21 2017

装甲悪鬼村正 感想

終わった……終わった後の初感想が『面白かった』を超えて『長かった』が来る辺り、本当に長かった。いやマジで長かった。


装甲悪鬼村正 Windows 10対応版
ニトロプラス (2016-07-29)


繁忙期なのもあって攻略に一ヶ月を超えるとはまさか自分も思わなかった……下手なRPGより時間掛けてたんじゃなかろうか。かといえ他のゲームに逃げれば気持ちも感情も分散されるだろうし、でも村正ばかりやっても飽きそうだと思ってもしもしゲーを合間に挟んだらこれがいい具合に収まった。
そこまでプレイ時間が長くなった要因は、もちろん作品の長さではあるのだけど、これほんと忙しいときにやるゲームじゃなかったっすね……長い長いと言われるゲームはたくさんやってきたつもりだったし、まあ忙しいけどなんとかなるだろ~~的な気持ちで始めたらここまで掛かってしまった。3月突入したらどうしようかと思ったけど、突入せずに済んでよか……良くない。
でも自分にとっては刀剣乱舞村正実装報告から、千子村正のキャラデザをなまにく氏が手掛けたこと、実際に村正が実装されるまで、ぶっ通しで装甲悪鬼村正を始めて終えられたことは最高に素晴らしいタイミングだったし、後悔は微塵もない。……まあ村正来ませんでしたが!……来ませんでしたが!!(拳を握りながら)

ニトロ社長のでじたろう氏が刀剣乱舞千子村正実装時に、素晴らしい作品なので是非と言っておられたが、どちらもプレイする層としては、あまり刀剣乱舞プレイ層にはすすめらんないな……と思う出来ではある。何の罪もない女の子があれやこれやされるし、何の罪もない人たちがあれやこれやされるし。だけども、プレイし続けてれば考えさせられたり感じるところはかなりあるし、むしろそこが魅力だった。薦めることは出来ないが、『素晴らしい作品』と自負された点においては同意したい。……まあ不満が無いわけでもないけれど、それを含めて、良い作品だった。
プレイする前は体験版が2章も無料公開されてるのはお得だなーって思っていたが、終えた後ならこれはニトロプラスの優しさだなと思った。1章で離脱する人も居るだろうし、1章が無事でも2章で離脱する人も居るだろう。言うなれば、この2つがこの作品について行けるかどうかの山。2つとも章の終わり頃に振り落としに来るので、ここで振り落とされたとしても後悔も無さそうですし。

そんな感じで、以下より、友人がたったの5回で村正を鍛刀出来たと聞いて膝から崩れ落ちた、200弱回して一体も来なかった人のネタバレ感想が始まります。本編同様クソ長い感想ですよ。



うん、とても、長かった……。長いこと自体は辛かったけれど、その文章を読むのは幸いにも苦ではなかった。くどいと言われている奈良原氏の文章との相性が良かったのがフルコンプ出来た大きな要因だと思う。これが自分が苦手な分類だと、この長さで続けるのは難しかったんじゃないかと思うほど。史実の出来事を織り交ぜたりすることも多く、そこでまた一つ勉強になったりしたし、そこが感情移入できる要因でもあった。
ただその長さが本当に『必要だった長さ』かと問われると、自分は苦い顔をするしかないのだけど、でも『無駄ではなかった』と答えたい。読んでいる間は引き込まれたし、十二分に楽しかった。これはホント相性の一言に尽きる。
そして長さは弱点でもあり短所でもあるけど、長所でもある。長ければ長いほどキャラクターに感情移入出来る要素が増えたし(感情移入しにくいようなキャラクターばかりだから尚更)、描写は丁寧。ただ相性が良かったのは良かったけど、それでも断トツでくどいと思ったのは戦闘描写か。いちいち戦闘ごとに解説が入って、それが図解もいれて頑張ってわかりやすいようにはしてくれるんだけど、わかるようなわからんような微妙な感じだった。もうこれは社内で刀の手入れをするぐらい刀と武道を愛しておられる奈良原氏のこだわりなんだろうけど、プレイヤーにはそんなこたあ関係ないんだな。……なので自分が戦闘で楽しいと思えたのは正宗が理屈抜きにして内蔵ぶちまけるところだったし、過去編での山賊の親方との正しく真剣勝負ぐらい。あんま劔冑の戦闘関係ないな。
それ以外は色々考えさせられたりするところも多くて面白かった。いや、内容的に面白かったと評するのもなんだかなあと思う内容ではあるんだけども。それでも、湊斗景明の物語を、装甲悪鬼村正の物語を、最後まで見届ける事が出来て良かったなと思う自分が居る。

システムは重くそもっさい。序盤は選択肢も少なめだから良いけど、後半に差し掛かるとアホかと思うぐらい選択肢が出てきて最終決戦辺りで数独みたいなパズル出された時は、思わず脳内が?マークで埋め尽くされましたぞ。しかも選択肢出て来る度にカーソルが読み込み表示に変わるのは笑うしか無かった。選択肢如きで一体何をそこまで読み込むことがあるんだ。そこまできてようやく、そういえばこのゲームはニトロプラスがシステム的な意味で一番ニトロプラスしてた辺りのゲームだったな……と原因が判明した。(今はどうかわからないが)
謎の数独や探索選択肢は、調べたところ奈良原氏がゲームブック好きだからと言われているらしいけど、まさかラスボスとの最終決戦でこれで最後の一発じゃーってなってるところでパズル出されるとは思わなくて、思わず心の中で「いらねえだろこれ!!!」って絶叫してしまった。飛行船探索もうざったかったけど、物語の流れを止めているわけではなかったのでまだ許せた。でも終盤のあのパズルは……あのパズルは、ホント意味不明だった……止める人居らんかったんか……。二世村正が「まさかこの問題をお前(三世)が解くとは」みたいなこと言ってて、小一時間かければ私でも解けそうな問題をそんな風に言われてもと、悲しい気持ちにさせられた。私にとってのせめてもの救いは、攻略情報見ながらやったんで一瞬で突破出来たこと。奈良原氏の遊び心だったと思うけど、時と場合があると思うんだ……。
あと起動もものっそい遅い。起動した時の演出が飛ばせなくて、起動する度にイライラさせられた。そしてタイトルがドーンと表示され『ジャーン!!』と爆音がなるところで、ストレスで仰け反りそうになってた。あとよく音もバグって待機時間長かったあと戻ってきて台詞を進めたりすると「ありがととととととととと」みたいな感じで壊れたラジカセのようになったり、BGMが一定の秒数でループしたり、そしてそれが場面転換で直らないので、一回閉じて、また起動して、そして『ジャーン!!』をくらいまたストレスで仰け反ってのた打ち回る生活をここ一ヶ月ずっとしてました。
あとスキップはぬるま湯に浸かりきったような早送りで、超速スキップは画面演出を全て切るため、どこをどう進んでいるのかは全く見えない。実際超速だったかは神(製作者)のみぞ知る。自分が一番ムカついてたのは登場人物差し置いてこのうんこのようなシステムではなかろうか。花枝さん、ここにもうんこ、ありましたよ……。
ちなみに上ではWindows10対応版を貼ったけど、プレイしたのは初期版でOSはWindows7。メモリはそこそこ積んでいるからか選択肢の読み込み時間は言われているほど遅くも無かったし起動停止もなかったけど、なんつうか……最新版で直っていることを祈るのみです。

