全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

19 2015

密原ルート 感想

彼のお噂はかねがね聞き及んでは居たものの、実際それを目の当たりにした時の私の興奮具合はすごかった。彼の興奮具合は更にすごかったけど。

というわけで発売日に買ったのに大分テンポ遅れてスイクラしてます。実は発売当初序盤ちょっとだけプレイしてたんですが、当時のテンションがスイクラとどうもあわなくてそのまま別のゲームプレイしてしまい。今回始めるにあたってちょっと不安だったんですが、その不安は思いっきり薙ぎ払われた。
毎度のことこのブログはネタバレを大いにかましてますが、彼の『変化』はネタバレ無しで行ったほうが面白いと思うのでご注意です。


とはいえ、序盤はちょっと辛かった。かなり怪しいフォルムのスイクラさんにも登場人物たちは特に疑問を抱かないし、山奥の城のお茶会を特別怪しいとも思っていないし、死神と少女みたいな感じだろうか……と思っていたら中盤になってから密原氏の豹変っぷりに椅子ごとヒックリ返りそうになった。画面に釘付けになりましたよ、こいつ大丈夫かと……いや全然大丈夫じゃなかったんですけども。
ただ、これほど序盤と中盤で評価が180度変わったキャラは私の乙女ゲーム史でもなかなか居ないです。序盤は口を開けば、「俺と付き合おう?」「好きになってみない?オレのこと。俺も君のこと好きになってみたい(要約)」だの歯の浮くような台詞を腐るほど吐いてたけど、実際彼に言葉のバリエーションは少なく、結局は『付き合いたい』としか言ってないのが面白い、君は本当にモテ男なのか(自称だけど)。
付き合うのは主人公の欲を深めてスイクラにして屋敷から出られるようにする君の願いを手伝うためだから、と相手を理由にした時点で私の信用度は地へと直下したので今更好感度が下がるとかも無かったんですが、序盤で苦しかったのは密原のしつこさ。口を開けば付き合おう付き合おう言ってるが、主人公は出会ったばっかりでもちろんその気は無いので渋った態度を取られてるのに、出会い頭には「俺結構本気なんだけど」「やっぱり付き合わない?」

あれ、主人公さっきも返答濁したよね?わからなかったのかな?
とまたキーボードに静かな怒りを叩きつけそうになったけど、そもそも主人公が彼に微塵も『男』を感じていないし、異性としてよりもその辺の置物に対応するような感じで低テンションで対応するもんだから、一周回ってなんだか哀れで可哀想にもなった。何回告白したか数えていれば良かったと若干後悔するぐらいこの辺りの密原告白攻撃は自分の精神力をゴリゴリ減らしました。
主人公もなんだかんだ自分に協力してくれると言ってくれてる密原に感謝の(同)情で、結局付き合うも主人公はやっぱり一切彼に男を感じていないのが更に哀れであった。例えば密原に「彼女に見つめられる彼氏の気持ちってどんなだと思う?」と俺男だよマジ意識して!とも意訳出来る台詞に返した主人公の答えが「男じゃないから分からない」で一頻り笑ったあとにこれを言われた彼を思って切なくなった……こんな感情移入の仕方もあるのかと自分でもちょっと発見だった。

