全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

22 2017

サクラダリセット 感想

サクラダリセットは、残酷で優しい物語。

サクラダリセットBlu-ray BOX1
KADOKAWA / 角川書店 (2017-07-26)
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これは決して目立つような作品ではない。劇的に感情を揺さぶられるような作品ではない。でもずっと胸に響くような心地の良い鈍痛だった。どうしようもなく残酷なのに、優しい思いで溢れている。その相容れない2つの感情と状況が、同居しているのがすごいと思った。

キャラデザは居たって普通、主人公とヒロインの話し方は単調。しかも序盤は哲学的なような会話劇が中心でキャラクターたちにおよそ感情の動きが見られない。私はアニメから入った人間なので、すぐに感じたことがある。今でも思うことがある。『これは間違いなく円盤が売れるアニメではない』

でも、すっげーーーーーー胸に響くんですよ!

最後まで見たらあそこの会話はあの伏線だったのかーとかあの行動はあの想いからだったのかーーとか終盤にかけて一気にピースをはめ込んでいく爽快感も味わえる。この普通なキャラデザも、話し方が単調なのも、哲学的な会話も全部伏線となって全てが返ってくる。そうして気づいたキャラクターたちの真意に本当に心から胸を打たれ、この物語を見届けて良かった、と心から思えた。声優の演技も、アニメの演出や作画も、BGMも、ほぼ完璧に仕上げられた『メディアミックス』であることに二重に感動した。サクラダリセットとをアニメ化してくれた人たち本当にありがとうございました、この作品に出会えて良かった。と思っている今です。

じゃあ具体的にどういう物語なのかというと、能力者がいる街・咲良田市が舞台。能力バトルではあるけれど、主に頭脳戦と言った感じで、主人公浅井ケイは完全記憶保持、ヒロインの春埼美空は3日間の世界の再構成(世界を3日前の状態に戻すリセット)を能力として保持している。そしてその二人を引き合わせた相麻菫。主にこの三人の物語。
能力には強度があり、例えばリセットを使っても浅井ケイの能力の強度の方が強くリセットされる前の記憶も保持される……と言った感じ。能力には条件があったりなかったりする。基本的にはそんないろんな能力者とのあれやこれやなんだけども、それも全て伏線だったとわかった時の衝撃が本当に心地よい。何もかもが重苦しくて痛々しくて心地が良い。

シナリオについてはとりあえずネタバレすると衝撃も感動も魅力も削がれちゃうので、とにかく見てくれというぶん投げた感想しか残せないのが辛いところ。アニメはとりあえず4話まで見て、主人公浅井ケイの狂気に触れてください。2話まではちんぷんかんぷんで、浅井ケイに「何だコイツ」と大半の人が感じると思うが、それが後々に「ああ、あの感情はそういうことだったのか」と知ることが出来る。なんかもう殆どが伏線過ぎて何も言えない。

でも、他にもこのアニメはすごいところがたくさんあるんです。
まず第一に声優の演技。主役の三人の演技が本当に素晴らしい。浅井ケイは石川界人、春埼美空は花澤香菜、相麻菫は悠木碧で引っ張りだこな声優さんを主役に添えてるんだけども、三人共素晴らしかった。というのも主役三人共感情表現が乏しい。泣いたりすることも殆ど無いし怒ったりすることなんて全くと言っていいほどないし、笑ったりするのがたまーにあるかなぐらいで、その年にしてどういう育ち方してきたんだよと心配になるレベル。でもこれにも全部理由がある、すごい。そしてその演技力バリ高なのに感情表現の薄い演技がクセになる。物語が進んでいくに連れて、彼らの感情にも動きが出てきて、それを見事表現しているのが素晴らしい。
特にすごいと感じたのは、悠木碧ちゃんの「悲しい」という感情から来る演技。相麻菫は殆ど自己を見せないキャラクターなのだけど、とあるシーンで絶妙な声の震えで感情表現をしていたのが本当に素晴らしかった。自分はヘッドホンでアニメを見ているのだけど、ヘッドホンで聞いていたからこそ聞こえるレベルの繊細で些細な表現だったんだけど、それがまた相麻菫らしくて良い。相麻菫は自己を守る壁が強固で頑丈だけど、思わず出た動揺と哀しみが震えた声に乗せられていて、何度も何度もシーンを見返した。一緒になって苦しめた。

