全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

07 2017

図書室のネヴァジスタ 感想

痛みと苦しみと不幸を鍋にぶっ込んで因果で煮込んだような物語だった。


図書室のネヴァジスタ - 図書室のネヴァジスタ(タース・エンターテインメント)

公式で謎解き学園サスペンスADVって解説されているけど、謎解きや学園サスペンスに重きが置かれているわけではなく、各々の状況と心理状態とキャラたちの関係性がひたすら重かった。確かに謎もあるし、話を追っていって紐解くようなストーリーではあったけれど、これはキャラクターたちが苦しんでるのを一緒に苦しんで痛んで考える話だった。

そして私はと言うと、痛みきれなかったのであった……。


意外だったのは、BLでは無かった事。プレイ前はてっきりBLなのかと思っていたけれど、そういう展開は本当に一部で、しかもBL的扱いではない。性問題も男女という存在があってこそ捻れて拗れて行く話だった。作中の女性陣は一部を除きほぼ空気だったけど、男子校が舞台じゃなかったらもっと酷いことなっていた気がするので、事態がこれ以上ひどくならない的な意味でこれはまだ良かった状況だったのか……とプレイし終えた今思った。
理由は後々語るけど、自分はこの作品を高校生の頃にプレイしたかった。大人になった今なら、どうしても大人側の視点で見てしまう。マッキーとか賢太郎とかに対して私がそれほど悪い印象を抱かなかったのはそのせいだろうと。あの年代の頃を考えたり思い出したりする話だったから、高校生の時にプレイして大人になってまたプレイしたら違った視点に気づけて面白そうだなと。


以下よりネタバレ感想です。上で語ったとおりネタバレがこの作品の魅力を大きく削ぐわけでは無さそうだけど、事実を知った時のどうしようもなさに眉を顰めるのもこの物語の面白さであるとも思ったので。
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読んでいて傷は負ったが、痛みきれなかった。これは感情移入出来なかったというわけではなく、この作品の表現方法が大きく影響した。
心理描写が少なめで、物語は大体短文で表現される。映画の字幕みたいな感じで。例えば、
「うん、そっか…」(クリック)
「じゃあさ」(クリック)
「こうしようか」(クリック)
みたいな感じ。ちなみに上のは私が書いた例だけど、全部同じキャラが喋ったと想定して書いた。これが最後まで続くのは正直私の人差し指が悲鳴があげすぎて喉が枯れてくるレベルでやばい。しょうがないのでオートモードにしたけど、最速でもまだ遅いレベルで、やはりしょうがないので人差し指と中指でマウスホイールくるくるしていたけど今度は中指が意識を失いそうになったので、マウスを両手で抱えながら両手の親指で交互にくるくるしている。こんなに指が鍛えられるゲームだと思わなかった。
この短文のクリック量は演出の一つなんだろうけど、それならもっとシステム快適にしてほしかったなあと。なかなかのシナリオ量なのでその辺りはもうちっと自由に設定させて欲しかった。オートモードの速度選択も5つしかない。
そして誰が喋ってるのかわかりづらい。主人公には色の表現がほんのりされているが、それ以外は皆同じ感じで、一対一の会話ならまだわかるが、一対複数だと本当に分かりづらくて、細かい部分ではあるけれど、こういう部分でも感情移入を阻まれていた気がする。

あとシナリオ量が多かったけれど、本当に必要な量だったかと言うと余分なものが多かった気がする。沈黙表現も多すぎる。正直言うと中盤は飽きとの闘いでそういう意味で辛かった。終盤にかけてジェットコースターが如く状況が展開され謎が明かされていくのでそこは夢中になって読めたけれど。
あと上記のような短文で表現されるため、状況がわかりにくい。そして視点が2つあって時折入れ替わるため、時系列もよくわけがわからなかった。「二週間先生を無視した」みたいに文章で語られることもあるけれど、その二週間がいつのどの二週間なのか表現されることがあまりなかった。
余分をもっと少なくして心理描写なりなんなりの重さがあるところをもっと重く表現していたら、きっと私は膝から崩れ落ちて引きずるぐらいダメージを負えただろうになと思うと、本当に惜しかった。惜しい作品で終わってしまったのが悔しいと思うぐらいには、読めてよかったと思えていたんだろうと。自分は結構この物語が気に入っていたようです。登場人物みんなどうしようもない人ばっかだけれども。

