全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

09 2015

SWEETCROWN総評 +古橋、真相ルート 感想

大方の予想は裏切らなかったけど、そこで織りなされる展開と心理描写には大いに萌え転がった。色々考え過ぎて微熱が出た。集中しすぎて手の握力の加減を間違い、Vitaを顔面に落としつつプレイしたのも良い思い出です。
これはとても個人の趣向だけど、私が乙女ゲーでぜひともやっていただきたかった展開を真相ルートでやってもらえたので、そういう意味でも大満足のゲームでした。

古橋、真相ルートはネタバレオンパレードだったので、先に総評から書きたいと思う。ただ、個人的には根幹の設定のバレや真相がバレたからと言ってこの物語の魅力が半減するわけではないと思ったのを書き添えておきたい。この作品の魅力は、キャラたちがどういう状況に置かれて、どういうふうに苦しんで、主人公とどうやってやり取りしていくかだと思うので。


【総評】
・システム、音楽

いつものTAKUYOシステムでADVとしての機能はとても使いやすかった。セーブロードQSQLもさくさく。演出もさくさく。ただスチルの差分は別枠ではなく一つにまとめて欲しかった。他で不便と思ったことは無かったので、ADVゲーとしての機能は十分だったように思います。
ただ好感度調整の難易度を高くした為か、選択肢が何度も出てくるんだけど、大体AとBのどちらの行動をとるかの選択肢で、Aを選んでも結局なんだかんだBの行動をとることがままあって、そこはちょっと納得がいかなかった。これは私がADVはゲームだと思っていない部分が強いからだと思うが、ADVならADVで、選択肢に好感度判別以上の要素を付けて欲しかったかなと。作り手側のことを考えればそれもまた難しいことは、なんとなくは察せられるのですが……。
音楽はこれまた文句無しで良かったです。OPとED、ムービーも作風にあっててすごく良かった。特にOPは飛ばさずに何度も聞きました。『帰り道のことは忘れてしまいなさい』という歌詞が特に好き。終えた後だと意味がわかっていい具合にムナクソになるのがすごく良い。

・グラフィック
一枚絵や立ち絵だと美しいのに、スチルだと途端に別人になっちゃう事が結構あって残念だった。個人的にはヒロセ先生のキャラデザはすごく好きなんですが……。あと横顔スチルが結構多い上に、その横顔が特別秀でているわけではないというのが見ていて心苦しかったと言うか。立ち絵とスチルで年齢が違ってる(スチルが幼く見える)ように見えたこともあったので、そこらへんの整合性は整えて欲しかったというのが正直な感想です。

・シナリオ
よくぞここまでムナクソ悪い構成にしてくれたな、と拍手を送りたい。劣等感に始まり、人が誰しも持ちえるような負の感情をえぐりだすが如くピックアップして、そこで本筋にもちゃんと絡めていたのはお見事でした。自分はそういう心えぐられる展開が大好きなので、見ていて一緒にのたうち回れたのも良かった。こういうのは心理描写が巧みでないと一気に感情移入できなくなりそうなものだけど、ちゃんとキャラに『どういう過去があって』『どう思って』『その結果どういう状態に至ったか』がきちんと描かれており、そこに物語の謎も上手く織り交ぜられていてお見事。
あと一見すると『こいつらとどういう恋愛するのか?というかそもそも恋愛できるのか?』と思えるほどの個性の強いキャラクター達で、一部キャラには疎まれることからスタートするけども、大体のルートではその恋愛描写も違和感なくまとめ上げたのも良かった。欲を言うならもっと惹かれる描写が丁寧であれば、『乙女ゲー』としても満足できたのかなと思う。ただこの物語の軸はそこではないとも感じたので、少々納得できなくても本筋の流れに重点をおけばそれなりではあった。乙女ゲーとして重点的に楽しみたいのなら少しむずかしい気もがしなくもない。
またプレイヤーが一番に感情移入する側の主人公にもかなりの難有りなので、そこも壁になるかもしれない。最初の方は自己犠牲精神が強い割には自尊心も強く中々己のことを語らない、上辺だけで取り繕おうとするので、序盤は苦しい部分も強い。ただ後半に己を開いた彼女は素直に応援したかったし、個性的なキャラに負けじと面白い強い返しをしていたのはかっこ良くもあった。立ち向かう強さを持っていないわけでもないので、プレイヤーの見守る力はそこそこ必要かも知れない。