でも演出については良かった。好感度表示が相手の好感度を示しているのではなくて、景明自身の相手への好感度だと気づいた時は、ADV界屈指の迷惑好感度だと戦慄したし、そのいつものADVを逆手に取ったような演出は逆に私の好感度が上がった。
あと劔冑の戦闘描写の演出も頑張ってたなあ。くるくるよく動いて、本当に戦ってる本人のような気持ちをちょっとだけ味わえた……ような気がする。

音楽についても良かった。OPのMURAMASAは歌詞も含めとても気に入っている。EDの落葉も同じ理由で、余韻が良い。魔王編に入るときにバージョンの違ったOPが再び流れるのが良かった。おかげで何度も見まくった。本編と違った戦闘モノの格好良さが表現されているOPなのは、ある意味詐欺かもしれない……。

なまにくATK氏のエロ可愛いスチルも良かったなあ。何より表情差分が良かった。獅子吼の怒り狂った?表情とか笑えるんだけど、なんだか『らしい』のが面白い。景明の悪鬼スマイルも邪悪で素敵。女の子は可愛く、各キャラに味がにじみ出まくってて、スチルを見れることを楽しみにしている自分が居た。そしてそんななまにくATK氏のイラストに惚れた自分が違う意味でまた刀剣乱舞の方の村正を欲しい気持ちが強くなるのがもう……私の物欲センサーをぶっ壊す方法はないのか。

これ以上色々語るとまた万里の長城のように長くなりそうだから、以下よりキャラ感想。いやあ、この作品、本当に人によって感想が変わりそうだなあ……。最後まで納得できない人もいれば、共感出来る人も居るだろうし、相容れなくて、完全一致なんてしなくてよろしいではないでしょうか、にんげんだもの。


●湊斗景明
主人公にして悪鬼。しかし生まれながらに悪鬼として生まれたわけではなく、根は善人で出来ている。そして善人だからこそ『悪鬼』に堕ちていく……最初から最後まで湊斗景明らしい物語だった。見た目暗そうな到底主人公っぽくないこの人が、『主人公』だというのはとても面白い、一章のあまりにも主人公すぎる雄飛との対比も含めて。
前世でなんかものすごい悪行でもしたんかと思うぐらい、不幸不幸不幸の連鎖で、一つ善行をすれば不幸を呼び、一人斬っては違う一人を殺し、ありとあらゆるヘイト収集マンになっておられたのは可哀想という感情がまず浮かぶ。正しく同情である。始まりに本人に非はないから尚更。村正の戒律で、敵を殺したら味方を殺さねばならないけど、それを本心から「したい」と思ってしたことでもない。やりたいくはないが、しなければならない。いろんなものを背負い、背負わされ、それでも自分がしたことの責任から逃れようともしない。ただただ真っ直ぐに罪を受け止めて、ただただ真っ直ぐに苦しむ。自分の罪を理解しながら、それでも村正を振るう。でも、それは景明自身が選択したことでもあるから、景明本人が言うように、彼は裁かれなければならないと思ったし、罪は罪である、とも思った。同情する気持ちと断罪されるべきという気持ちとでその矛盾のような感情の混同を楽しめた。いや、お前の苦しみ楽しんどるわ、って感想を残すのも苦しみのた打ち回ってる景明にとってはいい迷惑だろうけど。

しかしながらうっじうじカビでも生えそうなぐらい同じことを堂々めぐりしてたのはいい加減にしてくれやと思った。魔王編で実は元気な光は光が見ている夢で、本体は鉱毒病治ってませんでしたって言われた時の景明の『殺せない』は、お前ここまで来てそれ言う?散々悩んできて今ココでそれ言う?とも思った。特に英雄編ではちゃんと決着付けていただけに。だから蛇足のように感じてしまって辛かったし、元気な光なら殺せて弱ってる光だから殺せないだなんて、他人なら殺せて自分の家族だから殺せないだなんて、本当に酷い話だ。読んでいてムカムカは来たけども、納得できないというわけではなく、ここで悩んでしまうのが湊斗景明なんだと言う結論に落ち着いた。いっその事何もかも捨てて開き直ってしまったり、その負の感情を受け止めて狂ってしまったりしたほうが絶対楽ではある。でも景明は、自分に狂うことすら許さず、でもひたすら悩む。人を殺したくない、でも悩んで悩んでそうする。そしてそうしてしまった後も苦しみ悩む。読んでいるこちらとしてはくどさの極みって感じだけれど、それでも悩み続けるからこそ景明である。そんな景明が悩むことをやめてしまったシーンが作中に幾度かあるのだけど、なぜだか喪失感が半端なかった。
『悩むこと』を半強制的に放棄させられた魔王編は、その景明の悩み続け苦しみ続ける魅力を知らせるために、必要だったのだと感じられた。精神汚染を受けて考えることを放棄して光を助けることのみを第一に行動する景明はもうかなりの魅力半減だった。半減ってか私にとっては99%オフだった。景明の大安売りですよ。ちなみに残りの1%の内訳は声と顔。
人を殺める罪の重さを悩み、考え、それでも選択して選んだ道を悩み苦しみながら歩く。それこそが湊斗景明である。色々理由は付けては居たけども、『村正』でなければいけない理由はなかったように思える。村正だけは卵を植え付けられないからと言う理由は、でも別にどんなに途方もないことでも村正じゃない刀でも『出来ないことではない』。切羽詰ってた状況の村正との出会いはともかくとして、それでも景明は村正を選んで、敵を一人殺して味方を一人殺した。色んな人をたくさん殺した。今までしてきたことの意味を噛み砕いて、悪鬼になるという答えを出した『悪鬼編』は、正しく湊斗景明のためだけに用意された道なんだと思える。
ちなみに善悪相殺の理について理解してなかったことについては、そういう意味で人殺してわけじゃなかったの?と思わず拍子抜けしてしまった。それを知っててやってるもんだと思ってた。その人の人生の裏側は、一緒に裏側に居た人間にしか見えない。でも必ず存在する。でもその善悪相殺の真実を知らずに居て、それを知っていくことも含めてこれは湊斗景明という主人公のための物語だった。

