全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

11 2014

SWAN SONG 感想

自分は一体何故このゲームをプレイしてしまったのか……そんなことを思いながらも、プレイしてよかったと思う自分が居ます。

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Le.Chocolat. (2008-07-31)

自分がこのゲームをプレイしたきっかけは、同じ瀬戸口シナリオであるキラ☆キラに大変感銘を受けたからである。辛くも立ち向かい前を向けたあのストーリーには今でも心救ってもらえる部分があると思う。
しかしキラ☆キラより過去二作は『希望が無い』とか『何も解決しない』だの言われており(もちろん評価された意味でだと思うけども)、ハッピーエンド好きな自分としては後ずさりする部分が大きかった。ただ、あまりにもご都合主義すぎるハッピーエンドもどうかと思うし、理由がちゃんとしていればハッピーエンドじゃなくとも納得するだろうとは思ったので、機会を得て飛び込んでみました。

このゲームの感想を一言でまとめろ……と言うのは無理な話だと個人的には思うけれども、自分がまず最初に出てくる言葉は『辛かった』そして『苦しかった』。
12月24日に主人公が住む街を襲った大地震。街の景色は突如として変貌し、なんとか建物の形を残していた教会で出会った6人が織りなしそして彼らに与えられる、プレイヤーごとハートフルボッコボコストーリーです。
いつまでたっても救助は来ない事への不安、平穏と秩序をいっぺんに失い煽られる未来への恐怖。無慈悲に手折られた命を見るたびに登場人物たちは狂っていき、善悪の区別がつかなくなる。それぞれ視点を変えそれぞれの内面を追うことで、『悪』だと一概に言えない部分を作っていたことが非常に憎らしかった。もういっその事、何かが悪いのだと決めつけられたほうがずっと楽だと思ったので。
途中でもう自分は一体何が悲しくて何を思って泣いているのかわけが分からなくなった。それでも、彼らの行く末を見守りたいと思って与えられた一周目ルートではもう、涙が止まらなくてメガネと顔の間にティッシュ挟みながらクリックしていた。涙腺も顔面もゲームの中の彼らも皆揃って大崩壊。


以下よりキャラ感想と、ルート感想をまとめたいと思う。

●尼子 司
最初無機質で感情が無いかと思ったこの主人公。というのも、しょっぱなから人の死に際に触れておきながら、悲しみも絶望もほとんど無いように思えた。声のトーンの上下もないですし。普通なら、目の前で倒れている人が居たら動揺するだろうし、悲しみもするだろうにそれもない。だから彼がお姉さんから託されてあろえの手を引っ張って連れて行ったのが最初は不思議でならなかった。でも彼にも感情が無いわけではないし、人並みの感情も持ち合わせていて、悲しいことは悲しいし悔しいことは悔しい、そして何より生に対して、自分自身に対して、戦うという強い意思を持ち合わせていたことがゆっくりと明かされていって、そう思うと彼の行動には一貫性が合ったのかもしれないと思うようになりました。彼は自分を取り繕うことも、装うこともしないんだろう。そんな尼子司が、ゆかっちは眩しく思えたんだろうなと思えた。
ただ、一つ一つの出来事が起こる過程で、彼も感情の出し方や相手の接し方に少しずつ変化が感じられたように思います。そしてそれに比例して声の強弱や感情も乗って行ったのがすごいなと、演者さんにも感服いたしました。
彼が何か行動をしたからといって現状が良くなるわけでもなく、救世主でもないですが、彼の行動や思考はある意味、私にとって辛く苦しいばかりだったこのゲームにとって温かな思考でもありました。物理的な意味で何も活躍出来ないし、そういう意味でヒーローではないので、エンタメ主人公らしくない彼ですが、彼が主人公なところがすごく瀬戸口シナリオらしいなとも感じた。最後にしたゆかっちとのやりとりでは、彼の、ただただ自分を思い相手を思う温かな心を感じられたようですごく嬉しいと同時に、胸の内側がすっと軽くなったような気持ちになった。