そんな感じで痛みきれはしなかったけど、痛まなかったわけではない。
簡潔に言えば、末代まで呪ってやるをやり遂げた話なんだけど、それぞれのキャラが過ちを犯してなお痛みや苦しみを負っていて、単純にどのキャラも「悪」だと言えないところは色々考えさせられて良かった。これは人によって感想が違ってくるだろうと読んでいて思った。子供だから許されることと、大人だから許されないだろうっていう判断が、読んでいてきっと混ざっていく。でも自分は子供だからって許されないこともあるし、大人だからって全部許されないのは如何なもんかと読んでいて思った。これは私が大人だからかもしれないが。なのでこの話を読んでいる年代で、感じることは大きく違ってくるのかもしれない。
上記でも語ったけど、出来れば高校生の時にプレイして、大人になってからまた読んでみたいと思える話だった。


以下よりキャラ感想。いやーーー……酷い、もっとみんな楽に生きてくれ。いやでも楽すぎられても困るから、適度に肩の力を抜いて生きてくれ。どいつもこいつも息継ぎしてないんじゃないかってぐらい自分を苦しめていた。自分で息を止めすぎ。みんなちゃんと深呼吸して。あともうちょっとまともな人間呼んできてください。大人でも子供でもいいから、普通の視点を持った人を連れてきてくれ。


・久保谷瞠
神波の復讐の道具にされた、誰かに愛されたかっただけの男の子。でも幽霊棟のキャラクターたちは皆自分だけを愛して欲しかっただけのメンツだからなあ……マッキーの身体は一つだし、マッキーはそもそも年下を依存させるっていう驚異的なステータスを持っているから幽霊棟の面々とは猛烈に相性が悪い。誰か一人に依存しまくるっていうのは、人間関係を必ずと言っていいほど破綻させるからだ。共依存関係で社会を生きていくのはとても難しい。
色んな人の顔色を伺いながら、神波の指示通りに動きつつ、それでも神波の言うことややることが全部正しいと思えなくなっていた。利用されているとわかっていながら、悪循環に陥るとわかっていながらも指示に従うしか無かった。生まれながらの孤独に加えて、自分を受け入れてくれたのが神波だけだという事実がまるで鎖のように瞠を縛り付け、解けなくさせて、抜け出したいのに抜け出せないのが描写として何度も繰り返されていたのは、読者側としてはクドくもあったけど、それでも理解できない痛みではなかった。瞠の生まれと境遇を考えれば、人を信じ切ることは難しいのはよく分かる。それでいて人に信じて欲しいとねだって居たのも分かるけど、人に信じてもらうには信じてもらうに足る言動をしなければならないもんだ。無条件で信じて欲しいなんて、そんな聖人のような人間はどこにも居ない。だからマッキーや周りの人間がそれを教えてあげられれば良かったのだけど、ただでさえ彼らを取り巻く人たちがアレなもんだから。
数あるBADENDの中で、清史郎が残した最終トラップである毒ワインを賢太郎の前で全部割って、自分の分だけ飲んで自殺するENDが、何故か心に引っかかっていた。瞠ルートは最初に通るルートなので、あのワインの意味もちんぷんかんぷんなまま進んで、ああとりあえずなんか悲しい結末に堕ちた……と思っていたけど、全部終えてあの時の瞠の真意を汲み取れた時、皆に幸せになって欲しい気持ちと自分だけ置いてけぼりにしてほしくない気持ちとでせめぎ合って、戦っても戦いきれなくて、どうしようもなくなったんだなと胸が痛んだ。
誰かにとっての一番は、普通に生きてても得ることは難しいもんだ。この一番は、変動するような一番ではなく動かない確かな一番なんだろうけど。でも瞠が皆を好きだったように、皆も瞠を好きだったんだろうし、『誰からも愛される』ぐらい欲張りな気持ちを持ってほしかった。瞠にはきっとその資質がある気がする。そういう問題でも無いことは分かっているが、神波一人にだけ愛されるなんて、もったいなさ過ぎる。