良いとこもっとあるんだけど、ネタバレせずに伝えるのが本当に難しい。自分はアニメ→小説を読んだ人間なのだけど、雰囲気を良く表現してくれているなと感じたし、BGMや間のとり方、長い小説の中で必要な表現を選ぶ取捨選択が良いと思った。小説を読めば各々の感情がより理解できるけれど、アニメはアニメとして、表情等の原画や演出でそれを表現してくれていた。小説では分からない、視覚や聴覚に訴えるものがアニメとして表現されていたのがとても嬉しかったし心地よかった。主役三人共も感情表現が乏しいからこそ、その心の機微を感じ取って上手く表現されていたように思う。

小説は小説として、アニメはアニメとして、表現できることをめいいっぱい表現してくれた事が嬉しかった。もっと劇的に分かりやすい表現に改変すれば、もう少し色んな人の目を引く作品になったのかもしれない。でもこのアニメは、原作を大事にしつつ、アニメはアニメなりの表現で描いてくれた気がするのです。派手さの無いキャラクターデザインは主題の話を壊さないし、あまり動きのない作画もここぞという表情の表現にぐっと胸を打つものがあった。アニメを見てわからなかった部分は、原作を読めば繋がるし理解も深まる。そういうアニメと小説の相互関係も良かったなと。アニメはやはり描写不足ではあるけれど、原作を手にとって見たくなるような余白な部分もあったのは逆に良かったのではないかな。
この作品は決して売れる作品では無いだろうけれど、最後まで見た人の心に何かを残してくれるような作品であったように思う。


ま、そんな建前は別にして、売れてほしいなあ。最初っからBOX発売でお財布にきっついですが、私は毎話腐るほど見直したぐらいこの作品が大好きですのでお財布が頑張ってくれる限りはついていこうと思っている。終盤は怒涛の展開なので、声優さんの繊細な演技力が遺憾なく発揮されていてその演技を聞くために何度も何度も見直した。お三方のファンの方は特に聞いたら楽しめる演技だったと思います。演技に胸を打たれたのは本当に久々だった。

導入部は小説の方が入りやすいとは思う。アニメは小説とは順番が違うのだけど、アニメはアニメで良かったと思った。理由についてはネタバレ含んだ感想で後述します。
小説については、角川文庫と角川スニーカー文庫から出てるけど、スニーカー文庫の方が挿絵があるのでおすすめです。この挿絵が本当に美しい。個人的に好みの絵柄ですごく良かった。

サクラダリセット  CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)
河野 裕
角川書店(角川グループパブリッシング)
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ぶっちゃけるとこのアニメを見始めた理由は「今期の石川界人補給アニメにするか」程度で、1話見た時はキャラクターが何を喋ってるのか半分も理解してなかった。2話以降を見るか本気で迷ったくらいだ。でも見るたびに次を楽しみにしている自分に気づいたし、2クール目に入ったぐらいで気がついたら小説を全部買っていた。挿絵のためにスニーカー文庫の方を買い直したぐらいだ。そしていつの間にか石川界人そっちのけでアニメにのめり込んでいた。いや、石川界人氏の演技力にものめり込めたけれど。

サクラダリセットという作品に出会わせてくれたアニメに本当に感謝。このアニメを作ってくれた皆々様に本当に感謝。優しいのに激重で窒息しそうなほど息苦しいこの物語が、私は大好きです。

以下よりネタバレ感想です。
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もう伏線だらけ、あれもこれもそれもどれも。作者さんは2巻が出た時点で最後まで描ききることが確定していたとあとがきで語っておられたけど、最初からこれを考えていたのだとしたら一体どういう脳内構造しているのか。

でも自分が一番心地よかったのは伏線回収よりも、各々の感情だった。特に、相麻菫の。
正直言えば、相麻菫と春埼美空どちらが可愛いかと聞かれれば断然春埼美空と答える。人形のようだった彼女がどんどんいろんなものを感じて吸収して可愛らしい普通の女の子になっていく様子にケイが惹かれていくのもよく分かる。対して相麻菫の感情は最後の最後まで見えてこない。何を考えているのか最終巻の一歩手前ぐらいまで明かされないから読者である自分も相麻菫に対して感情が乗らない。でも相麻菫が感情を爆発させたシーンで、彼女と真意と思いと今までの行動の理由を知った時に『相麻菫よ頼むから幸せになってくれ』と祈らざるを得なかった。もし私が咲良田市にいたら、相麻菫を幸せにしてあげられる能力が欲しい。でもそれは叶わないのだな、別の恋を見つけろとか、浅井ケイのために命さえも投げ出した彼女にそんな事言えやしない。願えやしない。
じゃあ相麻菫のこの苦しさの出口無いじゃん……って思っても、私は相麻菫の幸福を願わざるをえない。相麻菫が浅井ケイの幸せをどこまでも願うように、私も相麻菫の幸福を願っている。祈っている。