「多分、貴女が思ってるほどあなたの全部は言えてないと思いますから。言葉ってそんなに伝わるものじゃないです。第一、もし完全に言えてたとしても、ボクにそのすべてを理解出来てたとは思えない。大丈夫ですよ」
今思えば、ゆかっちに言ったこの台詞は『やっぱ貴女のいうことは理解できないわごめん』という訳しかたも出来るのかもしれないけど、自分は結構この台詞で救われる部分もありました。わかってもらいたいことってもちろんありますが、全部伝わらない、全部理解できないからこそ言葉が合って会話出来るのが面白いのだと、自分は思います。

あと明るい話があまりなかった本作に置いて、二次元ショタコンの自分は彼の幼少期時代のエピソードにもこころ救われました。色んな意味で、私というプレイヤーを救ってくれたことに、本当に感謝。


●佐々木 柚香
自分は当初、この状況下で、彼女が落ち着き払っていたのが非常に疑問だった。大抵だとこういう感じのキャラはどんどん狂っていくようなキャラだと、先入観があったので。段々彼女の心のうちが明かされていくと、本当にすとんと納得出来ました。そして彼女が持っていない心や感情を持っている司に憧れたのもとても納得できた。汚したいと思っていたのにはゾクっと来た。でも、理解できないことではなかった部分もありました。悪い方へ考えていると何故か落ち着くし、装って他人との距離を図ると安心するし。
司に与えたものもあるのに、司に奪われてしまったように思えるのが皮肉だなあ。上手く装えない司とは本当にきれいなぐらい対比していて、なんか危ういカップルだなあと思います。でも、ほんと安心は出来ないのに結局なんだかんだ上手くまとまってそう。大分ぐらっぐら来ているのに、結局二人で上手く綱わたってそうなカップル。
彼女がネガティブにうだうだ語るシーンが結構合ったように思えるけど、どちらかと言えば感情が高ぶっても寝たらだいたい落ち着く自分としては、そんな深く考えんでもええやん、とずっと思っていた。彼女が犬を助けたのも、一周目で涙を流したのも、ずっとうだうだ悩んでいるのも、結局彼女にはきちんと心があって、希望を持ちたいという意思が少なからずあってのことだろうと……。ただ他人よりも顕著にネガティブな考え方をしてしまうだけなのかなと、安易な考えかもしれませんが、自分はそう思いました。
多分自分の思考が司寄りであるからなんだろうけど、彼女の心は理解しきれなかったように思う、でもそう思う彼女の心も一部理解できるからより混乱しているというか。一周目の最後、司が彼女に対して『ピアノが弾ければ彼女を喜ばせられるのに』的なことを思っていたのを知ったら、彼女はどう思ったんだろうなあ。それとも、二度も奪われることになるのだろうか。
ともかく自分は、ゆかっちは司が好きだったんだろうし、司もゆかっちのことが好きだった、それが答えだと。最後に学校に戻ってきた時の司の『柚香』、ゆかっちの『尼子さん』はまさしく感情が乗っていたものだった、と自分は感じました。言葉で形容できない、組み立てられない感情もきっと有るはず、そんなことを思いました。
あとゆかっちに『ぶっちゃけ私は処女じゃなかった!ごめん!』と言われたシーンは、そういう意味で言ったんじゃないとわかっていても『いや知ってた』とラスト間際でダバダバ涙流しながら冷静に心のなかで返してしまった自分が居た。あれで上手く装えたとゆかっちが思っていた、とも思えないけど、演技上手な彼女も、私は結構好きです。とはいえタノムラが『ゆかっちみたいな子にハマるのはヤバイ』と言っていたのに対してやっぱり『私もそう思う』と思った。
彼女のことは上手くは理解できなかったけど、それもまあしょうがないと、自分は思います。別にそれが悪いことでも良いことでもない、他人を上手く理解できない部分もまあ、面白いんじゃないかと。だから自分は、司と彼女は相容れなくても、理解し合えなくてもいいんだと思う。それでも互いが互いを好きなんだろうとも思えたので。