・茅晃弘
正直茅ルートは私にとっての戦いだった。茅VS私だった。茅の不憫な過去は同情もするし幸せになって欲しいとも思うけど、自分が過去に会った白峰が白峰ではなく瞠だったと気づいた時の白峰への態度が酷すぎた。お前は何を見てきたんじゃと。状況を理解していなかった白峰が、それでも茅を支えていた事実を無かったことにするなと。誰かに寄っかかりたかっただけなのは皆同じだけど、もうちょっと自分が与えて貰ったりしたものを自分の意志で感じて欲しかった。苦しい、辛いのはもちろん分かるが、でもその中で受けてきた優しさなり思いを信じられなくてどうする。あがいてもがいて居るのは分かるけど、それでも今まで支えて貰っていた事実までを否定されるのは辛かった。でもそれは、茅はすでに自分の意志すらも見失って居るからで、だからこそ病院に行く展開になったのは腑に落ちた。
マッキー対応かと思ったら賢太郎対応でそういう意味ではこのルートは面白かった。賢太郎が過去兄として弟にできなかったことを、茅という『弟の立場』な人間にしているのが、むちゃくちゃ皮肉だなー。清史郎にとって最後のワインが一番効いたのは茅なのかもしれない。
純粋だった兄弟が、大人に寄って狂わされていくのは本当に痛んだ。誰か一人だけでもまともな人が居れば、もしくは神波が立ち直れれば、そんなたらればばっかり考えてしまうけど、どのルートも徹底的に痛めつけるからこそ心に残る話だったんだとも。でも茅含め、茅の兄も、誰も彼も、戻ってこれない立場じゃ無いような気がした。


・白峰春人
終始楽しんだのは白峰ルート。白峰も白峰で自身の苦しみはあるけれど、他の面々よりは戦おうという意志が感じられる。
わけのわからないまま茅の重圧を受け止めざるを得なかった、何も言わずに受け止めた白峰の優しがこの作品の中では特に輝いていた気がした。あと茅が弟で、白峰が兄っていうのも、上手く組まれているなあと。
弟を置いて逃げたことで自責の念に駆られるのもわかるが、しょうがないと自分はやっぱりそう思ってしまう。自分の生命の危機に家族とは言え自分とは違う人間のことを考えられる余裕なんて、特に幼い頃だったら無いだろう。ただ周りが「しょうがない」といったって、白峰自身がそれを受け入れられないのもよくわかった。自分が違う行動をしていたら自分の大事な人が助かったのだとしたら、後悔するのは当然で、きっと周りの言葉は慰めにもならないだろう。
あと、割りと監禁に対して意識が軽かった幽霊棟の生徒の中でも、白峰はその重さを理解して、そしてそれが最悪の結末を迎えてしまうエンディングも良かった。良かったと評するのも如何なもんかとは思うけど、それが一番重さを理解していた白峰ルートでされたっていうのが、どうしようもなさをこれまでになく表現されていたように感じられて。あと賢太郎も兄だから、兄の立場同士でつながっていたのもこれまた上手い組み合わせだなと。
ああ、あと清史郎、鉄平、白峰の組み合わせはめっちゃほっこりしました。あの三人の組み合わせがめちゃめちゃ好きで、もっと見ていたかったなあ。巡り合わせがよかったら、もっと違う結末に落ちたんだろうと思うと悔やまれる。ほんと悔やまれる。誰でもいいから救世主来いと願いながらプレイしていた。もちろん来るはずもなく。
ただ一つ理解できなかったのは、あんなに殺そうとしていた弟の仇を、わりとあっさり引き下がったこと。白峰も心のどこかでそうしたくない気持ちは会ったんだろうけど、あまりにもすぐ引き下がったのでちょっと眉をひそめた。