小説は小説の、アニメはアニメの表現があると思ったのはやっぱり視覚的な効果が大きかった。もちろん悠木碧ちゃんの演技があってこその相麻菫ではあったけれども。相麻菫が唯一感情を爆発させたシーン、浅井ケイに自身が計画していたことを暴かれて、全てを悟られた時に見せた泣き顔が本当に辛かったー…………「相麻菫はそんな風に泣くのか」と。あのシーンはアニメならではで、演技も素晴らしかったなあ。

あと原作5巻終盤の、相麻菫の以下のセリフの演技は素晴らしかった。

「でも、その感情は本物かしら?もしかしたら、すべて勘違いかもしれない。共感と、馴れ合いと、好奇心と、憐れみと、尊敬と、嫉妬と。そういう感情が重なって、錯覚しているだけかもしれない」

この最後の「かもしれない」の部分がゼツッミョーに震えている。その前の助走部分も、ケイに春埼が一番だと告白されていて傷ついているほんの少しの狼狽具合が感じ取れるのがすごく良い。相麻菫は未来視でこの未来も見えていたんだろうけど、未来を見るのと体感するのとでは全く違うだろう。命を投げ出してでも好きな男の子に『お前のことは結構気に入ってるけど、好きな子はお前じゃないわ』とか言われたらもうキッツいどころじゃない……でも相麻菫は、偽りの未来を手離してでもただただ浅井ケイの幸せを祈った。行動に移した。偽りの未来はそれぞれの解釈で、それが本当だと解釈しても間違いではなかったのに。何もかも忘れられないケイの幸せのために、自分の幸福を捨てた。
ケイが相麻菫が作ったケイの幸せが本物の幸せだと言ってくれたのは救いだったけど、でも相麻菫はそれで救われない。でもケイは「僕には相麻を救えない」とか自覚してるもんだからほんとズルい、そういう全部知っててそういうことを言えるケイの狡い所もケイの間違いだと思うよ春埼さん!でもその間違いも春埼にとっては、おそらく相麻菫にとっても、「意外と駄目な所も可愛いとこ」なんだろうな。あーズルいな、ケイはちょっとムカつくほどズルい。意外なことで春埼と喧嘩してビンタされて「えっ」みたいなことなればいいのに。ならないだろうけど。

OPとEDも良かったなあ。1クール目のEDはかなりネットリしてて「この雰囲気ぶち壊しEDすげーな」と思った記憶があるけど、歌詞をちゃんと見たら話の内容に沿っててそれがまた良い。自分は4話の劇的な終盤で一気に引き込まれた身なのだけど、EDでのねっとり具合をすっかり忘れてて、EDで声出して笑ったのも今では良い思い出。
OPも好きだけど、記憶に残ったのは2クール目のED。相麻菫がようやく感情を露わにできた回のEDで、それまでとは表現が追加されて、相麻菫が涙を流しているのをみてウワーーとなった。この乏しい語彙力よ。でも心の中でウワーーと思っていたのだから仕方がない。あの相麻菫がこんな風に泣かなければいけない現状を思うと悶え苦しんだ。その苦しみさえ楽しんでいたけれど。

構成については、話の順序を原作刊行順ではなく時系列順に直した状態だったけれど、私はこれを英断だと思っている。ただ、浅井ケイの中学時代は今よりももっと独善的で、哲学的で、登場人物も感情表現があまりされない時代だから、導入部としては成功しているとは思えない。それでもなぜ英断だと思ったのは、相麻菫が最初から居ることで、三人が対等な立場で表現されているから。原作の始まりは浅井ケイと春埼美空しかいなくて、どうしてもこの二人に感情移入してしまうけれど、相麻菫が最初から居ることで三人は対等な立場になった。それぐらい相麻菫に比重を置かれても良いと思うし、それでも浅井ケイと春埼美空の絆や感情の動きは揺るがないので。アニメだと心理描写がどうしても劣るので、最初に対等な立場として出しておくことは視聴者的には良い事だったんじゃないかなと。