●田能村 慎
瀬戸口さんの心のなかにあまりこういうキャラは居ないのかな?と思ってしまった。彼は最初から最後までブレることのなかったキャラだったように思う。状況を思うと、彼の思考は強すぎて逆に理解できない。街は崩れて、人がゆっくりおかしくなって行きそうになる中で、これだけ正常な思考を持ち続けられるって一体どういう強神経なんだと思った。そしてそれがとても『二次元的』だったように思えた。別にそれが悪いとかそういうわけではないけれども、他があまりにも心情的な意味での描写がリアリティがありすぎた自分にとって、彼の思考はある意味綺麗で、救われた部分もありました。だからこそ、彼のようなキャラを置いたのかもしれませんが。
そして彼が『二次元的』なのは、彼はものすごいヒーローなんですよ。物語の展開は彼の手中に有ると言っても過言ではないぐらい。戦力にもなるし、頭も切れる、リーダーシップもある、自分の気持ちを上手くコントロールできる。複数人で襲いかかられたって二度も立ち向かって追い払うって、世界を変える救世主ではなくてももう立派な主人公じゃないか。司なんてあろえ探しに行ったらいつの間にか敵陣の人質になってたぞ、どういうことだ。
ただ彼も人間だから落ち込むし、悩みもする。ある意味孤独な彼の心を救ってくれたのがひばりんだったってことがもうホント……告白するシーンとか、(私の頭が)ハッピー・ラブラブセックスシーンとか見て、落ち込んでた分テンション爆上げだった自分は『頼むから私からこの二人奪わないで瀬戸口先生!』と思いながらプレイした一周目ルートでずっとげえげえ吐きました。苦労していた分、もうちょっと彼を喜ばせても、もっとセックスさせてあげても良かったんじゃないっすかね、和姦だし。と今思うと相当このゲームにヤラれすぎて居た。
でも彼が本作の主人公でないことは、この作品のテーマに沿わないからでもあるだろうし、彼が副リーダーに誰が見ても危うすぎるクワガタを選んでしまう部分にも現れていると思った。ありゃどうみたってアカンだろう。


●川瀬 雲雀

ひばりんの最初の我儘は、カチンと来ることがなかったとも言えないけど、自分はそれほど気にならなかった。というのは、ひばりんがすぐに『あろえ』という存在を受け入れたからです。彼女のようなキャラは、『あろえ』を面倒臭がるだろうと思った。まあ実際面倒臭がっては居たけど、彼女は彼女なりに真剣にあろえのことを考えて、答えを出して、あろえに接した。そういう描写があったから、単純なキャラではないんだろうなと思えました。最初の彼女の我儘は、すぐ救助が来ると思えていたからのものだろうとも。後半はじっと耐える描写が目立って、彼女の元気さがとても救われると同時に、抉られもした。
特に作中、彼女には何度も泣かされた。一番感情移入しやすくて、思考が近いキャラだったように思う。ひばりんが強がりながらもほっとして段々涙腺緩んでいくところなんかは、一緒になって涙腺ゆるみました。彼女が一周目ルートで酷い目にあってるのは本当に目を背けたかったし涙が止まらなかったし、文字をまっすぐ読めなかった。
それだけにひばりんがタノムラの告白を受け入れるシーンではもう頭の中で鳴り止まぬ鐘の音とホイットニーの絶唱。ボロッボロに崩れる涙腺と降り注ぐ希望の光。痛い展開が多い中であのシーンは私の中でいつまでも光り輝いていました。それだけに一周目ルートで、瀬戸口てめえこの野郎!ってなりましたけども。
あとひばりんとのエロシーンが超楽しかった。エロシーンでさえ私の心の癒やしになってた。事後の、
「ひばりーん」
「なんじゃらほい?」
「いやー、別に。呼んでみただけ」
ってやりとりがすごく好きで。セックス直後になんじゃらほいって返事はなんだよ~って頬めっちゃゆるみました。死んでしまった分、子供たくさん産みたい、と言っていたのにはもう倒れ込みそうだった。
快活で、良い意味で深く考えない彼女の思考は自分と通ずるものがあったし、どんな状況に陥っても前を向いていた彼女が居たからこそ、私はこのゲームを最後まで耐えうることができたのだと思う。私にとってのヒーローは、ひばりんでした。