・和泉咲
生まれからしてハードモードなのは皆そうなんだけど、咲に関しては特に不憫過ぎる。自分の姉の立場だった人が母親で、父親がその姉の実の父って。神波の悪意がこれまでとなく発揮されていた……いや、全編悪意だらけだったんだけど。でも全部知った後に和泉父は何もして無いってのが分かるから本当に不憫だ。娘である花(姉)の幸せを願っていた父親が、和泉家の幸福が、神波の悪意に寄って捻じ曲げられていく様子は猛烈に気分を悪くさせられて良かった。でも神波が捻じ曲げなければ咲が生まれていなかったと分かるから、なおさら咲の存在は不憫で仕方がない。せっかく生まれたのだから、幸福に生きて欲しいなんて、自分は正直言って単純な考え方しかできないが、当事者である咲はそうとも言えないだろう。それで咲がオエオエ吐いて苦しんでも、支えるべき人が両足でちゃんと立てている人ではないから、皆してグラグラしてる。崩れる時は皆崩れる。悲しい連鎖。
ツバメの流れも良かった。上手い伏線だとは思わなかったけど、獣医師がちゃんとした大人なのがこれまた皮肉だなと思った。『死んでくのを放おっておくのも自然保護』だけど、自分に重ねた瞬間から咲はツバメを手放せなくなってしまう。でもちゃんと飼って育てるわけではない。咲が自分自身を大切にしなかったように。そして弱っていたツバメは死んで、咲もどうしようもなくなっていく。死んだことを獣医師に報告して「ヤジを飛ばされたい」と言った時の「一緒に来てた先生に進路希望にそう書いて提出してごらんよ」ってセリフが、良いお医者だんだなあと……どこで感動してるんだ。これは突き放した言葉なんではなく、自分の役目はそれじゃないっていう大人なセリフなんだと気づいた時、やっぱり自分は大人側なんだなと。安易な優しさを与えないまともな大人に出会えたと思ってこのあたりのシーンで滅茶苦茶良い深呼吸してた。
マッキーが教師らしい行動をしてたのもこのルートだけだったような気がする。マッキー先生のドキドキ性授業も、上手く教えられるかなあとなぜだかハラハラしながら見ていた。ていうのもマッキー自身が咲に明確に教える事ができなくて、自分の元カノに聴いたり咲の関係者とバトルしたりして、マッキー自身が学んでいたのも楽しかった。安易に性交渉をすることの問題を語っておきながら、最後の最後で咲とセックスするBADENDがあるところが、マッキーの危うさだよなと。教えることよりも、寄り添おうとする気持ちが優先されるところがあるのが、マッキーが教師に向いていない要素の一つだと思った。これはマッキーの項で詳しく語ろうと思うけど。
でも、安易にセックスすることがいけないことだと本当にわかっていないのなら、咲はここまで苦しまなかったのではないかと思う。こんなに苦しんで、脱出したいと叫んでいるのに、分かっているのに抜け出せないから苦しんで居るのだと。自身のことをけだものだと、触られれば例え家族でも反応してしまうことに絶望していたけど、ちゃんと考えて、自分をコントロールして答えを出せられるように思えた。それを支えて教えてくれる人が居たら良かったんだけどね、ほんとね、マッキーさんよ……。(恨)


・辻村煉慈
辻村家も不幸の連鎖がすごかった。辻村父の過ちから始まり、その過ちを全く知らない子供が似たような過ちを犯す。それも父への愛からネジ曲がっていくのが切ない。誰かこのこんがらがりまくった紐解いてくれ……と頭を抱えながら見ていた。辻村父は過去の過ちから、自分の子供って時点でどう接することもできなかったんだろうが、それならセックスすんなって思うがそうするとレンジが生まれないっていう因果。辛い。
小説家なりに想像力を働かせて、古川鉄平のなりきりメールをマッキーに送っていた展開は笑った。当たり障りなくコントロールしてて上手い。さすが小説家。しかし、レンジもレンジでまともに育ててくれる人が居なかったからか、危うさを孕みながら成長して、それが最悪の形で爆発するのが悲惨。マッキーはそれに気付いていて指摘しなかったのが後々尾を引いてて、むしろもうマッキーを教育したかった。あとで進路指導室に来い、指導してやる。
レンジについては、「自分にされて嫌なことは人にしてもいけない」って基本的なことを最悪の形で知っていくルートだった。これで彼が『学んで』くれればいいのだけど、『知る』だけで終わってしまったような気がしないでもない。自分の叔父よりも先に自分が小説家になって、書くことを止めた叔父に対して「叔父貴も書けばいいのに」と笑って言ってしまえる。ちょっと考えれば分かるような感情を察することが出来ない。家庭や人生を壊された教師に対して、お前が悪いと笑って煽る。結果、叔父には自分の母親を奪われたことを知り、追いやった教師には自分が大切に思っていた存在を殺されかける。自分がした全ての事が自分に返って来て、苦しみを知るのが可哀想でもあった。これはきっと正しい形ではないと思いながら、どこかおかしい流れではないと感じる自分も居る。強弱はあれど、それがレンジが他人に与えた痛みでもあるからだ。もちろん、だからといってその叔父や元教師がした行いを認めるわけではない。人に苦しめられたからと言って、人を苦しめていいわけではない。それがまかり通ると、社会は社会で無くなるし、秩序も無くなる。
レンジルートで全ての答えが分かるのが、話に引き込まれて面白くもありつつ、育ってはいけない種の成長を見ているような感じで辛かった。