でも一般市民目線だと有難迷惑の極みだなあホント。彼自身の心根は善だけど、絶対近寄りたくないなと一般市民目線を捨てられなかった。彼がした選択のせいで一体何人の人が死んでしまったか、それがもし自分だったり自分の身近な一人だったなら到底景明を許せない。だから私は雪車町に同感した……のは雪車町の項で語りたい。
ただ、景明自身の目線で考えれば自分は絶対「仕方がなかった」って言うだろう。景明に味方する親王や菊池や村正の立場でも「仕方ない」って思うだろう。目線を変えたら意見が真逆になる、そんな面白いキャラクターだった。
そして、景明は主人公らしくない主人公ではあるけれど、主人公らしい主人公でもあると思った。英雄ではないけれど、悪を善しとしないし善行を当然とする。そしてお茶目で真面目でバカ正直。そしてそんなまっすぐな所が色んな人を惹き付け(もちろんのこと私も)、気がつけば物語の中心にいる。そしてそれがまた善悪相殺を産み景明は苦しみ苦しみ悩む無限ループ、可哀想としか言えないな……怨むなら君を産んだ奈良原を恨んでくれ景明よ。
悪鬼編のラスト、光(ひかる)と一文字違いの光(ひかり)が、先住民と難民との争いを『わをもってとおとしとす』で、笑顔で終わるのが強烈にして最大の皮肉。景明が蒔いた善意の種が芽生えるところで終わるのが、最後の最後まで奈良原氏は景明を苛め抜いた。

ああそうそう、中の人の好演も素晴らしい。特に怯えた絶叫は何度聞いても美味しかった。いつもボイス飛ばし派な私がプレイ時間長くなったのは色んな人の演技を聞きたくなったのもあるけれど、その一因としてこの方の演技がある。いつもプレイしてるゲームではこういう演技は聞けないので。見事に景明を演じきったのも素晴らしいけれど、『今』の中の人で景明を演じたらどんなふうになるのか……また違った景明を楽しめそうだなあと思えて仕方がない。……どこか機会作ってくれませんかねえ。ちなみにこのゲームをプレイする直前にプレイしていた精鋭部隊的なあれやそれが、序盤、頭をかすめて行ったのを思い出に記しておきたい。


●綾弥一条
一条に関しては特に思う所も無かったんだけど、英雄編は正しく一条が主人公の成長物語だった。正義の裏側に何があるのかを見て、考え、悩み、そしてそれでも正義はあると決断した一条を否定する気持ちは自分には無かった。かといえそれを全肯定出来るほどでもないのだけど。って言うか装甲悪鬼村正の登場人物たちは、悪なら悪、善なら善でどちらかにパラメーターを振り切りたがるんだけど、人間なんだし曖昧で当然で、正解が無いのもまた正解なんじゃないスかね、と感じるわけです。でも答えを出してそれを突っ切って景明とガチンコで衝突した一条のことは、結構好ましかったと言えるが、好きまでには至らなかった。

なんで好きにならなかったかというと、愚直だからだろうか。まっすぐはまっすぐなんだけど、景明とはまた違ったまっすぐ。悪く言えば『後先を考えない』。到底戦えもしないし足手まといにしかならないのをわかってて、自分の感情に素直に『力になりたいんです』とか言ってた時は、何言ってんだこいつと思ってしまう自分を抑えられなかった。自分の立場をわかっていながらそういうことを言えてしまう愚直さが景明とは違う意味でのウザったさがあった。
敵陣に潜入した後に出会った桜子に、「六波羅に父親殺されてどう思う?(訳:六波羅腹立つでしょ?私と一緒でしょ?)」はもうぶん殴ってやろうかと……あの発言は桜子を想って慰める発言ではなく、一条が満足するための発言だったから余計に腹立った。六波羅を憎んでいる一条を連れて行った親王や景明の責任でもあるけど、潜入後の行動は阿呆としか言えない行動が多く、このあたりが一条に対しての、私の踏ん張りどころであった。

また一条が正義にこだわり続ける原因になった父親だけど、判断に迷ったり揺らいだりしたらすぐ父親が父親がと言っていたのが気になった。結果的には父親は関係なしに、自分の意志を決めてくれたから良かったんだが。そして私は一条の父親がはっきり言って嫌いな部類に入るので、この父親を慕うのかあ……と思ってしまった部分がある。どの物語も胸糞悪さがあったんだけど(その胸糞悪さを含めて楽しんでいたが)、一条の父親に関してはテメエの自慰に娘を付き合わすんじゃねえと思った。一条に正義のなんたるかを教育するための行いだったんだんだろうけど、教育にしては自分の首を斬らせるって度が過ぎてるし一条がそれで歪んでしまった。筋を通すことで得られる自己満足と言うオナニーに娘を付き合わすのが気持ち悪い。でもこれが一条を一条として構築している要因でもあるから、外せないエピソード。

潜入後の遊佐童心戦を契機に、一条が『正義』とは何かを知り、考えていくのは主人公交代の瞬間でもあったように思う。自分が殺した罪の重さを自覚し、でも逃げることも出来ず、否定することもできず、一人で苦しむ一条が、「景明の強さが欲しい」と言ってセックスに持ち込むのはほんと愚直だなと。んなもん得られるわけない事わかってただろうに、それでもそうしたいから突き進む。でもそれこそが一条。景明への恋心もあったんだろうけど。
遊佐童心は一条のそういう弱点諸々を一瞬で見抜いていて、そういう意味でも遊佐童心戦はとっても楽しかった。それでも勝利したのが一条である所が、景明が心底嫌悪する「正義」の物語の始まりだった。ちなみに殺人を自覚する前は「倒した」で、自覚した後は「斃した」に変化しているところも良かった。
遊佐童心の裏側に、幸福に暮らしていた人たちを手折ってしまったことを知った一条が、その胎児の腐肉を食らってもなお正義を目指すところで一条に対するあれやこれやを全部吹っ切れた。ここまで言い切ってくれたら、自分も『その道を突き進んでくれ』って思えた。ここで狼狽えちゃう正宗ちゃんも可愛かったです。つーか正宗ちゃん、仕手の手足や内蔵グチャグチャにするくせして、そんなことぐらいで狼狽えちゃうんかと逆に驚いたぐらいだった。もっと精神鍛えんかい。
でも前述したとおり、一条が自分の肉体を犠牲にして正宗を扱う所がすっごい好きだった。自分を全く勘定にいれずに正義を目指す清々しさが、ある意味、眩しくもある。自分を犠牲することに、まっったく躊躇いがない。その珍妙さと、痛々しさと、清々しさと、禍々しさが上手くマッチングした正宗という劔冑と一条という仕手の組み合わせが好き。躊躇いのなさが格好良かった。

しかしそんな英雄編のラストに、景明が死んで正宗が壊れ、一条と村正が残り、そして二世村正の卵のおかげで世界は大混乱!を持ってくるあたりが、奈良原氏はとても良い意味で「ヒドい」。それでも一条は正義を信じて一条なりの使い方で村正を扱うし、正義を認めなかった景明が敗れる辺り、これは最後まで「正義」の物語でした。