描写不足や説明不足な部分があることは否定出来ないけども、それでも物語や展開に大きな破綻があるわけではなく、個別も全体も構成はとてもしっかりしていて、そのキャラがどうしてそういう行動をしたか、の流れはよく納得できる。
ただ、倫理上地雷とも言える設定も盛り込まれていて人によるとその時点で拒否反応が出るだろうけども(もちろんそれが悪いとは思わない)、それを軽く扱うわけではなく、そこに至るまでの思考や苦悩もちゃんと描いていた。これは個々人の嗜好や許容範囲によるところが大きいので、暗い設定が好きな人は概ね楽しめる傾向にあるだろうし、そうでない方は辛いかもしれない。私個人がどう思ったかは真相ルートで詳しく語るけども、私がずっと乙女ゲーに求めていた展開だったのでとても嬉しかったし大いに萌えました。
どちらにせよ、『人を選ぶゲーム』であることは確かだけども、そういう設定を組んだところから逃げずに立ち向かって、真摯に取り組んだんだと分かるシナリオだったので、私はスイートクラウンという作品を好きになれたし、そういう挑戦をしたTAKUYOという会社を更に好きになりました。

あとシナリオライターが3人いて、設定共有がちゃんとなされているのか、ルートによって出来が違うとかキャラが違うとかもなく、ちゃんとまとめて空気感の同じ一つの作品に仕上がっていたのはとても良かった。真相EDムービーで、きちんとどのシナリオライターがどのルートを担当したかを書かれていたのも好印象でした。全部が全部素晴らしいルートだった、とは流石に言えないけど、どのライターが担当したルートも心に残るものがあったし、猛烈に惹かれるものがあったので、作品を作ってくれてありがたいという気持ちです。

オススメ攻略順は公式推奨攻略順である【密原→久瀬→日之世→古橋→真相】
密原→久瀬からの流れは、久瀬からやると密原に対しての印象が変わるのと久瀬の後半の展開で密原への感情移入がしにくくなってしまうので、この攻略順は守ったほうが良いかと。日之世→古橋は別にお好きな順で良いけどネタバレ的な流れを守りたいならこの流れを守ったほうがすっきりわかりやすく感情移入出来ると思う。
深愛と歪愛はどちらからやってもいいけど、気分良く終わりたいならやはり深愛を最後に。特に古橋深愛は最後に持ってきたほうが良い気持ちで終えられる。


以下よりネタバレオンパレードな古橋、真相感想です。真相っていうかもうある意味モロバレって感じですが、私は彼が一番好きだし、まさかの○○ゲーだったことはホント感謝したい。以下よりそんな色んな意味で拝んだ感想です。
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●古橋ルート
ネタバレ的な意味では面白かったけど、心の変遷的な意味では大変物足りなかった。乙女ゲー的な意味でも。
如何せん自ルートでも若干影の薄い感じは否めなかったけど、彼がそもそも生きることに希薄だし目的をもって生きていないし『いつ死んでもいい』と思っているから、影が薄いっていうのは非情に納得できたしこの影の薄さも含めて古橋なんだと思った。強い主張はせず、一歩引いて、自分の世界が早く終わればいいと思っている、そんな気だるさと気力のなさはとても良く伝わって来た。
まさしく彼はこの物語の始まりの人で、遠い昔に住んでいたこの城の王子で双子の弟との優劣に悩みつつ、大事な式典でマリス(魔力のようなもの)に取り憑かれて一族皆殺し、そしてその双子の弟はスイートクラウンへと変貌し、本人も死ねない体になって苦しむことに。クランとラズは彼の飼ってたうさぎの魂だったようで、そこをスイクラ様が菓子人形にしたらしいですが、下僕としてではなく対話相手として菓子人形にしたのだと思うと、弟であるスイクラ様も完全に人間としての意識を失ったわけではないんじゃないかなと思えた。
ただもっと味わいたかったのは、彼がどう絶望していったか、なんだけど、それはあまり深く描かれなくて残念でした。語られるのは何が起きたかとその結果のみ。実際古橋が自分の意思ではないとは言え、自分の身の回りの人や、大切なものさえ壊してしまった時の彼の絶望が知りたかった。性根は優しい古橋が、残虐とも取れる行動をしたくないのにしてしまった時の気持ちはどんなもんなのかなと、なんか自分スイクラさんと仲良くなれそうな気がしてきた。(お互い気に食わなくて殴り合いに発展しそう)
あと、そんな長い間苦しんできた古橋が、主人公とのやり取りだけで心を開いて生きる活力を見いだせるとは思えなくて。罪滅ぼし以上の何かを感じなかったし、好きになられたという感じも読み取れなかった。

彼の旺一郎って名前は、王の長兄=『王』『一郎』だったんですね。気づいた時は安易すぎて笑ったんだけど、一体誰がつけたんだろう。スイクラさんだったら笑える。古橋が自分でつけたんだったら可愛いなおい。
本当の名前が柘榴=グラナダで本質的には主人公と同じ名前、そして古橋と主人公がよく似ていて自己嫌悪から始まる、というのも上手い展開でした。