・御影清史郎
第二の神波誠二だと思った。それでも、全員に対して恨みが無いだけもっと酷いかも知れない。それだけ彼の絶望はすごかったのかもしれないが、大団円で万々歳っていう展開はちょっとふざけるなと思った。これは皆が壁を乗り越えてワインを飲んだ後ではなく、一周目が終わった時点で思った。皆が清史郎を信じて語ったことを、ぼかしたとは言え物語にして形に残した時点でもうぶん殴って進路指導室に呼びたかったし、人の人生を狂わせて置きながら、清史郎も辛かった寂しかったんだじゃあ仕方がないねで、裁きもお叱りも受けない展開は結構ムカムカした。悪側として描かれているサブキャラクターの命なら壊してもいいのか。こういうテーマだからこそ、清史郎含む幽霊棟の面々が何のお叱りも受けなかったのは正直最後まで納得がいかなかった。
もちろんこれは清史郎だけに言えたことでもないんだけど、悪いことをしたなら叱られ、それが法律に触れることなら罰せられる。それは教育の一種でもある。教師というキャラクターがいながら誰ひとりとしてそれを指導する立場な人間が居なかったのは、結構がっくり来た。これは彼らの物語ではあるけれど、では彼らと同じ世界で同じように苦しみながらも、それでも真っ当に生きている人間が居たら一体どうなるんだ。手を貸さなければ行けない存在は確かに居るだろうし、皆強くは在れないこともわかるけど、彼らがした過ちはちゃんと、しかるべき形で処分されるべきだと思った。私はご都合主義的にまとめるハッピーエンドは嫌いではないけど、こういう題材だからこそそこを有耶無耶にしないで真っ直ぐ描ききってほしかったなあ……という思いがやはり拭えない。最後まで子供に優しいだけの物語になってしまったのが、痛みきれなかった部分とは別の意味で悔やまれる。
清史郎については、これだけ行動力あるなら手紙ではなく会いに行けばよかったのでは?と。実際に行動に移して拒絶されるのが怖かったのかもしれないけど、おそらく兄が苦しんでいるのがわかっていて自分だけが痛いって言って、清史郎だけに告白した他人の痛みを別の他人にもらした時点で、救って上げて欲しいとは思ったけど同じぐらい無茶苦茶叱って欲しいとも思った。あれで賢太郎だけが悪者にされることに自分は最後まで納得が行かなかった。賢太郎を信じて裏切られたと思ったのなら、清史郎を信じた皆を裏切らないで欲しかった。
子供だから救われて、大人だから救われないのが耐えられないのは私がもう大人だからなのかもしれないが。子供だの大人だのどうだっていいので、救うべき『人』であるなら、誰に対しても手を差し伸べられる人になって欲しい。それって簡単なことではないとは思うけれど。


・槙原渉
こんなに教師に向いてない奴見たこと無い。教師になりたかったらしいが、教師になればいずれ担任を持つ。問題がある子にだけ手を差し伸べて、寄り添って慰めて、誰かの特別になった時点で他の生徒が不満を持つのは当然のこと。実際作中でも古川を特別視しすぎて、キャラクターたちから「結局古川を取るのか!」みたいなことを言われたときは、ほーら来たと思った。あと生徒に寄りそうのは教師の仕事じゃないし、救いを求めるべき存在も教師じゃないと思っている。もちろんいじめだの何だの、学校内で起こった出来事等では教師の仕事だとは思うが。こんな多感な時期を、勉学から家庭の事情からメンタル面から何から何まで全て教師に任せて教育するだなんて、マッキーはスーパーマンにでもなりたいのか?
中には親切で出来た教師もたくさんいるだろうけど、教師になって何十年と仕事をするのであれば、毎年一体何人の生徒を相手しなければならないと思っているんだろうマッキーは。一人ひとり寄り添ってたらマッキーの身体はいくつあっても足りない。そして教えることよりもまず寄り添うことを優先させることが結構あったが、教師なら順番は逆だと思う。だからマッキーの元カノが何度も「教師に向いてない」とか言っていたのは超頷いたし良い彼女だったんだなと思った。
しかしマッキーがダイ◯ン並の生徒吸引体質だからこそ話が展開していったので、マッキーが教師に向いている向いてないとは別に、このマッキーの性格は見ていて面白かった。でも誰も彼も救おうとして結局救えなくてマッキーも苦しんでいたのは、ぶっちゃけ身の程を知ったかコノヤローと思いながらも割りと楽しんで見ていた(本当は楽しむとはまた違う感情なような気がするんだけど、言語化するのが難しい)。手を差し伸べないのも残酷なことではあるけど、中途半端に手を差し伸べるのも残酷なことだ。それで生徒側もたくさん傷ついていたのは可哀想だった。
作中で「槇原はファミレスで働いても死に掛ける男だろ」と言われていたのには笑ったと同時に良い表現だと思った。教師という組み合わせは最悪だけど、マッキーがこういう誰かの特別になりたがる吸引体質(本人の意志とは関係なく)なだけで、どこに居ても危険。今回は特に巡り合わせが悪かったけど、マッキーが居なければここまで話が拗れることは無かったので、そういう意味では面白い存在だった。
ちなみに私の担任がマッキーだったら、好みはしないだろうな。でも今回は男子だったから良かったけど、女子だったらヤバかったのでは。マジで。
ぼんやり思ったけど、一応進学校で授業が出来る程度には優秀なんだろうなあ。


