングで桜哉を『殺した』のは一体誰なのでしょうか。些細な事で揺れ動き弱さを見せてしまった主人公なのか、主人公の感情も気持ちも知っていたくせに弱さに漬け込んだ榛なのか、主人公の弱さを許せず未来を諦めてしまった桜哉自身なのか。
おそらく自分が居なくなった後、主人公がどうなるのかは桜哉はわかっていたんでしょうが……恋愛的な意味で、『絶対に消えない爪痕を残してやろう』という感じも含まれていたのかなあ。

ちなみに、このエンディングは他ゲーで言うところのバッドエンド的な扱いなんでしょうが、バッドエンドとせず一つのエンディングとしてくれているのは嬉しいというか何というか。主人公が、『自分で選んだ結果』ですからね……。
この、現状どうしようもないエンディングがあるからこそ、他のエンディングが光るのだとも思うし、この作品が考えさせられるものでもあるのだと感じる。

しかしなあ、私は思うんですが、このエンディングって主人公も桜哉も榛に救われてるところ大きいと思う。アンドロイドとは言え人のような存在を壊す作業はいい気はしないだろうし、恨まれるのはわかっているし、それでも最後の願いだとわかっているから断ることも出来ないし。自分が桜哉をアンドロイドと判断する以上、そういう対応を取らざるをえない。ある意味真剣に恋愛勝負に出た榛さんが最後にこんな扱い……まあコレも主人公の無自覚な感情をわかっていてやった罰なのかもしれませんね。
十年来の思いが主人公の勘違いというか無自覚に助けられながらも叶ってセックスにまこぎつけたのに、桜哉に見られると分かった主人公に嫌だ嫌だと絶叫で拒否され、途中までノリノリで和姦だったのに最終的にはまるで強姦でもされたかのように振る舞われ『帰って』とまで叩きつけられた榛さんの心情を考えると、不憫萌えな私の心がアツいです。そういう属性あってごめんよ、榛さん。(と言いながら雑巾のような笑顔を隠せない)

その後の吹っ切れた桜哉とのセックスシーンはよくわからないけど口の中が鉄の味でした。それまで一切そういうのが無かったのに、急にフェラティンコしろと言われた時の全身の毛穴から汗ブワッである意味笑うしか無かった。ただ、名シーンだとも思います。


●END1「家族」
主人公は弱さを持っているけども、悩んでもこうと決めたらこう、とちゃんと言葉に出していたのは見ていて心地が良かったです。その弱さもごく一般的な弱さで、誰にでも持っているもののような気がします。そして、人間でない存在にもちゃんと心を持って接するという判断をしてくれて嬉しかった。(もちろん、そうしないことを悪いことだとは思いませんが……) きっと幼い頃から桜哉という存在が居たからこそ、というのもあるのだと。

思いっきり18禁シーン中に今更ながら疑問に思ったことが一つ。アンドロイドとセックスしても、それは「セックス」っていうのかなあ、と。他エンドでは自慰的な感じのが強いですが。
ちなみに大辞泉さんによると、[名](スル)性的まじわり。肉体のまじわり。交合。交接。 らしいので、立派なセックスだね桜哉さんおめでとうございました。
ただ、18禁らしくセックスにちゃんと意味をもたせたのはお見事、と思いました。

桜哉側からすれば、これから起こるであろう問題も、すべて覚悟して自分を思ってくれたらそりゃあ嬉しいだろうなあ。というか、嬉しいどころじゃないだろうなあともはや何目線かわからない感じで見守っていました。
主人公の心は最初から決まっていたと思いますが、おそらくその未来に伴う問題等々への覚悟を促した榛さんは立派なキューピッドさんです。このエンディングの彼は、相手を支配するやり方ではなく、ちゃんと相手のことを思って榛さんなりに背中を押した形なのが良かった。

ハッピーエンドの後もハッピーだとは限らないけれども、登場人物たち全員の未来が明るいものであればいいなあと願わずに入られない、そんなお話でした。エンディング~後日談まで何度見たか。暖かな気持ちにさせて貰えました。