ラズが言った、古橋は見た目狼だけど中身羊って表現がほんと的確だった。穏やかで激情でない優しい人。そんな穏やかな人が狂いまくる姿を見たかった。スイクラさんとちょっと握手でもしてこようかなと考えてる(お互い手に画鋲仕込ませる)。
あんまり関係ないんだけど、褐色キャラで王子で柘榴と言われるとガネクレのサーリヤを思い出した。赤が似合うんでしょうかね。

・深愛ED
本当に綺麗な形の大団円だった。恋愛色が薄いと上記では不満を吐いたけど、このEDを見た時には『恋愛色薄めで良かった』と思った。恋愛色濃くて『こいつにはこの子しかいない!』みたいな気持ちにさせられたら、それこそ他のキャラたちが不憫だし、製作者の優遇を受けているようであまり好ましくないので。
大団円で良かったけど、気に食わないのはスイクラ様と兄弟関係を和解してスイクラ様が『愛しの柘榴に取り込まれるならいいよ(意訳)』とか言って主人公に吸収されること。オメーが散々胸クソ悪くしてきた罪は投げっぱなしかい!まあそんな結局やってきたこと曖昧にして自分のお気に入りの子に吸収されるのもスイクラ様らしいけど、キャラが忘れても私はスイクラ様(に散々ムナクソ悪くさせられた)こと忘れないからな。

・歪愛ED
どちらが好みと言われると、こちらのEDの方が好み。古橋の格好良さが最後まで色濃く表現されたEDでもあると思う。
結局間に合わず主人公がスイクラ様になってしまい、マリスを浴びた古橋は昔暴れまわった時のように血を求めることに……そんな彼の苦しみを緩和しようと血を求める夜に菓子人形を作って古橋に与える主人公。その関係性の歪さもとても美味しかったし、菓子人形が主人公を『お母さん』と呼ぶシーンはとてもぞくりと来た。
菓子人形の血を喰らっていたと思わせておきながら、一つも口にしていなかった古橋の格好良さも際立っていたし、それでも頑なに血を与えて歪みきる主人公もたまらんかった。
このBADのお菓子にしろと自ら望んでお菓子になり、古橋を失った喪失感で周りのすべてをお菓子にして自分も一緒にお菓子になるというEDも好き。古橋は歪んだEDのほうが満足できたのは、やっぱ本編でそれが物足りなく感じていたのもあったんだろう。


●真井知己・橿野知也(真相)ルート
真井!世間様が許さなくても、私が許す!……から自分の気持に正直に生きてくれ。
というわけで、私が密か……にでもなんでもないけど、乙女ゲーに求めていた展開が真井ルートで叶いました。なので真井ルートは本当に転がりまくって、興奮しまくって、気がついたら発熱していた。(ただの風邪初期症状)
私が乙女ゲーに求めていた展開は、双子の姉弟(兄妹)の恋愛。私は双子モノが大好きなんで、このゲームはそれだけでも大興奮だったんですが、血の繋がった双子の兄妹が密かに想い合うって言う展開が猛烈に好き。双子の何が好きかと言うと、家族よりも近く、友達よりも友達で、何よりもお互いの気持が分かって、でも周りよりも見えていない部分も多い……遺伝子的に世界中の誰よりも近い存在が惹かれ合うというのが、とても美しいし好ましい。同じ血が流れていて同じような姿形をしているのに、そこには確実に優劣がある別個の個体っていうのもたまらない。自分自身、兄弟がいるのでその優劣には少なからず考えることはあったけど、双子のそれは似たようなものであれ特殊なのだと思う部分もあった。

これ以上性癖を語ると自分でもヤバイなと(ようやく)思ってきたのでルートの感想を語ります。
真井ルートは、最初はお互い自然と惹かれていくのに、失った弟だという疑いがほぼ確実な事実へと変化していったところで、真井が主人公へ抱いた密かな恋心を折らざるをえない状況になって、そこから真井が苦しみまくるのがたまらなく良かった。ところで真井くんは不憫萌えっていうジャンルがあることを知っているかな。
これは双子ならではの苦悩っていうわけではないかもしれないけど、ここから主人公の『自分との過去を思い出して欲しい』という自喰により真井がどんどん記憶を思い出して行って、その昔の自分も異常なほど主人公への執着を見せていたことに慄くという展開を見ながら自分も歓喜で震えていた。
『真井』という存在に『弟』を求める主人公も歪で良かったし、そんな主人公に自分を歪めながら必死で『弟』を演じようとする真井も良かった。記憶を失った真井は主人公の弟である『知也』と同一であると言えるのか?というのも、テーマとして面白かった。記憶はその人を構成する重要なファクターだとも思うけど、でもそれだけでもないと自分は思うので。スイクラという作品ではほぼ別人という扱いをしていたけど、根本は同じという部分も残していて、いい感じにプレイヤーに判断を迷わせる要素になっていたのも素敵だった。主人公は記憶を失ってからの知也は『弟』とは違うという存在でもあるという判断をしていたけど、自分も真井と知也は根本は同じだけど、別として扱うのが良いだろうと思えました。それは真井側の心理描写が描かれていたから、という要素が大きいけれども。