●大鳥香奈枝
私の大本命、大鳥香奈枝嬢です。香奈枝さんはホントもう好きすぎた……復讐編と言う物語も良かったけれど、自分は大鳥香奈枝というキャラクターが心底好き。香奈枝さんも悩むし苦しむけど、悩み苦しみ通しながら最初から最後まで貫き通した「復讐」がもう手足痺れるレベルで格好良かった。とにかくもう格好良かった。
貴族として生まれた根っからの殺人狂、でも貴族であるから庶民を守べく立ち向かい、かつ自分の殺人狂としての欲求を満たすべく「復讐の代行人」として在る。復讐する時も立場はあくまでも対等で、寝首をかくことはしない。そして、復讐が、殺人が、どんな行いであるかをすでに理解している。笑う時は大声で笑うことが許されない立場で育ったからか、くつくつと笑う。でもバロウズ乗ったら「ゲェーハーハーハァァァ!!」なんて到底ヒロインとは思えない笑い方で笑ってて、私もテンション上がってしまった。でもそんなヒロインっていう立場を全力でぶっ壊すからこそ香奈枝さんだし、そんな香奈枝さんが大好きです、私は。

そして香奈枝さんルートである復讐編が、香奈枝さんの魅力が最後までたっぷりだったのはもう良い意味でのた打ち回った。序盤も序盤で香奈枝さんが「巨悪に立ち向かう勇気を持ってるその姿に共感する」と景明が雄飛を殺したのをわかっていながら景明を言葉責めで虐めぬくシーンはもうウキウキしながら見ていた。そして景明が見事卒倒するオチも含めて、もう旨味要素半端なかった。
もちろん復讐編で外せないのは、香奈枝さんに復讐しますと宣言されてその恐怖に震えながらも断罪してくれる喜びから手を取って感謝する景明の、女神・香奈枝による景明洗礼のシーンはもうホント涎がダバダバだった。そしてまさか感謝されるとは思ってなかった香奈枝さんが内心めちゃくちゃ狼狽えてるのがもう可愛い。めっちゃキュート。
そして何より良いのが、その後に『立場が同等になること』。復讐者の立場だった香奈枝さんが、景明の養父である菊池を殺したことにより、景明も香奈枝さんに復讐する立場が出来上がる。同等の立場になったことを香奈枝さんだけが理解し、景明にとっての『大鳥香奈枝』という断罪者を失わせないまま、景明にも香奈枝さん自身を復讐させる戦いを最後に持ってきた所がもうホント良かった。何も思うことが無かったのなら、自分が養父の復讐者であることを告白したんだろうけど。景明の境遇、景明の思い、それらいろんなものを含めて景明の断罪者を失わせなかった大鳥香奈枝の乙女な思いが良かった。とてつもなく。

そう、獅子吼との関係性も良かった。まだ獅子吼が無垢だった頃に、婚約者として貴女は俺が守ると言われた思い出をずっと抱えながら、それでも獅子吼に父親を殺された復讐者として成し遂げたのも悶えた。燃え盛る大鳥邸をバックに、香奈枝さんの最初泣いてるのかと思いきや壮絶な笑い声だったあのシーンは本当に震えた……こっわ……でも素敵。
獅子吼という婚約者を立てて獅子吼を殺すまで操を守ってたのも、香奈枝さんめっちゃいい女。そして性帝景明に『本当に操を立てるなら相手が死んだ後も守り続けるべき』と痛いところをつかれて、めちゃくちゃにされてしまうのがもう……もう、なんだこの人達……私を喜ばせるためにこんなことしてんのか……。このシーンは景明の性帝っぷりがめちゃくちゃ笑えた。一生懸命セックスしようと頑張った香奈枝さんに「こんなものは性交渉ではない」と言って無茶苦茶にしたり、終わった後の「けだものけだものけだものっ」も笑える。にしても、村正では数少ない和姦が全然和姦じゃないのが笑えるというかなんというか……。

大鳥邸に突入する時のキスシーンはもうホント唐突で心臓跳ね上がったけど、最終決戦の殺し合いももう悶えてジタバタした。香奈枝さんが景明を『殺したくない』と悩み、考えながら戦いながらも一切手を緩めない。それでも自分という存在とはまた別に復讐者を据えて、復讐を貫き通した香奈枝さんを格好いい以外に評せない……。私の大好きな大鳥香奈枝は、最後まで大鳥香奈枝を貫き通したのだともう嬉しさ突っ切っていた。生半可に『愛』や『同情』に逃げたりしない、悩むけれども、そこには行かない力強さが眩い。
ラストの美しい余韻を含めて、復讐VS復讐が静かに安らかに幕を閉じるのも、感動とはまた違った、この話を見られて良かった、と言う気持ちにさせてもらえた。なんというかとても美しく綺麗な幕の閉じ方だった。

複眼設定については、復讐編終えた後のタイトル画面で複眼ドーン!は正直チビリました。でもその複眼設定もまるごと好き。喋ればお茶目で、緊迫した空気でも全方位でおちょくり、会話の主導権を握りまくり、いつでも美しい復讐鬼でいてくれた大鳥香奈枝嬢に乾杯。
にしてもバロウズ、思い切り弦楽器から出来ました!って感じの劔冑なのに、最後まで気づかなかった景明の節穴っぷり。まさか断罪してくれる香奈枝が犯人だとは思わなかったんだろうけど。最後に香奈枝の正体に気づきかけたところを、村正の声で引き戻されるのも何かしらの因果を感じさせる。

香奈枝さんは本当にめちゃくちゃトリッキーで麿さんよりビューティフルで最高にユーモアたっぷりなキャラで、語り尽くせないのでここまでにします。あ、中の人の演技も素晴らしかった、あの笑い方はテンション上がりまくったし、おちょくる声が好きすぎて、ボイス飛ばし派な自分がこれまた香奈枝さんのボイスは殆ど飛ばさなかったぐらい。
最後に、香奈枝さんより先に茶々丸がフィギュア化されたことにより、これは香奈枝さん世間様にはあまり人気が無さそうだぞ(当然だが)と察した私が、香奈枝さん以外の全ヒロインに向かって断末魔をお聞かせしたい。
「香奈枝さんが作中で一番景明に安らぎを与えた女だぞ!!!」


●足利茶々丸
茶々丸に関しては、最後まで自分自身のために行動したんだな、と。精神汚染をしてまで景明を味方に付けてしまった時点で、自分の茶々丸への興味は薄れてしまったんだけど、その最後まで自分自身のための行動、自体は貫いた物があってよかったと思う。でも茶々丸は、3章でアベンジが邪道な方法をして買ったのを『つまらない』と言っていたように思うけど、景明の選択を待たずに景明を精神汚染するのは邪道じゃないんかいと問いたい。あの時点で私の中で茶々丸がつまらないキャラクターになってしまって悲しかったし、勿体無いなあと思った。まあそれは、光にも言えることなんだけど。誘導して自分の技で自分のものにするのならともかく、他人の力を使って良いように操作するのはつまらない。
EDで一目惚れだったとか言われるけど、なんというかこれも蛇足だなと。利用し合う関係の方が好ましかった。寝取るなら寝取るで正攻法で来い、っていう気持ちが最後まで拭えなかった。そして劔冑バージョンの立ち絵は無茶苦茶笑った。可哀想なぐらい笑えた。だ、ダサい……可愛い茶々丸にこの立ち絵はあまりにも可哀想ですよニトロプラスさん……。


