全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

16 2015

ネコっかわいがり! ~クレインイヌネコ病院診察中~ 感想

自分が考えてたよりも、優しい物語だった。そんなわけで名作と言われたネコっかわいがり!をプレイ。いつものようにネタバレフルオープンですよ。出来ればネタバレしないほうが楽しめる作品ではあると思います。


ネコミミやイヌミミが普通に存在する世界で、舞台は小さな診療所。患者たちの不調を抑えるには性行為をするしかない。記憶喪失な主人公はそこの所長であるクレイン先生の助手をしながら、患者たちを『治療』する。そんなほのぼの日常エロ……のように見せかけた後半プレイヤーを仄暗い落とし穴へと引きずり込むシリアス泣きゲー。
ほんとしかしパッケージ詐欺だよなあ……日本の男性器の平均サイズなブランド名に「迷える子猫ちゃんをワンワンスタイルで救ってあげちゃう!発情ネコミミADV!」とか抜きゲーとしか思えない悪意ある煽り文。これがシリアスゲーだと知らずに買った当時のプレイヤーはどう思ったんだろうかと気になるところではある。抜きゲーだと思ったら残酷な話をたたきつけられて怒ったんだろうか、それとも想像以上だったと評価したんだろうか。

で、自分は泣きゲー及び鬱ゲーな名作という意識でプレイしたから、後半の展開には気が重くはなったけど、衝撃を与えられはしなかった。これだけ泣きゲーとして注目された後だと、このゲームを一番楽しめたのって前述した何も知らずにプレイした人だけなのではとも思う。
前半は本当に抜きゲーと言わんばかりのエロ展開かなり多め。治療の役割でセックスをするのでまあそれは仕方ないとは思うけど、別にそれを求めてプレイしたわけじゃないので序盤の数回だけ読んで、あとはマウスホイールクルクルしていた。あとネコミミは付いてるだけでプレイには全然関わってこなかったのは笑った。これもある種の伏線なのかなあと思うけど。エロさは特別可もなく不可もない普通のエロゲーといった感じだけど、どう見ても18歳以上には見えないけど諸般の事情により18歳以上な子とも致すのでそのシーンは若干辛かった。でも主人公はそれで罪悪感を感じていたし、この状況を完全に良しとしてノリノリで楽しんでいるわけじゃないので、主人公には好感を持った。
ワイワイガヤガヤしながら、それぞれのキャラクターがどういう子たちか触れながら、前半終わりの選択肢で主人公へのキャラの気持ちや、キャラへの主人公の気持ちが明かされるけども、正直いつ好きになったとかそういう過程はあまり描かれないので、本当に明るく楽しい抜きゲーをプレイした感覚だった。閉鎖的な世界だし、まあ男一人に女複数だったら特に理由もなく恋愛的なことに発展しても不思議じゃないというか、この物語の本題もそこじゃないので。というか開始五分でお股パカーンだったので思わずびっくりしたけど、キャラたちへの行為の本番自体は、お互いの気持ちが伴ったり病気が進行してやむを得なくみたいなことにならないと致さない。あと極端にキス描写が少なかったのも、そういう心理的なものではないよという伏線というか要素の説明かな、とも思った。それがまた主人公に対して好感を持つきっかけにもなったのだけども。

後半はこの世界観のネタばらし。登場人物たちをどうにかしてあげたいけどどうにも出来ない傍観者な様子でずっと彼らの動向を追うのみ。それでも、後半の伏線回収とこの世界観設定の開放には気持ちは暗くなった。実は地球はウイルスに侵されていて、最初は犬猫、次に人間へと感染するウイルスに変異し、感染し発症すると女性はネコミミが、男性はイヌミミが現れ、その後凶暴化したあと死亡に至る。その致死率は100%。まさに救いようのない世界の中で、治療方法を模索していたのがクレイン先生(とその姉のノーマ)。そして見つけた薬の精製法は感染適合者の脳髄からワクチンを作り出すこと。その適合者がフェイと主人公。
ただ正直いうと、かなり重い設定に対して、文章も展開からも重厚な感じがしないためサクサク進むので、重い気持ちにはなったけどそれほど涙腺を揺さぶられるというわけでもなかった。基本的にキャラの口から世界がどういう状況か語られるだけなので。前半は抜きゲーとして使えるのだろうけど、後半への濃密な伏線というわけでもない為、キャラに対してそれほど思い入れが出来なかったのが要因だろうか。前半はキャラの紹介だけで終わってしまったという感じ。