正直、知也が抱いていた主人公への気持ちは、半ば育児放棄に近い環境で育って、すがる存在が半身(主人公)しか居なかったからというのが大きいと思うけど、一途に抱いてきた思いが否定された時の彼の絶望も計り知れないだろうとも思う。そこでスイクラ様に出会って、やはりなんだかんだ主人公を思ってスイクラ様との契約をしてしまった彼の心の中は主人公への愛でギッシリだったというのも。そのお菓子になった彼を齧ったら、あまりの主人公への思いにスイクラ様自身も毒されてスイクラ様も主人公へ執着するようになったという展開はとても笑った。かじられた部分こそが、知也が抱いていた主人公への思いと記憶だったというのも上手い展開だったしかなりときめいた。全然ときめくところじゃないとわかってはいるつもりなんだけどときめいた。
記憶を失っても結局主人公に惹かれる真井には相当頭抱えさしてもらったし、かなり萌えさして貰いました。せっかく呪いのような因果や思いから解き放たれたと思ったら、結局主人公しか想えない真井のことを思うだけで私は飯が美味かった。

残念だったのは、結局主人公は『姉弟だから駄目』って言う判断しかしてくれなかったこと。一応禁忌的だし、だからこそ駄目というのも分かるんだけど、個々人としてその人の思いに対して自分がどう思ったか、を、よく考えて欲しかった。深く考えもせずにすぐ答えを出していたようにも見えたし、あと双子だからこそ、敢えて『自分とは違う個体』として返事を返して欲しかった。その上でやっぱ姉弟だから駄目っていう答えを出したんだったらまあしょうがない気もしますが、深く考える前に『姉弟だから』という結論を主人公が出してしまったのは少々物足りなかったけど、やはりそれはそれで仕方ないものだとも思えるので少々複雑。
過激派とも取れる知也の感情もありましたが、結局真井とも上手く融合した感じになって、最後に自分を犠牲にして、二度も主人公を救おうとした彼の思いは認められても良いんじゃないだろうか。そんな真井を思って、『真井知己が仕合せになれる世界』を願う主人公に、ようやく少し彼の気持ちが報われたような気がして、私も浄化された。そしてそんな世界では、古橋深愛EDとは違った形の大団円が提示されていて、これが真井が仕合せになれる世界かと思うと、彼の優しい心根が胸にざっくり突き刺さった。さっきまで不憫で萌えてたからさらにざっくりいった。

最後は主人公が記憶を失い、真井が遊園地ですれ違うもお互い誰だか思い出せず物語は終わる。でもこれは悲しいEDでは無いんじゃないかと感じたし、何度記憶を失っても真井は結局主人公を好きになるのだと思った。それはやっぱり因果かもしれないけど、悪い因果ではないんじゃないかなと自分は思う。ソラユメの某方のEDをぼんやり思い出しましたが、すべての答えを提示しない曖昧だけど明るい未来をなんとなく想像させるEDは心地が良かったです。
後は私の脳内で何とかするから真井くんは安心して未来を私に委ねて欲しい。


・ネタバレ含んだ総評
まさかの双子ゲーで最後の最後まで双子大好きな自分は大歓喜でした。私の趣向に合っていたから楽しめたというのも否定は出来ないけど、それでも構成はとても上手かったし大きな破綻もなく、いい感じに謎と陰鬱さを混ぜた展開だったのはお見事。明かされない謎(始まりのあの匣はどこからどう来てどう作られたのかとか)やファンタジー的な展開で有耶無耶にした部分もあるけど、それでも心理描写はさすがのTAKUYO。
送り字を使わなかったのは、双子の諷諭(暗喩?)だったのだろうか。過去作にも見受けられたけど、文体にもやたらと気を使っていて、これは企画の井上さんのこだわりなのかなとも思えた。作風にはとてもあっていたので良かった。
今作も、出来の良し悪しはまた別として、作りたいものを作っているんだなと分かるゲームでそういうゲームが好きな自分はとても好ましかった。それが自分が満足できる出来だったので更に良かった。今後も私のできる限りでTAKUYOにお金を投げていきたいと思うので、よろしくお願いしたいです。
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