●鍬形 拓馬

このキャラは本当に難しい。心理描写は巧みすぎて心抉られたし、彼が正常でいよう正常であろうとする姿は決して否定できるものではなかった。自分を上手くコントロール出来ず、きっと心の何処かでこうではないと感じているはずなのに、一度外れてしまった箍はもう二度と戻らないのかと……その姿を見るのは辛くもあった。彼が序盤で否定した行動を、終盤になって彼がとっているという矛盾。それでも彼は自分を肯定したし、正常であろうとした。もちろん、それが本当に正常であったかどうかは別にして。
ゆかっちとはまた違った陰鬱さと自虐。一周目EDでも、結局想い人であるゆかっちにも彼は救われなかったし、最後に司が現れた時の絶望は、彼が思っている以上に半端無かったんではないかな。想い人のフェラチンを見た上に、その彼氏に『よっ』って挨拶されるって、クワガタが狂う要素ありまくり。彼が自分を最後まで信じることが出来なかった弱さと、劣等感は、大抵の人が持ち合わせているものだと思う。だからといって終盤の彼の行動はもちろん肯定なんて出来ませんが。女性だから特に、というのもありますが。
「他人っていうのはどうしてこうなんだろう?ただ居るだけで、普通のことをするだけで、ボクの心を傷つけ脅かすんだ!」
作中彼が言ったこの言葉は、胸に突き刺さった。でも、逆も然りなのかもしれない。自分が可愛くて自分が可哀想な彼を否定し切ることは、やっぱり出来ないので、複雑です。
いつだってイケメン大勝利な世の中、辛いね……と思うと同時に一方乙女ゲーでイケメン野郎どもをひーひー言わせる自分がクワガタに共感してしまって申し訳ないような、よくわからん気持ちにもなった。


●八坂 あろえ
登場シーンがあまりにも神秘的すぎて、これはなんか不思議な力を持った人とかそういう話なのか?と思ってしまった過去がもはや懐かしい。お姉さんの、あろえを思いつつも、殺してくださいというシーンは、序盤で大体のプレイヤーを襲うボディブロー決められるシーンだなと思う、自分もぼっこりやられた。お姉さんの、段々ままならなくなっていく声が恐ろしくもあった。今思うと、彼女はあろえを連れて行きたかったんじゃないだろうか。前日譚を読んで、お姉さんもお姉さんで孤独なんだと感じた。
あろえは何が起こっても『あろえ』で、変わらない。何を感じているとか何を考えているとかそういう部分は全くわからない。でもただ『あろえ』は最初から最後まで『あろえ』で居続けた。あろえを除いた5人にとって、彼らの指標であったのではないかな、と自分は感じました。変わらないあろえには安心したし、彼女が修復した像はやるせなさも感じたし、理由はわからないけど救われた気になりました。『壊れてしまったものを元に戻す』ただそれだけの行動に感動したのかもしれません。


●小池 希美
彼女がクワガタだけを信頼しているというシーンを見て、もしかしたらクワガタを救ってくれる救世主になるかもと少しだけ思ったけど、不安定すぎる彼女をみて、あっこれはダメなパターンだと気づいた。彼女に引っ張られるだろうと思ったら、ものの見事に引っ張られていくクワガタを嘲笑うなんてことはもちろん出来るはずもなく。
彼女も彼女で報われないし辛いことが多すぎたから、なんとも……なんとも言えないことばかりですねこのゲーム。


●乃木 妙子

突拍子もなく子種ください!と言われた時のすぐに脳内で最強○×計画が流れた、あながち歌詞から外れても居ないような気がする。
彼女については、別に惹かれるところもなく……彼女はゆかっちとは違う意味で自分を装って人を動かしてきましたが、まあそういう才能もあったんだろう。勧誘中のシーンは何言ってんだこいつと、本当にわけわかめだった。
兄妹オチについては、あっそうなの程度にしか思わなかった、司が捕らわれていた時に乱暴なことされなかったのは、この理由があったからなんだな、としか。ただ二周目EDで彼女が嬉しそうにしているのはなんだか許せなかったなあ。彼女が指示していなかったとはいえ、彼女だけのせいではないとはいえ、人が巻き込まれたのだと思うと、やはり納得出来ない部分がある。
ただこの二周目EDの『在り方』については色々思う部分があるので、それはそれで良かったとも思えている自分も居ます。