明るい前半に対して暗い後半ではあったけど、希望が持てない世界観ではないので気持ちは明るく終えられたし感動することも出来た。乗り切らなかった理由は、あまりにもさくっとプレイ出来て、さくっと終わりすぎるところだと思う。評判以上のものは感じ取れなかったのは残念。ぶっちゃけるとプレイ前はもっと奈落の底で抜け出せなくなるような暗い世界に叩き落とされると思っていたし、蓋を開けてみると薄い糸のようだけども希望がすべて手折られたわけではないので、そういう意味で思ったよりも優しい物語でした。さくっとプレイ出来てほろっと泣ける程度のお手軽な泣きゲーの域を出なかったのは残念。

システムも申し分は無かったけど、いきなり場面転換してエロシーンに入ったり、唐突に感じる部分が多かった。それ以外は特に不満に感じる部分は無かったように思う。

あ、選択肢は合って無いようなもので、適当に目当てのキャラ寄りのものを選んでいけばたどり着ける。あと中出し外出しを選べたけど主人公の汁の量が多くてどっちもどっちだったのは笑いました。連発してるのに大したやつだ。

以下よりキャラ感想。

・クレイン先生(アリス・クレイン)
この作品に対して上手く感情が乗りきれなかった自分を救ってくれたのはアリスのおかげ。主人公の恋人で、その恋人である主人公を治療の道具として他の女の子と性行為させる心情を思うだけで切なかった。さらに、彼女は非感染者であるため、未来への希望があるから特に。それでも割りきって、世界のために尽力して、そのために愛しい人を犠牲にする。自分を犠牲にして世界を託す主人公側も酷だとは思うけど、自分が大切にしていたものをすべて手放して一人だけ残されてしまうアリスもかなり酷だよなあと思った。

「世界を救う、そんなちっぽけなことよりも……貴方一人を守りたかった――」

最後のこの台詞を見てもわかるけど、アリスに取っては世界なんてどうでもいいのが更に辛い。主人公が居てくれさえすればそれでいいのに主人公はそれを望まなかった。一番愛していた人が託してくれた希望を潰えないために生きなければならない辛さも更に辛い。そういうわけで、この物語はある意味、一組のカップルの悲劇のために用意されたものだなあと思えました。

・フェイ
託された希望その2。ただ自分はツンデレが苦手で、癇癪起こしたように叫ぶ彼女の台詞を聞くのは辛かった。特に辛かったのはナミが高熱を出した時にアリスに対して言った「役に立たないわね!何のための医者よ」という台詞。プレイした時はまだアリスがどういう事情を抱えていたのかは知らなかったけど、ウミでさえアリスに対して不満を言わなかったのになんなんだこいつと思ってしまった。あと前半選択肢で見れる彼女のEDもただただ癇癪を起こしてるだけって感じで、もうそんな女放っておけって思ってしまった。ある意味女の子らしいめんどくさいタイプ。
あとわざとらしい感じの裏声っぽい演技と、どう頑張って聞いても歳相応には思えない若干灼けた感じの声を聞くのが辛かった。喘ぎ声とかは比較的普通だったように思えるんだけども……。
その後、後日談を公開していたサイトで熱狂的な日ハムファンと書いてあって許しそうになったけど、好きな選手が投げる同人作家だった為、彼女とは日ハムファン的な意味でも和解不成立。

・ノーマ
一番最初に食事の時しか起きないみたいなこと言ってたけど結構起きてる。いや、そうじゃないと話が進まないんだけども。自分がエロゲで好きなタイプが、落ち着き払ったおっとりした頭のいい女性のため、すぐに彼女に飛びついた。ノーマもノーマでかなり辛い立場だったろうなあ。一途に好きだった男性は結婚していて、その好きな人の子供である双子を引き取ってなんとか生かそうと奮起する。前半選択肢で主人公がノーマを好きになってしまった時のノーマの反応を見て『あかん引き戻せ主人公、その道はだめだ』と思ったけどその勘は正しかった。あのままルートに進んだら誰も幸せにならなさそうではある。
彼女が自分の命に対しては半ば諦めがちだったのは、彼女も一番大切な人を失くしてしまったというのもあるだろうなと。その分双子を守ろうという意志だけで立っていたように思えて、なんだか本当に物悲しくなるキャラクターだった。最後にウミへの引き金を引いた悲しい役割を背負った、強くて悲しい格好良い人。撃った後になんで撃ったんだと責めたフェイに対して「あなたの命がウミよりも重かったから」と言わざるを得なかった彼女の心情を思うだけで辛い。
「この世界に救う価値はあるか?」という彼女の疑問は、もしかしたら『自分が一番大切な人が居ない世界』だったのかもしれないと、終えたあとになんとなく思った。