●三世村正
私がフィギュアオタクなせいで三世村正が女の子状態になれるっていう衝撃を味わえなかったのは我ながら悲しい……ちなみにマックスファクトリー(※ニトロプラス御用達フィギュア会社)好きなので、展開を見る前に村正のメイド姿ももう知っていた。悲しい。メイド姿見た時は「あのフィギュアの元ネタこれだったのか……」と変な形で答え合わせしていた。
そして村正のフィギュアばっかり出てるところを見ると、彼女が一番人気なんだろうなあ。でもよくわかる気がする。呪いを抱えているけれども、その呪いは自分の所為と庇い仕手の所為にはせず、献身的で、そして人間形態になると普通に狼狽えたりする可愛い女の子。そして景明が作中で唯一愛したのがこの普通の女の子だった村正なのだから、香奈枝さんファンとしては歯ぎしりMAXですよ。いや、でもよく分かる……景明の周りの女はろくなのが居ないし、どんなに辛い時でも支えてくれて、一緒に罪を背負ってくれて、そばに居てくれる普通の女の子が居たら、景明でなくとも愛さずにはいられないだろう。たとえその悪鬼への始まりが村正という存在だったとしても。私が景明だったとしても村正を選ぶ、香奈枝さんすまん。

「神仏の恩寵を願える筋合いではない」
≪……なら、悪魔の庇護でも願えばどう≫
「自分に祈って何の意味がある」
≪私に祈れと、言っているのよ≫

かなり序盤のやりとりですれ違っているけど、村正は最初から景明という仕手をどう救うか考えていた。そして奈良原氏が、景明という存在に唯一置くことを許したのが村正だった。景明の罪を共に背負う村正だけが、景明と同じ立場に居て一緒に苦しめる。だからこそ景明は村正を愛し、村正も景明を愛した。村正が居るだけ、景明は幸せ者だと思えてならない。徹底的にいじめるなら、そしてこれがエロゲじゃなければ、村正は女の子でも無く初代村正だったかもしれん。やだな、ジジイの劔冑とか……いや、ジジイが嫌なんじゃなくあのジジイが嫌なんだ。
あと村正が居なければ、いくらなんでもドMな景明でも狂っていたように思う。そして性帝景明が、割りと優しいセックスしてたのが村正だけだったっていうのが……この特別な女感、ものすごい。他のキャラだって同じ処女なのに、一条には5発も御見舞して、香奈枝さんにはけだもののように襲い、村正には苦痛を取り除くように優しく指示する。一体何だってんだこの差は。愛の差か。悲しい。

でも三世村正自身については善悪相殺の理を理解していながらも、なんだかその意識が薄いと言うか。でもこの普通さが他のキャラには無くて、その点で他のキャラとは一線を画していた。自分たちの罪を自覚しながらも、それを放り出して静かなところで暮らそうと逃避を提案するところも、覚悟が足りない。人を殺しておきながら、景明を許そうとしているところがまた……そして景明も愛した女にそんなことを言われてしまっては全てを放り出してそれにすがってしまいたくなるのもわかる。わかるが、駄目だ。最後の最後で善悪相殺の悪鬼となることを選んだ景明は、村正への愛を投げ捨てたも同然で、そこには信頼しか無くなってしまったけど、それはある意味最高の信頼だから、それはもうそれで良いんじゃないでしょうか。村正も最後の最後で景明がそちらを選んだことで、それを理解してしまったんだろうなあ。むしろ最後に雪車町を殺して村正への愛が証明される方が、好いた男女同士的な意味では幸福だったのかも。そちらのほうが村正もなんだか嬉しそうだったように見えた。
自分は景明は断罪されるべきだと思っているし、苦しむべきだと思っている。そのぐらい許されないことをしたのに、村正との信頼関係と村正という存在を与えられて居るのだから、まだ立場的には良い方な気がする。

でもぶっちゃけ蜘蛛姿の方が可愛かった。村正の過去を知った景明が、歩み寄ろうとして、探索を終えた村正の汚れを取ろうとして「さわらないでーー!およめにいけないー!おかーさーん!」とか言ってたのは可愛かった。アレが蜘蛛姿ってところに本編景明同様、私も変な性癖に目覚めそうでしたぞ。


●湊斗光
最後まで理解できないままだったが、理解できなくてもまあいいんじゃないか、という結論に落ち着いた。
そもそも彼女が父親を求めるのが理解出来なかった。父親と兄は何が違うんだろうか?兄として慕うことができるのに、父として慕うことができないのは一体どんな違いがあるというんだ。父として愛するのと、兄として愛するのの違いはなんだって言うんだろう。どちらも家族としての愛情には変わりないのに。自分には父も兄も居るけれど、居るからこそ、そこが理解できなくて困ったもんだった。光がそこ一点で、そこを原点としてこだわるから、自分も理解するのを半ば諦めていた……そして最後まで理解出来なかった。これが、恋人として他人として愛してほしかったっていうんだったらまだわかるんだけどなあ……。そばにいて、自分を愛してくれるのにこれ以上何をまだ望むんだと思うと、無邪気に悪行を重ねる光とは違うところで、光というキャラクターを好きにはなれなかった。あと、光のような人間なら、「自分さえ認めれば、そんな他人が与える形式などどうでもいい!」って言いそうなのに、最後までそこにこだわったのもよくわからない。
色々言ったけど、自分はただ単純に光を一番に愛して欲しかっただけなんじゃないかと思っている。一番愛している人から父親という立場を奪い、おそらく統を慕っていたであろう景明の一番の想いも奪われて、母親を憎んでいたと考えるほうがしっくり来る。色んな人に嫉妬していたのもそう考えれば理由が付くし。というわけで、「おれを一番に愛してほしいからおれ以外の世界を壊す」って言ってもらったら、そういうめちゃくちゃ迷惑なやつが大好きな自分としては光が一番好きになった可能性があったのにな。勿体無い。父親っていう建前は必要だったんかな、光が自身の思いに気づいていなかったと言われてしまえばそれまでだけど。

あともう一つ好み的な理由で光のことが好きではないのが、強さが振り切れすぎてること。要するにスペック盛られすぎてて、バトルものとして見たときに、あまりにも強さのメーターが振り切れすぎているのが好きではない。江ノ島の位置変えられるぐらいの強さを持っていて、かつ生身の人間に精神汚染できて、自分の分身である卵を武者に植え付ける事が出来る。この時点で強さのパラメーターが無茶苦茶だけど、復讐編までの強さならまだ納得できた。無理やり納得させてたっていうのが一番近い正解だけど。
でも魔王編でブラックホール作り出したときには強さの『次元』ではなく『種類』が違いすぎてめちゃくちゃ冷めた。その時点で光への『勝てるかどうか』っていうバトルものとしての楽しみは失われた。宇宙で戦ってたのにはもう何がなんだか。
立ち向かうときの巨大な壁、例えば序盤での六波羅のような、あまりにも強大な強さへの戦いは理解できる。戦っても勝てない『同じ土俵』の強さは燃えるし理解できるけど、ブラックホールや宇宙とか神とかは種類が違い過ぎてて急速冷凍レベルで私の気持ちが冷めた。
あとあの神様はファフナー思い出したのは私だけじゃないはず……いや長坂さんとかではなく……ていうか長坂さん本当に蛇足だった。あんな無理に伏線回収しなくても、と笑いながら見ていた。
ただ最後の決戦の、魔剣装甲悪鬼で景明の命によって光への愛情を示すシーンはジーンと来た。破壊された銀星号の頭部から髪の毛が漏れて涙に見える演出も良い。そこで光も納得して愛を受けていたのだから、やっぱ一番に愛情が欲しいという壮大な駄々こねだったのだと。壮大過ぎて迷惑極まりない家族喧嘩だった。だから自分は光とどう向き合うかとかどう戦うか、よりも善悪相殺で悩む景明の方が好きだったし、それがテーマに描かれていたんだとも感じている。