『一周目ED』
事前に『何も解決しない』ことは知っていたので、ある程度構えては居たものの、このEDのオチを見た時は『こんなことってあるか、あまりにも』と思った。ずっと彼らの気持ちを追っていって、いろんなことがあって、ぎりぎりで乗り越えたりして、でも最終的に手元には何も残らなかったのに、オチを見た時の司の意思には心を温められた。同時に同じ分だけ、『ようやく辛く苦しいのから開放された』とも思った。クワガタが狂っていくシーンは本当に嫌悪感しか感じなかったし、許せもしなかったし、同情も出来なくなってしまったし、そしてそんな自分を否定する自分もいてもうメチャクチャで自分の気持ちがまとまらなかった。今もまとまってませんが……。
タノムラ離脱辺りからなんでもないシーンでもずっと涙が止まらなくなって、最後に選びたくもない選択肢を選び続ける苦悩にを抱かせられているのに、選んだ瞬間ピンポーンとか効果音流れて、なんだこれふざけんな!と思ったと同時に、うまくしてやられた、とも思った。でもその選択肢、選んだのも結局自分なんだと、選ばないことも出来たのに。いやしかしピンポーンってなんだよ、全く。

私が望んだハッピーエンドではなかったけど、何も変わらなくて、平行線なだけのこのEDがあるからこそこの作品が心に残るもので合ったのだとも思う。自分はこのEDを、バッドエンドだとも、ハッピーエンドだとも思いません。ただただなんとなく、前を向いて行きたい、落ち込めないなあとだけ感じました。


『二周目 ED』
自分はこのエンディングがあって本当に救われました。と同時に、やっぱりゲームというエンタメ作品である以上、心持ちが少しでもよく終わりたいと思っていた。ほぼ大団円だけども、大団円にするためにご都合主義も多く、物語の美しさは一周目には大分劣る。だけども、ある程度の『ハッピーエンド』はやっぱり必要なのでは無いかな、と。キラ☆キラでも、主人公がとある出来事によって堕ちてしまいそこから這い上がるルートと、この二周目のような完全にはすっきりしないけども大方ハッピーのような扱いのルートがあったけども、どちらも合ってこそエンタメだなと思う。あと、この作品は絶望を描ききるというテーマでもなかったように感じたので。
ラストの結局平行線な司とゆかっちのやりとりは可笑しかったし、自分でもよくわからないけど和んだ。この二人ってこうやってずっとバトルしてるんだろうなあ、ゆかっちはもう特に意地にでもなってるんじゃないかってぐらい。ただ、彼女のネガティブな思考『雪が溶けたら隠れていたものが全部出てきてしまう』は自分も想像してしまっていたので、やはり彼女に共感する部分もあるんだろうと思う。
彼女が意地になっても司とは相容れないだろうし、そんな二人がなんだかんだくっついているところを見て和んだのかもしれない。


【総評】
・システム

デザイン性はあるし本作にもマッチしているけど、わかりづらい。設定の文字が読みづらい部分はありますが、説明も出てくるので問題無いといえば無いです。一度設定してしまえば、そんなにころころ変えることもないでしょうし。
立ち絵という演出を使わないことで、独特の世界観をあらわしていたのは面白かったし、いい感じに恐怖を煽られたりもしました。BGMが少なく、環境音が多いような気がしましたが、雰囲気にはあっていたので自分は気になりませんでした。吹雪の時の効果音が自分の聞き慣れた音なのと、そしてそれにあった時期だったので、状況が容易に想像できて寒かった。しかしアレだけ吹雪が続くと積雪量半端無いのにどうやって除雪してたのか……。
あとは、ものすごく多いこの文章量を一気に表示させられること。場合によっては300文字ぐらいドドンと出る上、読みづらくて結構疲労感溜まりました。心理描写が多いので難しい表現とかは無いのですが、レイアウトが見づらい部分が多々あったのが残念だった。