主人公も努力して好きになろうとするも(努力してる時点で色々悲しくなった)、結局それが密原にバレて一ミリたりとも主人公の心が揺り動かされていないのを知った時、彼はあひゃあひゃ大声で笑い絶叫しながらランプの柱にガンガン頭を打ち付けた……そっちゲーをしてる時の自分を見ているようだった。
その美麗な顔で女の子を何人も落としてきたのに、主人公は落とせずそれどころか微塵もときめきすら感じていなかったことを知り密原氏のプライドはズッタズタのボッロボロで今までかぶってきた優しい男の子の仮面を床に叩きつけてガンガン踏み潰し粉々にするが如く汚い言葉で本音吐きまくる彼を見て、私と主人公は何故か胸をときめかせたのであった……。
ここらへんの一連の台詞は全部脳髄に刻みこみたいほど好き。その中でも、主人公へ付き合って付き合ってと煩かった自分を「発情期の犬」と比喩したのは最高だった。
このシーンをみて前述したとおり椅子ごとひっくり返りそうになるほど笑った私も、一人相撲のこったのこったしていた彼の哀れな姿を笑っているのを否定出来ないけど、何より嘘だとも本当だとも思えなかった彼の空を切る序盤の言葉を浴びながら、このシーンの絶叫だけは『まさしく本音』だと理解出来るのが心地よくもあったのです。上記の台詞でもわかるけど、上っ面なだけの台詞を吐くことを心から良しとしているわけではないし、女の子とそういう関係を築いて来て満たされたわけでもないのがそれとなく感じられるのがとても心地よい。言葉は汚いし、密原がやってきたことはそらもう最低だな、とは思うけど、それだけ本音であるというか、触ったら火傷するぐらいの源泉みたいな魂の叫びのようにも思えるのです。幼少期に顔だけ良くて何も出来なくて周りから色々やられて歪んだだけで、性根まで、骨の髄まで腐っているわけではない。ていうか真性ならもっと見てきたんで、仮性の彼はまだ可愛いもんですよ。誰かとは言わないけど。
そもそも、ファーストキスもセカンドキスもこんなクソ野郎に奪われて、みたいな自嘲する台詞があるんですが、これを聞いた時『乙女だなあ』なんて思った。そういう乙女的な考え方を心の奥底で大切にしている密原という男の脳内での清廉さと汚い部分のぐちゃぐちゃっぷりがむしろとても美しいと思えた。

というわけで、序盤の胡散臭い密原から、外面ベールを脱いで揉みくちゃにしてゴミ箱にぶっこんだ心に一糸まとわぬ本音密原が私はとても好き。そして本音で語ってから密原に惹かれていく主人公も良かった。上辺だけの彼にはなにも感じず、本音で攻防しあって、その中でも密原の良さを見つけて惹かれていく様は素敵だった。主人公はなんだかんだ意思はあったとはいえ蜜原の好意を裏切ってしまったことを悔やんでいたけど、自分としてはきちんと人を見ているんだなと思えて主人公も同時に好きになれた。
密原はしょうもないヤリチンプライドをズッタズタに切りつけられて外面崩壊して本音を絶叫した時点で、主人公に攻略されたも同然ですし。お互い歪な形で惹かれ合うのが、このゲームのコンセプトにもすごくマッチしていて楽しかった。
欲を言うならもうちょっと惹かれ合う描写を色濃くして欲しかったけど、密原絶叫のインパクトが強すぎてなんだかんだそれも流してしまいそうになる。密原自身の過去も、この捻じれに捻じれまくった性格を形成したのにすとんと理解できて、それに主人公の弟への思いや関係性と絡めたのが本当に見事に綺麗だった。

以下よりそれぞれのED感想。

●深愛エンド
蜜原のキャラ的に、本気の恋を知るからこそ彼の物語は美しくなるのであるなあと思った。歪愛エンドを見た時とはまた違った意味で思った。
スイクラになっていって己の欲を抑えきれずに、密原を思いながら苦しみ、傾いでしまう主人公を、密原らしい言葉で立て直すのがとても心地良かった。あと中盤ちょっとイチャコラがしすぎて胸焼けしてしまい、あの柱にガンガン頭打ち付けてた密原が好きだった身としては、終盤で飾らない汚い言葉でビシバシやられるのが面白かったし楽しかったと言うか。
バッドエンドの密原を思って自身を犠牲にする主人公も美しかったし、グッドエンドの劇的な二人の関係を見届けられたすっきり感も好き。ただ高校生の年代で親元とは言え一緒に暮らすのは反対なのであまり調子に乗らないように。
ED後には女性関係清算するといったけど、彼が弄んできた子たちの中で密原に本気な子が一人ぐらい居て、清算するときに思い切り苦しめばいい、とも思えた。そうなった時に、相手を大切にするという誠実さを密原は学ぶのかなと思うと、そこまで見てみたかった気もする。でも性格の良くなった彼は正直想像できない、いい意味でも悪い意味でも。