自分がほしいもののために世界を壊すっていうのはまだ良いと思えるんだけど、精神汚染については一対一でないし『卑怯』っていう思いが拭えない。潰すならちゃんと戦って潰して欲しい。自分の意志も何も失くした状態で、それが武のなんたるかとか言えるのか……。汚染されるような精神なのが悪いと言われれば、素っ裸で武器も持ってない人間に鎧着込んだ人間が戦いを挑むって卑怯じゃないのか?止めは魔王編で景明を精神汚染しようとして、全て片付いた後に元に戻すか、みたいなことを語られた時。自分に時間が無いからああ言ったのかもしれんが、一時的にでも意志を消すのは邪道じゃないんすかねえ。
そんな彼女が武とは何かとか語るのは正直ちゃんちゃらおかしいのでは無いかと憤りも感じたし、それなら遊佐童心の方がまだ真っ直ぐ道を進んでいたし好ましかった。


以下よりサブキャラ感想。いやあたくさんの外道たちがでてきたなあ。そしてそれが不思議にも嫌いになれなかった。嫌いになれなかったどころかむしろ好きになれたのは自分が怖くなった。いや、実際近くに居たら全力で逃げるような人たちばっかだったけど。

●雪車町一蔵
第一印象は、うわ……なんかやたらと声が良いキモいキャラクターが居る……だったのに、雪車町が景明にブチ切れるシーンで印象が逆転して、雪車町さんの仰る通りです!そうですよね!コイツなに腑抜けたこと言ってんだって感じっすよね!って思ってしまったのは我が事ながら笑った。そして最後の最後まで雪車町は景明の中途半端な行いを、許さずに居てくれた。このジジイが居なかったら、私はもっと景明にフラストレーション溜まってたのではないかと思うぐらい。
雪車町の良さは、『一生懸命生きていれば善人でも悪人でも好ましい』って言う、いいないいな人間っていいなを極めまくってるところ。ただし、そんな一生懸命生きてる人を『やりたくないって調子で泣きながら殺した』景明を許さなかった。私個人としても、やるなら突っ切って、自分が選択したから殺すっていう思いでなければ、本当に意味がなくなると思っていたので、雪車町はある意味私の代弁者だった。でも、雪車町と一緒ってなんかヤだな……笑い方が……いや、笑い方自体は面白くて結構好きだけど、一緒なのはなんかやだ……。
悪鬼編でいざこれから逃避行すっぞってところで、景明の希望である村正をグッサリしたのは正直、『待ってました!』。そこで最終決戦で、自分の命を賭してでも景明に選択させようとしたシーンは正直心震わされる物があった。雪車町は最後の最後まで、景明の腑抜けを許さない。ここで殺してしまったら、善悪相殺の理で村正を失うのもたまらない。殺さずに、悪鬼としての道を選択する景明が『やりたくないけど殺す』ではなく『やりたいから殺す』を決意することで、雪車町同様私も景明を鬱陶しく思う気持ちも失せた。あまりにも雪車町と同調してて怖くなった。
一生懸命に生きる人間になった景明はもはや雪車町が許さない対象ではなくなって、「あいつはもう……どこにでもいる悪党だァ」って言い切るのも、クッソ雪車町格好いいぞ……って思ってしまう自分が居るのを否定できない……。自分に確固たる信念を持っているキャラクターを私は憎めない……。
最後の最後で景明が決断して蝦夷の姉妹を殺したのは泣いていたのではなく、嗤っていたっていうのも、景明がここまで景明として居たものまでも取捨選択した気で寂しさもあったけれど、それよりも景明がついに選択した清々しさのほうが上回った。そしてそれをさせたのが、光でも村正でも一条でも香奈枝さんでもなく、そこらのチンピラヤクザの雪車町というのだから、なんとも萌える……萌えるシーンじゃないのに。でもこの時点で雪車町と景明はお互いが特別じゃあ無くなったんだよな、と思うと、そういう意味では実に惜しい。
あ、演じられた中の方は楽しそうに演じられていて私も楽しかったです。雪車町の笑い方に特徴をもたせたイケメンボイスな演技力が素晴らしい。


●菊地明堯
オメーが悪い。と、言いたい。この人にも表に出てこない苦悩があったのかもしれないが。景明の良き理解者な振りして、景明に全てを背負わせている傍観者。光の父親であることも放棄し、湊斗家の責務も景明に押し付け、あまつさえ無理やり統と性交させるのを了承した。どんな理由であれ、コイツがそれを止めていれば悲劇は始まらなかったと思うと、眉をしかめずには居られなかった。更に腹が立ったのは、復讐編と悪鬼編で親王と一緒に景明の罪を断罪しないといった事。身近に居て景明の苦しみや『仕方のないことだったこと』と理解しているから言っていることはわかるけども、だからこそ無慈悲に手折られてしまった命に対する罪は断罪すべきだと思った。あの時の景明の絶望は、よく理解できた。生きて景明が幸せになることが自分が景明にしてあげられることだと思ってんだろうが、それこそが真面目に罪を背負おうとした景明に対しての裏切りに他ならない。
そして景明はこの人に家族として迎えて貰った恩があるから、まったくもって菊池のことを憎んだり恨んだりしてないのが、あーーーもう。卑怯な立場な人だな、本当に。ぶっちゃけ香奈枝さんに殺された時は、当然の結末だと感じていたけど、それがさらに物語を面白くさせるのもまたなんだか不思議。
ちなみに光の父親はこの人でないってことはすぐに察せられた。そもそも光が景明に固執してる時点で明白。


●湊斗統
かなり切羽詰まってるときにそれでも『殺しちゃいけないよ』って言ってああいう結末だった辺り、どうしようもなんないなと思った。このひとの武は否定はしないけれども、かといえやっぱり肯定できるかと言ったら……うーん。光がああいうふうに育った辺り、統さんが必ずしも自分が信じる道を子どもたちに教えられたってわけでもなく、むしろ真逆に進んでいるのはそれこそホント皮肉だ。
いわゆる主人公の『過去の女』でその威力は強力で絶大と決まっている。一条、香奈枝さん、光と次々と主要な女たちを薙ぎ払い勝ち上がったのが普通の女の子三世村正ってんだから笑える……いや笑えないか……。統さんの教育があってこその景明だったけど、そのせいで景明は狂うことも許されずずっと悩み苦しむことになる。ある意味、景明に善悪相殺とはまた違った呪いをかけた人だなと思った。景明は愛した女に呪いかけられる義務でもあるんでしょうかね、本人は望んで無さそうだけど。