・シナリオ
希望を抱かせないシナリオのように感じる部分もあったけど、終えた後思ったのは『やっぱりそうではない』ということ。暗い作品ではあるけど、明るさが無いわけでもないし、希望が無いわけでも無いと自分は感じました。ただただ、後半にかけてはど丁寧に人がゆっくり狂っていく様を描いていくので、本当に辛く苦しく気が滅入る。明るい話が見たい、希望を抱きたい、とある意味主人公たちと一緒に戦っていたような気になっていました。
実際現実に起こったらこのような惨事になりうるのか?と思えば、自分はこうなる確率のが少ないんじゃないかなあと。無秩序になって犯罪は起こるだろうけど、ここまで行くことは無いような気がする。私の希望的観測かも知れませんが。リアリティがあるのは、人の心が環境や状況の変化によってゆっくりと確実に変化していく様。この感情は現実に持ちうるものなのではないのかな、とも思えたので、それが自分は怖かったです。落ちて行く気持ちも理解できて、否定出来ない自分が恐ろしくもある。現状に加えて、その感情に共感出来る部分もあるからこそ、辛く苦しかったのかも知れません。
また、ゆかっちの言葉を借りるなら、『何も悪くない彼ら』が『つらい目に遭う』のが辛かった。私はぬくぬくと暖かい部屋でこのゲームをプレイして、そんな自分が彼らに感情移入するのもなんだか辛かった。辛いことばかりだ。

このような惨事になることはないと思うが、作中何度も判断に迷わされる現実的な部分がある。例えば、明らかに『死刑』になる犯罪を犯した人たちを『誰が裁くのか』。法も秩序も無い世界で、ついこないだまで普通に暮らしていた人たちが一線を越えて彼らを裁くのが果たして可なのか否なのか。この判断は、プレイした人たちによって違うのではないかなあとプレイしていて思った。これを面白いと評価するのもどうかなと思うが、プレイヤーに疑問を投げかけ考えさせられる展開だったのはすごいと感じました。
そして彼らが守るためと称した『殺人』は可なのか否なのか。自分なりの答えはあるものの、本当に難しく、上記で語った『辛い、苦しい』とは別の意味で苦しかった。

良い作品ですから是非、と笑顔でオススメは出来ませんが、確実に何かを考えさせられ、何かを残してくれるであろうそんなシナリオだったと思います。プレイしなければ良かったと思うこともあったけど、結果としてプレイしてよかったと思えた自分が居ます。何より、彼らに会えてよかった。



結局この作品で自分が何を与えられたのかと問われたら、よくわかんねっす、と答えるしか無いのがいかんともしがたいけど、キャラクター一人ひとりの行動や思いに対し、そしてこのストーリーに対し、自分は自分なりの感想と意思を持てたことが良かったかな、と自分でも何がなんだかもうよくわからない。
自分は意図してこの作品を、『この時期』にやったわけではないのですが、プレイしている途中に日付が近づいてきていることに気づき、何か意味があったんだろうかとまたそこで考えてしまった。この日に感想を書き終えるあたり、何かあったんだろうと思う。

あと、キラ☆キラでもそうだったけど、父親との確執がすごいですね。色々考えてしまうのは、この方のシナリオはこの方自身を色濃くあらわしているような気がしてならないからです。まあ、良だろうがクソだろうが、シナリオというのはライター自身も表現されるから面白い、という部分もあるのですが。



途中重たすぎて、思考を切り替えたくて、ツイッターにて銃騎士体験版そっち的な意味でヤバイ!と流れてきたのにホイホイ引っかかり、その軽量感にむしろ水を得た魚のように活き活きとしたので別の意味で銃騎士さんには救われました。山も谷もない砂漠を歩き続けて少しも笑えないギャグにズブズブハマっていく感じとか、超たまらなかった。ただ終えた後、どっちも楽しめる自分の身体によくわからぬ不安を抱えてしまった。


次はまた乙女ゲーの優しい世界へ戻ろうと思います。このぐらい心理描写がガッツリした乙女ゲーをやってみたいのですが、乙女ゲーは乙女ゲーなりの良さもあるので難しい。
いやしかし、やっぱりこれを乙女ゲーでやられたら自分は気を失うだろうと思うので、少しずつ近づいてきて欲しいかもしれない。