全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

22 2013

木野瀬、篠原ルート クリア

なんとも言えない気持ちでプレイしつつも、木野瀬くんの絶望表情は大変美味しゅうございました。


●木野瀬ルート
主人公のことを知っていて、かつ主人公に好意を寄せているということはこれまでのルートでなんとなくわかっては居たんですが、いざ彼の心情をまざまざと見せつけられるとなんというか、はい、絶望表情を美味しく頂いた自分の汚れっぷりが際立っていい感じです。

途中までは本当にキラッキラした青春ルートで、彼は『合体』という言葉にすら顔を赤らめていて、私が失った女子力を持っていました。このような純情少年なためか、彼のルートが一番下ネタが多かったように思う。その純情さゆえ下ネタが際立ってすごいエロいもの見させられているような気持ちに錯覚させてもらった。下ネタ言ってもいいのかな……とこのブログで戸惑っていたあの時を思い出しました。(※初記事のこと)

しかしながら、主人公が好きになった途端それまで両思いだった空気に途端にヒビが入りだし、避けられるような感じになって居たのはまだ付き合っても居ないのに猛烈なヤリ逃げ感があった……のは自分だからだろうと思います。

簡単にネタをバラすと、彼は記憶を失う前の主人公を好きで、ただカガハルのように突発的に劇的にではなく、それまでゆっくりと仲を築いていく。一回目の告白は一目惚れで知り合って間もないから友達でと言われ、受験生だったので一緒に勉強をし、高校に入学後に告白のリベンジに呼び出したツリーの前で主人公は記憶を失ってしまったのでした。彼の喪失感と絶望は、ある意味想像を絶するものだったと思います。
最初こそ大丈夫あんなに仲良かったし俺の事思い出してくれるし!と不安を掻き消すための自信は、記憶を失ってしまった主人公の拒絶の一言で脆くも崩れ去ってしまったのでした。

木野瀬くんはほぼ一貫して記憶を失う前の主人公と、失った後の主人公を区別します。過去の主人公を『あいつ』と本人の目の前で言われ続けたのには、心を抉られ続けた。
ここらへんの判断は、個々人によるものだと思いますが、私は主人公は主人公でしかないと思う。
彼女はごっつ甘党なのは他のルートでも見て取れますが、記憶を失う前も甘党でした。木野瀬くんはそういう主人公と似ている部分を一つ一つみつけては、自分のことは知らないのに同じ顔して同じように振る舞う彼女を見て心抉られていたんでしょうが、記憶を失っても前の主人公と変わらない部分もあるのなら、根本は同じような気もする。
その人がその人だと判断するのは一体なんなのかというのは妖狐×僕SSという漫画及びその他諸々でも語られていますが、自分は『記憶』は一部分だと判断する人間なように思うので、最後まで区別する彼をなんだかなあと思ってしまいました。まあ記憶を失う前の彼女を深く知らないので、なんとも言い様がない部分もあるのですが、彼の苦しみっぷりは彼女の『前後』が似たものだったからこそだと。
それだけ紡いだ日々が大事だった、というのもわかるけれども……主人公の方が先に自分の壁を乗り越え、木野瀬くんには明日が必要だと彼を引っ張るんですよね。おいそれでいいんか木野瀬!とも感じた。ここまである意味頑ななまでに区別していた彼が、どうやって『今も昔も関係ない』と言えたのか。主人公の言葉のやりとりだけでは上手く見えて来ないというか……いや、今も昔も『同じ』とは言っていないので、ある意味区別したままのかも知れません。木野瀬くんがどういう判断をしたのか心の内を見てみたかったなあと……いや見せないからこその演出なのかもしれませんが。

ただ、上手く立ち直って彼女を支えようと立ち回れるほど大人でなく、ある意味作中誰よりも純情で一途だったようにも思う。『あいつ』と区別しておきながら、避けられる位置にも居たのに記憶を失った後もつながりを持ってしまい……。でも避けずに、近く遠い距離で彼女を見守り続け彼女が他の男を好きになっていくのを見守る……プレイにしても相当キツイですよ。レベル高すぎますよ。ほんといいんですか。

彼が、彼の苦しみを自分自身で乗り越えて、立ち向かう姿が見たかったなあと思いつつも、ED後に来るかもしれない困難に、こんどこそ彼女を支えてほしいと思うのであります。これだけ苦しんでいるということは、簡単に決別できる思いでなかった証拠だとも思うので。なんだかんだいいつつも、彼の幸せを願わずには居られない。