・ウミ・ナミ
どう頑張っても18歳以上には……という禁句をぐしゃぐしゃにつぶしてゴミ箱に投げつけたけど、それでもエロシーンが辛かった。自分にはそういう属性は本当に無いんだなと改めて知った。彼女たちに対しては歳相応の子としか思えないし、重要な役割の登場人物の下にいただけで、この世界では彼女のような子たちは多くいるんだろうなとも。
発症して戻れなくなったウミも不憫だけど、後日談で発症すると生殖能力がなくなるはずなのにナミに子供が出来たと知ってアリスを思うと倒れそうだった。というわけで双子には、それほど重い感情は持たなかった。

・ジャック(伊勢谷優作)
誠実な主人公。前述したとおり治療でセックスすることを良しとしているわけではないことが見受けられるし、記憶を失っても元来の誠実さを失わなかった、自己犠牲で世界を救う広義的な意味でのヒーローでもある。彼が幸せだったかどうかは、作中で出てきた『幸福な王子』が答えなんだろう。アリスとの関係をしっかり描写してくれればもっと感情移入出来たのになあと思う。

「アリス、君を愛してる。俺には君こそ世界そのものだった……」

上記したアリスの台詞との対比で、後日談より。アリスが生きてる世界を救うための自己犠牲。でもアリスはジャックさえいれば良くて。どのみち抗体がなければ朽ちていくだけの世界なんだけど、それを選ばないからこそこのカップルを好きになれた。
乙女ゲーマー的な目線から語れば、乙女ゲーに来て欲しいとは思わないけどとてもいい男だと思った。来て欲しいと思わない理由はもちろんアリスのジャックで居てほしいからという理由だけど、『こういうタイプ』で語るならぜひともウェルカムです。それでも主人公を置いて世界を救うヒーローは乙女ゲーでは賛否を呼びそうだなあ。(一瞬忍人先生が浮かんだけど無かったことにした)


あと、調べていく内にこの物語を書いたシナリオライターさんが後日談を公開していたので以下に。
「WHAT A WONDERFUL WORLD」web edition - うつろあくた様
「WHAT A WONDERFUL WORLD」 -6th Anniversary Mix- [pixiv] - うつろあくた様
上は最初に同人誌として出したもののWEB版。下はそれに加筆修正を加えたもの。後半の展開が大きく違っており、恐らく最初に出したものはアリスは主人公の元へと行っただろうけど、修正されたものは存命している。私は下のほうが好きです、作中でアリスが生きていられればずっと傍で生きられる的な会話をジャックがしていたから。
ナミが優作の子を身ごもるという展開には目をかっぴらいたあと「優作、あなたはどうしてわたしには何も残してくれなかったのですか?」というアリスの独白が胸に突き刺さって抜けない。優作さん最後にやらかしてくれましたねえ……。


プレイしていてとてもびっくりしたのは、この物語の舞台が北海道だったこと。日本の最北の国立大って言われた時思わずビビった。自然な描写はちらほら見受けられたけど、北海道的な描写は無かったので。何故北海道だったのかはわからないけど、獣医学的な話とかだからだろうか。後日談では室蘭という具体的な地名が出てきたけど、そこから主人公たちが暮らしていた診療所の位置を考える時間は結構楽しかった。(ほどよく田舎であることを考えるなら海運関係の拠点である苫小牧に近い白老あたりかな)


楽しめたといえば楽しめたし感動できたかと問われれば感動できたけど、やはり期待していたよりも物足りなかったのは事実。あとSWAN SONGの時と同様安価でプレイ機会を与えてくれたメガストアには感謝。このゲームを万単位で購入していたら、たぶんもっと不満が出た感想になったような気がする。ただ毎度あられもない姿の女の子の表紙なのは大変処分に困っておりますのでなんとかしていただけないでしょうかメガストア殿。男性購読者が大半であることを考えれば当然だし仕方のないことではあるんだけども。
乙女やBLもいつかこういう雑誌が出てくるのかなーと思うとなんだか楽しみなようなそうでないような。