●大鳥獅子吼
私が装甲悪鬼村正で一番萌えたキャラです。香奈枝さんは好きだけど、萌えとはまた違う。でも獅子吼も香奈枝さんに迫る勢いで好きなキャラクター。
ああ、もう、ほんと、無茶苦茶格好良かったぞーーーー!!(青空に向かって大きく) 以下に私を獅子吼萌えに叩き落とした台詞を記載します。

「命運尽きたか。だから、どうした。俺は最後までやる……。諦めはせん。後悔もせん。そんなことは死んだ後にやっても間に合う。生きている間は、戦い戦い戦い勝つ――それだけだ!!」

六波羅が攻めこまれ、本当にどうしようもない状況になった時の獅子吼の独白。この台詞一つでまさか獅子吼に叩き落されるとは思って無くて、ときめくとは思って無くて、不意打ち過ぎて、息が苦しいです。この前座に、撤退を薦める部下たちを鼓舞する台詞がある。自分たちが戦って叩き落とした敵が、窮地に陥った時家臣を捨てて逃げて降伏したか?と、地上には殿下と鎌倉の民が居るとそれでもそれを捨てるのかと……この前座を含めて、部下を見送った後にこの台詞、これで惚れずには居られまい……。そして見事六波羅のために散る結末を含めて、このシーンは本当に、痛烈に胸に刻まれた。居ないと思うけどもこの感想を読んでいてかつ村正未プレイでかつこの台詞にときめいたお方が億が一いらっしゃったら、私がこの台詞にたどり着くまでに50時間はかかったことを記しておきたい。覚悟して挑まれよ。
ちなみにこの数年前に香奈枝さんを守ると誓った純真無垢な獅子吼が居たことも含めてまるごと美味しくてたまらない!殺し、殺され、泥流にのまれてもそれでも這い上がってきた大鳥獅子吼という人間は本当に愛おしかった。あ、香奈枝さんの妹である花枝も私の好みをマシンガンのように打ち抜きまくった。獅子吼にうんこうんこ言ってる気の強さも美味しかったし、あの香奈枝さんを手玉に取ってる姉妹のやり取りは楽しすぎた。一瞬で終わってしまうシーンなのが本当に悔やまれる。さよも含めて大鳥家は私の好物詰め合わせで、全部が全部美味しかった……美味しかったなあ……。そして血が繋がってると匂わされた景明との兄弟関係も含めて美味しかったな、景明の勧誘に失敗するしょんぼり獅子吼も可愛かったぞ……。しかし生き方が違うだけでこんなにも性格が違う兄弟が出来上がるものなのだなと。敵わぬ夢だと思いつつも、兄弟と判明するシーンが見たかった。
いつも私はギャルゲーで格好いい男キャラクターに出会ったら乙女ゲーに勧誘するけども、この人は誘えないなーと思った。ニトロプラスから出てしまっては獅子吼は獅子吼でなくなる。それは駄目だ。絶対ダメだ、美味しくない。でも解決法が一つだけある……ニトロプラスが乙女ゲー作れば良いんだよ!筋のあるイケメン外道、お待ちしておりまする!


●遊佐童心
この外道!いかにも!のシーンは思わず笑ってしまった。いやあ愉快愉快……やられた方はたまったもんじゃないけど、公開セックスシーンのみにおいては童心さんもちんこ晒してるからある意味イーブンとちゃいます?あのこれぞ童心!っていうシーンで私が思ってたことは、この人部下たちの前でも堂々とちんこ晒してて、男優の素質あるんじゃないか……だった。……疲れていたんだろう、きっと。
その行動理念は「やりたいからする」でこんな自分の気持ちにまっすぐな人いる?ってぐらい真っ直ぐなキャラクターだった。景明にはほんのちょっとだけ見習って欲しいぐらい悩むことは一切しない人だった。善行も、悪行も、したいからする。でもそこに全くの矛盾は無い気がする。だってしたいのだものな。良いことも悪いこともしたいのだものな。桜子の父兄のシーンは確かに強烈に萎えたけど、結局は童心のことを憎めなかった。雪車町の項でも記載したけど、自分、確固たる信念を持っているキャラクターは憎めないんだ……かといえ好きと言えるかどうかは、この人は悪行がすぎるけど。
童心の賢いところは、それが許される立場なところをちゃんと見極めているところ。そして人を見る目にむちゃくちゃ長けている。一条の弱点も見抜き、茶々丸の悩みも見抜き、景明の悩みも見抜く。それがどれも一瞬のやり取りなのだから凄い。立ち回りも完璧だし、魔王編終盤の光に戦いを挑むシーンで武人としての覚悟も見られるから最後の最後まで憎めなかった。
劔冑はガメラ。ゴジラよりガメラ派な自分が言う、アレはガメラだった……。でもガメラは優しい怪獣なので、やっぱガメラじゃない。いやでも劔冑自体はいい子なのかもしれない、だったらガメラ。亀=男性器を想起させられるし、なにからなにまで『らしい』、突き抜けたキャラだったなあ。


●今川雷蝶
六波羅はほんっと魅力的なキャラたちばかりだった。序盤で、六波羅最低だな!って思わせておきながら、後に六波羅に感情移入させるシーンを多量に持ってくるのは、読者にも善悪相殺の理を理解させるようで居て読んでいて唸ることが出来た。
それはそうと雷蝶さんはTHE、CV杉崎和哉。初登場時、あー杉崎和哉っぽいって思ったら本当に杉崎和哉で笑った。叫び声がおなじみのシャウトでもう聞くのも楽しい楽しい。そのイロモノおバカキャラクターも含めて可愛いキャラだった、六波羅のオアシス。そしてこんなイロモノなナリして、六波羅一の武人だって所も良い。でもその六波羅一の武人は戦闘シーンが悉く省かれていて、ぶっちゃけるとなんか色々長ったらしく出てきた武術解説省いて雷蝶さんの戦闘のほうが見たかった。麿のモーニングビューティータイムも一回こっきりとか、こんな魅力的なキャラクターなのに、こんな使われ方……もったいなさすぎる。せめて戦闘シーンは一回でも良いから見たかった。


●クライブ・キャノン
六波羅ばっかり語ったのでなんか統一性ないなと思ってGHQ側も語るが、香奈枝さん以外のGHQはなあ……部下にも上司にも恵まれなかった人、に尽きる。部下は部下で白人主義を表に出しすぎてるし(TPOを考えて態度を変えたり誤魔化すことをしない、一条に似た愚直さ)、上司は上司で怪しすぎる教授にぞっこんになってしまうアホさ。この人一人が聡明でも、周りが敵ばかりだとそれではやっていけないのだった……。香奈枝さんはそもそも部下でもなんでもなかったし。
結構色々考えて、苦労して立ち回ってたこういう聡明なキャラの最期があっさりだったのは、村正という作品らしいなあ。