●篠原ルート
重い。激重。木野瀬ルートも相当な重圧でしたが、篠原ルートもなかなかの重圧で思わず押しつぶされそうになりました。

彼は先天的な記憶障害を持っており、その日過ごした記憶の一部、酷い時はほぼ全てを失ってしまう。
CZの感想でも少し語りましたが、『ef-a tale of memories.』というアニメ作品(元ネタは男性向けエロゲ)を思い出しました。これに出てくるとあるキャラは、13時間しか記憶を保持出来ません。13時間以内に思い返した出来事だけを記憶し続けられるのは、篠原くんとはちょっと違いますが。このキャラもよくメモを取っていて、ぼんやりとそれを思い出しました。

木野瀬ルートとは対照的に、今度は主人公が『忘れられる痛み』を味わうお話に。図らずともこの攻略順にしたある意味自分のアタリ具合には大分胃が傷めつけられました。
ループではないのに同じことを何度も言われる恐怖と哀しみ、大切な記憶を共有できた筈なのに失われる孤独感。自分を忘れられても『自分が愛した篠原くん』だと言えるのかどうか。実際こう考えると、木野瀬ルートとは状況が違うものの、やはり似たようなものがあるかと思う。

そんな彼にもかつて理解者(友人)が居て、親友と呼べるほどの仲良くなった友達だったのに、篠原くんが事故にあいそこから病気が進行してしまい……『今』を覚えていられるのは後2年だろうと診断される。かつループしている間にも彼の病気はどんどん進行していることが明らかになり、プレイヤーの心ごとゴリゴリ削り取られていくよう。理解者も、そんな状態の篠原くんを受け入れられないと、関係を断ち切ってしまう。でも、親友くんを責められる気もしない……木野瀬ルートを先にやったこともあり、親友くんと木野瀬くんがダブリました。
そしてまた主人公も同じように、忘れられる苦しみを味わう。告白して付き合うことになったのに、何も無かったように行動する篠原くんを見た時はいつもとは別の意味でえずいてましたね、胃が痛い。
それでも苦しみ痛みながらも、篠原くんの想いを、彼が日々綴っていたメモによって知った主人公は彼の側にいる、と立ち上がってくれたのには切ないながらも、仄かに明かりが灯るようでした。きっと主人公が『忘れてしまった』立場でもあるから立ち向かえたのかな、とも感じます。

ようやく皆と居れる場所を見つけ、それでも一定以上のライン踏み込まず踏み込ませず、区切りを付けていた彼ですが、科学部が居心地の良い場所になった時点である意味もうもどれない位置に居たんだろうなあ。自制心の強いであろう(または、強くなってしまった)彼が、孤独に耐え切れず科学部にいることを望んでしまった。いやでも、科学部が科学部で良かったなとなんだかプレイヤーである自分までも救いの場所になっているのがなんだか可笑しかったというか。
メモがなければすぐバレてしまうものの、洞察力の尖すぎる部長以外にはバレていなかったであろうところを見ると、『忘れることに対応するコツ』は身につけていってしまったんだろうなあと。
ある意味過去に囚われていた主人公が、「私が明日へ連れて行く」って言った時はいい意味で呼吸が止まりかけた。

この物語の美しさは、先生ルート同様、最後まで現状は良くならないところにあるのだと思う。でも『基本乙女ゲーではハッピーエンド』と考えている自分でも、立ち向かい想い合う二人にはなんだか胸に来るものがありました。でもなんだかんだやっぱり、彼らの明日が明るいものでありますようにと願わざるをえないのでした。


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希望をチラつかせた後の絶望感半端ない


って言うのは虚淵氏も書かれてましたが。
プレイ途中はホント胃キリでした。物語だとわかっていても辛いのは、きちんと感情移入させてくれるシナリオだったからでしょう、まいった。
そしてどのルートでも部長が現実を受け入れて主人公とキャラたちを後押ししているのが凄い。そしてある意味部長が怖い。隠し事できなさそうで。でもこうやって部長のすごさを感じた後で部長ルートを思い出すと、あいつかわいいやつだったなあ……と明日を飛び越えて明後日の方向を向いてしまうのであります。

お次は最後、さっそうと現れさっそうと去っていく儚げボーイ綿森くんです。
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