●歪愛エンド
あってもいいけど、無くてもいい……そんな感じの蛇足だなと思った。前述したとおり、密原のような相手を欺きまくって腹で笑っていた人間が、相手を信じ切るからこそ物語は美しくなるのだと思うし、味が出てくるのだと感じたので。密原が歪んでいく展開も、なんだか納得しきれなかったというか……ばっこばこに凹ませて貰ったことに衝撃を受けて主人公を好きになったのに、自分の言うことだけを聞く主人公が密原の好きになった主人公なのかと思うと、それは違うと。それが密原の弱さだと言われればそれまでなのかもしれないが、それだと深愛で欲望に落ちそうになった主人公にブチ切れた密原への説明がつかなくなるような気がする。通常ならああなる密原が、どうして主人公を陥れるような病み方をしたかが理解できなかった。
あと密原はもともと歪んでいる人間で、別ベクトルで歪んでいくのが自分の中で納得行かなかったのだと思う。薄暗い部屋で二人きりで嫉妬に塗れるとか、そういう病み方は密原には合わない、そう感じたのだと。
ただ主人公が欲望に負ける描写は、スイクラ効果もあってとても納得できた。バッドでは、それを利用して主人公ぼろっかすにしてやったわ!(意訳)と豪語する密原は、ランプの柱に頭を打ち付けていた以上に滑稽な姿だったなあ……あれが密原の本音だとは自分は思えません。主人公が落ちた姿を見て、やっぱり自分が心から求めていたものが叶わなかったのだと知って、元のクソ野郎に戻ろうとした反動だったのだと感じて、悲しくもあった。


性的関係を匂わすことがあると聞いたので、一歩手前なところまでいってハラハラドキドキしたのですが、結局ヤリチンキャラの密原でそういう描写は無かったので、お前ヤリチンのクセに出来る男だな!みたいな変なところで密原への評価が高くなってるのも否めない。
でも主人公へのアプローチの仕方が胡散臭いゴリ押しの『付き合おう?』の連続だったのは、ほんとにモテ男か?と問いたくなるような暖簾に腕押しっぷりだった。自称するなら誰にでも出来るからな、と捉え方も変わった。どう見ても主人公はときめいてる反応を見せないのに、『いままでこれで落ちない女は居なかった』とかぐや姫の帝かと思うほどの気味の悪さと、変化球のなさ。押して駄目なら引いてみるぐらいの基本ぐらいしてみればいいのに、ずっと押せ押せだったのは見ているこちらまでとても萎えた。相手は選球眼良すぎてストライクゾーンに入らなければ振りもしない主人公だったので。
視点を変えて、きっとそんなゴリ押しなやり取りでも落ちるようなうっすい関係しか築いてこなかったんだと思うととても納得した。ただな、密原……女の子は君が思っているよりもずっとずっと細かいところを見ているよ……きっと君が落とした女の子も『こいつパターン決まってるな』って思ってる子いたと思うよ……そう思うと密原が哀れ悲しい。

他人に認められたくて、努力した頑張りは凄いとは思う。そこから変えたい変わりたいと思って、自分を変えることってなかなか勇気のいることだと思うので……ただそうせざるを得なかった状況だったのだとも考えられるけども。
他人に認められたい、愛されたいという欲求は理解できるものだったし、それをありとあらゆる方向から、家族でさえ否定されたのは歪むのも分かる気がする。家族が駄目なら友人や周りの人間に求めても、外側すら見てくれないのなら絶望するのも。ただそこから自分を磨くのとはまた別の、自分を理解してもらうための努力は出来なかったんだな、と思ったけど、まず外見から褒められた彼を思えばそういう努力をするという思考にならなかったのも納得できた。外面を整えれば認めてくれる、だからこういう捻くれた歪み方をしたんだと。

そしてなにより、上っ面密原も本音密原も見事に演じきった豊永利行氏の演技力無くしては、密原誠丞というキャラは完成しなかったのではないかと思う。一歩間違えば密原というキャラを見失ってしまいそうなほどの振り幅のあるキャラだったけど、芯を捉えてそれを軸にどちらの密原も密原だと思える豊永氏の演技力に、心から脱帽です。密原を演じてくださってありがとう。そしてキャスティングしたTAKUYOにも拍手。


次は密原と平行線なケンカをしまくっていた久瀬くんに行きます。っていうかふたりとも平行線だってわかってるはずなのに(久瀬はともかく密原はわかっていたと思う)それでも久瀬くんとバトルしまくってて、それが出会う度にやるもんだから、君らいい加減学習して……と思うことも少なくなかった。主人公ほっといてヒートアップしまくっていた時は、主人公にそのままそっとその場を離れてみて欲しかった。
関連記事
スポンサーサイト