●新田雄飛、来栖野小夏、稲城忠保
まだ始めたばかりの頃、希望を抱いていた主人公が悪堕ちする話なのかな??って思ってた頃がもはや懐かしい。途中から景明出てきて違ったことに気づいたけど。『善悪相殺』という言葉で雄飛の結末をなんとなく察してしまって、1章ラストの村正と雄飛の影スチルで、くるでえくるでえ……で心の総員退避してたからまだダメージ防げた。それでも私にものすごくふかーい傷を与えた。彼は応援したくなる要素ありすぎるから、たった一章しか出てこないキャラなのに感情移入させまくられたのは奈良原氏の落とし穴、通称奈落の底。生まれる作品を間違えなかったら、彼は主人公として色んな女の子を選べたんだろう。気の強い許嫁、気の強い幼馴染、気の強い友人、殺人狂の従姉……ろくなの居なかった……。教えてもらったところに寄ると、発表当初は公式HPで雄飛が主人公で景明が脇役だと勘違いする演出だったとか。それを聞いて、騙されたかったと思った。あのラストのシーンを心の総員退避なんてせずに思いっきり食らってしまいたかった……そうすることでより装甲悪鬼村正という作品を楽しめただろうに。
小夏に関しては、最初のエロシーンで四肢切断に処女喪失におまけに小便ぶっかけで私の肝が急速冷凍でここで凄いダメージ食らってた。雄飛はまだ覚悟が出来たから良いけど、小夏はまさかここまでやられるとは思わなかったので。でもここから物語に惹かれていったので、なんとも言えない。そんな小夏に幸せになって欲しいと思っていたらまさか復讐編で復讐者として戻ってこられてもう卒倒しそうだったっす。景明が「なんか聞いたことがあるような声」だと言っていて、注意して聞いて、まさか、と思って最後に正体が判明するシーンで、ここまでやるのか奈良原!という気持ちとやってくれたな奈良原!と言う気持ちと。雄飛を失ったのだと知った小夏の感情は胸に刺さったまま消えない。雄飛がいれば、きっと、立ち直っただろうに。雄飛もきっと小夏の事が好きだったのだろうと思うと……思うと……正義を願わざるをえない一条の気持ちもよく分かる。
忠保についても魔王編で再登場するとは思わなかった。それも小夏とは違う、復讐をも乗り越えた立場として。そして出会ったのが、直接の原因である村正というのが。これが景明でない所もポイントっぽい。忠保はもともと聡明な子っぽいし、小夏が復讐者で忠保が乗り越えた側っていうのはよくわかった。しかし忠保も忠保で親友の処女を無理やり奪ってしまった傷はあるだろうになあ。自分は性別が同じ分小夏の気持ちのほうがよく分かるが、忠保も忠保で失ったものが大きすぎる。あとは私がみんなまとめて脳内で幸せにしてやろうと思う……。
ちなみに鈴川については一条の父同様、色々長々と御託並べてたけど気色の悪いオナニー押し付けんじゃねえ!って思いながら見ていた。


●風魔小太郎
コイツじゃなくて長坂や弥源太について語るべきなんだろうけど、あの二人に関しては昔に女を争った人たち、で感想が終わる。
でもこのキャラは面白い、まず可愛いボインな姉ちゃんの立ち絵にジジイの声が出る。音声バグが多かったので、これもバグかと思って再起動してもジジイの声が流れるので、公式サイトで確認したらこれは間違いなく演出の一つだった。最初はそのミスマッチさが慣れなかったし、脳内で勝手に『変化の術で声だけ変わったおとぼけ忍者』っていう設定が追加されていた。それでも中盤からこのミスマッチさがクセになって、喋りの遅いジジイのボイスを飛ばせなくなり、無残にもプレイ時間は延びた。
シナリオとはまた違った、キャラの好みともまた違う、演出の面白さで私を虜にしてくれたジジイだった……ジジイだよね?


●皇路卓、操
父娘関係が実は兄弟でしたってのは、景明と光の関係の伏線だったと気づいた時は唸った。
この作品で一番エロかったのが操とスポンサーの社長たちとの乱交。中の人の演技のエロさもあってよかった。自分はあれは和姦だと思っている。卓に矯正されたことだったら腹も立ったんだろうけど、操が覚悟の上で受け入れているので。ちなみに暗転のままエロシーンに入るので、『実はマッサージしてましたとかそんなオチ?』って思ったら全然そんなこともなかった。そんなところまでも村正だった。暗転からのエロスチルどーんでそこでもまたビビった。でも小夏のエロシーンと違ってダメージも無く、エロシーンとして普通に楽しんでしまった……。
ちなみに『翼をください』は、口上の代わりなんだろうけど寒かった……他の中二病的なシーンは大丈夫だったのに、なんでか。



争いを求めて始めた私に、争いとはなんということかを懇懇と描いてくれた。期待したものが得られて本当に大満足。
この作品で語られていた正義や悪や善悪相殺が、必ずしもそうであると頷くことは私には出来ないけれど、キャラたちが悩み、考え、選択し、自分の選んだ道を各々苦しみながらも進む様子は見ていて胸に残すものがあった。また一つ心に残った作品に出会えたことに感謝です。この作品を薦めて下さった方々にも感謝を。

自分はハッピーエンド大好き人間で、読み手に解釈を委ねるような展開は全部脳内で超大団円展開を採用してハッピーエンドにするけれど、それはどうにもならなくなるEDやBADEDが嫌いというわけではなく。むしろBADEDも好きな方で、過程をしっかり描いていて、それが貫き通されていれば納得できる。そそして村正が描いた結末は(始まりでもあったけれど)、到底ハッピーエンドとはいえないものだったけど、どのEDも自分の中で噛み砕いてちゃんと味わって飲み込めたのがとても嬉しい。どれも記憶にも心にも残るエンディングだった。ちなみにどれもBADEDだとも思えない。

プレイ前は鬱屈で鬱屈で……とにかく鬱屈なシナリオなんだろうと思っていたけど、思っていたよりも意外とユーモアが効いていて、そのおちゃめなユーモアが自分の好みに上手くマッチした。あとちゃんと『エロゲー』していたのが始めの頃は驚いたなあ。もっと固っくるしい作品だと思っていた。
あと善悪相殺について、物語を読む前は「ぜんあくそうさい」と読んでいたけど、これは正解が「そうさつ」で、そうさいとそうさつは意味がちゃんと違うことは勉強になりました。「そうさい」は打ち消し合うこと、「そうさつ」は殺し合うこと、だそうです。

最後に、これだけの長さの作品を、システムの使い勝手等々は抜きにして、演出諸々一切手を抜かずに世に送り出したニトロプラスにアッパレです。十周年記念に相応しい良い作品でした。途中でニトプラの過去作のキャラがわんさか出てきて、スマガが村正よりも前の作品だったことに衝撃を受けたりしつつもあのシーンは笑ってしまった。
出来れば、二十周年記念作品もこのような『ニトロプラスらしい』作品であって欲しいものです。そしてその時に奈良原氏が戻ってくるんでしょ……そうでしょ……?

この感想を二十周年のときにまた振り返って読むことを、我がことながら楽しみにしています。
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