【総評】
・システム、サウンド

一般的なADVによくある感じですが、不便なところは一つもなかった。
加えて演出等もちゃんと一つ一つ場面に合っていて、指定するのが大変だったろうなと。きちんとこまいところまで作り込んでいます。お話に合わせたデザインに、そのデザインに合わせたシステムで良かったです。
音楽もそれっぽく合わせていて、OPもしっかり作り込んでいてびっくりしました。手抜きそうな所で一つも抜いてないのが凄い。

・グラフィック
年齢より幼めに見えるキャラデザですが、やり終えた今ならこれで良かったと思えるデザインでした。桜哉や榛の感情あまり表に出さない組のふとした表情がすごく好きです。END6の2人のセックス発見した時の桜哉さんの表情はそれまでの話の流れもあり胸を貫通しましたね。
びっくりしたのは、長くないお話の中でちゃんと場面に合わせた背景を出していたところです。それは立ち絵にも言えて、一体何枚の立ち絵とグラフィック描いたのかと。スタッフを見る限りその人数でこれだけしてくれるか、と思うぐらいの手の込みようで感心しました。

・シナリオ
簡素ながらもきちんと要点を抑え、人とロボットとの恋愛を主軸に問題を描いていった流れはとても綺麗でした。そんなに長くない話の中でここまで感情移入させてくれ、登場人物たちのそれぞれの気持ちを考えさせてくれたのはお見事だと思う。
桜哉に感情を持たせるために医学的な要素も少なからず入れてくれたのが、判断に迷う原因の一つでした。ただ、個人的に言えばもう少しロボット工学的なお話も取り入れてくれたらもっと路頭に迷えるシナリオになったかなあと感じました。(もちろん良い意味で) 桜哉はあまりにも人間側過ぎて、ロボット的な要素があまりなかった感じがしたので。
名称としては出て来ませんでしたが、ロボット工学三原則な要素も取り入れてくれていて、逆にそれが重苦しいことに繋がっていたのがまた切なかったというか何というか。

エロシーンにも登場人物らしいテンポと会話で、全体的に読みやすいのになんだか『味』があるやり取りが好きでした。

オススメ攻略順は【 END3~6→2→1 】です。
公式で推奨されているのはEND1を一番最後、ということでしたがこれはほんとそうでした。乙女ゲーにおいてやっぱり最後はハッピーエンドが鉄則だなと感じます。

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話上しょうがないとはいえ、みんな諦めるの早すぎる。特に桜哉。今後どうなるかわかんないんだから、もっと希望を持ってもいいだろうに。むしろ人間には出来ないことが俺には出来る!机ドン!ぐらい豪語してもいいのに、そう出来ないのが桜哉の優しさでもあるんだろうけども。でも、それぞれがそれぞれに対し良い嫉妬でした。

この物語はタイトルにもあるように、『桜哉の物語』なので、榛さんは不憫で仕方がないキャラでした。いい男なのにもったいない。その点10年以上も恋患っちゃってて、他にもいろいろ試したんだけど駄目だったんだろうなあっていうのが分かるのが如何ともし難いというか。ただ、桜哉には主人公が、主人公には桜哉しか居ないだろうと思いたいので(おまけゲームでもそう扱ってくれて嬉しかった)、彼に女性的な意味での明るい未来が待っていますように。

ここからはお下劣超無粋な話。
お父さん桜哉のオシモ作った時どういう感情だったんだろうなあ……。エンディングムービーから察するに、ある程度お父さんは二人の将来が見えてて桜哉にそういう機能を搭載したんだろうけど。とんでもないものを残してくださいましたな、と想像して笑ってた自分はもうどこにも戻れないような気もしました。

余談ですけども。ロボットと人間を描いた作品で、アイ,ロボットという有名な映画があります。ル◯バじゃありません。ロボット三原則をテーマにしながら、ロボットの問題点、それでいてロボットと人間の絆をわかりやすく描いた良い映画だと思いますので是非。このゲームをプレイしながらまず思い出したのはこの映画でした。


この作品でロボット工学ファンがもっと増えてくれたらなと思いながら、今後も乙女ゲーにおいての工学の未来に夢を馳せてゆきたいと思います。
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