・津久居賢太郎
賢太郎ばっかり悪い悪い言われたのは可哀想だった。性質で言えばマッキーのほうが悪いと思うぞ。
幽霊棟と同じ年代の頃の賢太郎の痛みは救われないのに、幽霊棟の面々は子供だから救われるのはこの話の主題から逸れるからかもしれないけど、自分は皆救ってやってほしいタイプなので賢太郎も救って欲しいです。いきなり監禁されて殺されかけても戻ってきてまた監禁される、優しいのかトンチンカンなのかよくわからない男だぞ、もっと感謝されてもいいはずだ。
しかし賢太郎も週刊誌の記者という職業が向いてない。生徒たちの状況を見ていく内に、それに感化されている時点で、雑誌記者という並大抵の精神ではやっていけないような職業は絶対に向いていない。だからこそ古川を傷つけ、そこから広がって結局自分も傷ついているのが向いて無さの証左。この痛みについては自業自得だとは思った。ここで全くノーダメージだったら向いているんだろうけど。
しかし、マッキーといい神波といい津久居といい、その職業向いてない人たちばっかりだ。


・神波誠二
こんなにドツボにハマりまくってる奴久々に見た気がする。こいつの言葉一つでいろんなものが狂っていくのはある意味すごい技術なんじゃなかろうか。そんなに運命狂う?って言うぐらい他人の人生捻じ曲げていた。ある意味見事な手腕だ。
神波にとってどんな人間であろうと、母親は母親だったんだろうけど、その母親の言葉を信じて行動した結果、真実を見た後の描写があまりされなかったのはかなりの消化不良感。このゲーム、かなり大人側の描写が省かれているのはわざとなのだとは思うけど、どちらか惑わせる意味では両方同じぐらいの描写はやはり欲しかった。神波についても描写が足りなすぎて、神波の苦しみどうこうより『悪意』として描かれていたことに比重が置かれていたのは、どうなのかなと。
だからって何の罪もない子供たちまで巻き込んで悪意バラ撒きまくってたのはやっぱりいい気はしない。それでもボーナストラックで、神波自身もいい気はしてなかったのが、ドツボにはまってる感がしてそのどうしようもなさが苦しくて良かった。神波も救われて欲しい気持ちは無くはないけど、救われる前にもちろんガッツリ裁かれて欲しい。


・古川鉄平
浮浪者から整えた時の青年っぷりにやられた。滅茶苦茶好みのタイプだった。きっと優しい男の子だったろうし彼女も居たっぽい発言もしていたから、拠り所が他にあれば良かったんだけど、出会ったのが超絶依存体質マッキーだったのが運命だった……。そこから道外しまくっていったのはマッキーの罪のような気もするが、古川自身の罪でもあったと思う。これをマッキーだけのせいにすることは私には出来ない。だって例えどんなことであれ、古川自身が選んだことだから。これは神波にも言えることだけど、神波の言葉だけで神波だけのせいにすることも出来なかった。その重さは違うとは思うけれど。誘導されたかもしれないが、それは無理やり選ばされたのとは違うような気がした。何であれ、結局最後に選ぶのは自分自身だ。自分で選んで、考えた結果なのであれば、結局は自分の力でなんとかするしかない。もちろん誰かの力を借りたりすることも大事だとは思うけど。
出来れば鉄平も救ってほしかったけど、多分製作者側からしたら彼はもう二十歳を越えているし大人側な扱いなんだろう。それがこの結果なのは、ちょっと辛い。
携帯に残されてたボイスの演技は、ちょっと聴いてて寒かったので、もうちょっと上手い人を使うか、一切無くしてくれたほうが良かった。結構冷めた。

・和泉花
愛がー愛がー言ってて相手のこと全く考えて居ないのは、それは愛ではなく独りよがりというのでは。大人になりきれなかった人。でもそれはやっぱり生い立ちにも関係していたのだろうか。それを知ることも出来ないし、知ろうともあまり思わないけれど、不憫な人だなあと思った。きっとずっと何をしても満たされない人だと。果たして石野と一緒になったら満たされるのか……うーん。


・鳥沢唯
作中だれよりも普通の大人だった、ゆっこさん。ゆっこさんがマッキーを叱る度にもっと言ってやれオラァ!!って気持ちになった。あれは愛があるからこそ言える忠告だった。でもゆっこさんも生徒に彼氏を取られるのが辛かったんだろうなーと。その度にマッキーは一生残る傷を負うだろうし、心にも身体にも。それにゆっこさんが耐えられなかったのを責めることは出来ない。
新しい彼氏いるらしいが、きっとマッキーのことをまだ好きだろうから見捨てないであげて欲しい。マッキーを管轄できるのはゆっこさんしか居ない。



幽霊棟の皆は、高校生になるまでおおよそ幸せと感じることも無く生きてきて、いつまでこの苦しみが続くのか、大人になっても続くのか、とずっと苦しんでいた。「きっと」とか、「いつか」とかいう問題でもなくなっていたんだろうけど。先の長い人生で今まで悪いことしか置きなかったら、ずっと悪いことばかりなんじゃないかと思ってしまう気持ちもわからなくはないなあ。悪いことが続かないっていう保証もないし。でも、友人がいるだけ、自分のことを語れるだけの友人がいた事は救いだったとは思う……それをバラ撒いた清史郎にはブチ切れ感想を残してしまったけども。
子供の頃に感じたことは、たしかに大人になって引きずることもあるけれど、大人になったからこそ見えることもあるし、大人になったから人に優しくなれたり自分に厳しくあれたり出来ることもある。逆も然り。あと18禁ゲーも出来る、なんて素晴らしいんだ大人。未成年時代は通過点で、みんなそこを通って否応なしに大人になる。それが人間なんだから深く考えてもしゃーない。結局は考え方次第な気がする。

この作品とは全然関係ないけれど、自分が高校生の時、進路を考えた時に絶対教師にはなりたくないと思ったことを思い出した。多感でワガママで自分のことしか考えられない(もちろんそれは悪ではなく、それが当然なのだけど)血の繋がりすらない他人の集合体を、わざわざ教えるなんて御免こうむるって思っていた。そんな自分も高校生の時は先生は何もしてくれねえじゃねーか!とか思ったりもした人間なので。そういう経緯があるので教師や教育者に対しては未だに尊敬する思いがある。大人になってから教師の仕事を具体的に知った時、さらに尊敬した。あと教師も完璧な存在ではないので、「反面教師」っていう単語は滅茶苦茶素晴らしい言葉だと思う。中には本気で酷いやつも居るだろうけど、そういうやつはともかくとして、先生だって人間なんだな。先生ってすごい職業だ。

この子らをちゃんとビシバシ叱って教育してくれる人が一人でも居たらまた違ったんだろうなと思うが(出来れば教師でない人が)、そうはならなかったからこういう結末になったんだろう。大人も子供も全員フラッフラな立場だった。謎と話の流れは違和感は無かったし、因果のように別々だったはずの糸がぐっちゃぐちゃに絡まっていく様子はエグくて良かった。ただし、やっぱり表現が深くは突き刺さらなかった。色々思い出したり考えたり出来たことは楽しかったです。

私の脳内は高校生からあまり成長している気はしないが、それでも高校生の時にプレイしたかったっていう思いが強い。このゲームが15禁ではなく全年齢で作られているのは、作者の意図もあったのだろうかとも思った。
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