原作で削除されたシーンも多かったけど、それでも絶対に外せないシーンはちゃんと描かれていた。その取捨選択っぷりも良かった。序盤が駆け足で終盤が濃密だったけども、3クールでダラダラやるよりは、2クールでこのぐらいギッシギシな構成でよかったのだと思う。サクラダリセットは特に視覚的な動きのない会話劇中心の作品だし、これ以上やられても飽和状態になったような気がする。1クールだと逆にアニメ化しないほうが良かった、と言われる出来になっていただろうし。

語り足りないので以下より主要キャラ三名のキャラ感想。相麻菫についてはもう語り終わってるような気がしないでもないが、語らせて欲しい。あと幸せになって欲しい。

●浅井ケイ
ケイという名前すら伏線だったと気づいた時は、感動のシーンにも関わらず「こんなところまで伏線にすんのかよ!」とツッコミの手が思わず出た。ケイは正しいようでいてかなり間違っているよなあ。ケイの判断はあくまでも独善的で(本人もそれは自覚しているが)、それが「正しい」とは私には思えない。ただVS浦地に関しては、『確かにあるものを無いとするのはどうなのか』って言う理由でケイ派だったけども。
終盤の坂上くんとのやり取りはアニメではカットされてしまったけど、あれもケイの間違いを指摘するシーンで、個人的に好きなシーンでした。坂上くんはケイの煽りを受けてアニメではカットされまくりでちょっと可哀想。相麻菫の次に可哀想。
両親を捨てたことはケイにとっての最大の過ちだったように思える。両親がケイを思って付けた名前の由来を知ることで、ケイがそれで揺らぐのも良かった。ケイがこれで親にちゃんと謝ったと思っている……とは自分も思ってはいないけど、ちゃんと事実を明かして謝ることが出来ない限りケイの過ちは続いていく。ケイは両親に謝る未来があるんだろうか。そう思えば、両親を救おうとした浦地の方がよっぽど正しい感情だったような気もするな。

リセットするのだと予測しておきながら春埼にキスをしたのは本当にズルい。結局あの頃からケイは春埼の事が好きで、なんか色々言ってるけどそれを口実にキスしたんだと、ムッツリスケベ説を推したい。自分の記憶が失われないのに、相手の記憶が失われるからと言ってキスするのは結局なったことにはならないじゃないですか、ケイが覚えている限り。この助平野郎め。結局終盤で春埼本人にも思い出されてるのにしれっとしてる辺り、春埼に思われていることをちゃんと自覚していて、なんだかそういう余裕な部分が軽くムカつくといいますか。もうちょっと狼狽えろ。

でも最後まで相麻菫に対しては誠実だったよなと。安易に相麻菫に同情しきらないし、二番目を貫き通していて苦しかった。ケイが相麻菫を二番目だと自覚する度に相麻菫が振られていることになるのは辛い、本当に辛い。

――もしも僕が二人いたなら、二人ともが君といたいと願うだけだ。

ケイが二人いれば解決していたのにと言った春埼に対してケイが思ったこと。これだけに留まらず、ケイは春埼が一番、相麻は二番を貫き通す表現をする。こんなありとあらゆる表現で相麻を傷つけんでも良いじゃないですか!相麻を通して傷ついている人も居るんですよ!
でも中途半端に寄り添ったりしないところが、ケイの優しさでもあるのかなと。

構成が時系列順でよかったなと思えたもう一つは、中学生時代の浅井ケイに対して独善的だなと最初に思えて良かったこともある。高校生になったらもう大体完成されてしまっていて、本当に彼の全てが正しいように思えてしまいがちなんだけど、最初に思った感情を掘り起こしてみれば「何だコイツ」だったのを思い出して、ああアレはケイの『間違い』だったのかなと。間違いというより、ケイと私の解釈違いって表現が正しいのかもしれないが。独り善がり過ぎるんだよなあ、何もかも。
あと自分を勘定に入れていないところは、心から狂気的だと思った。4話の革命家さんの恐怖は計り知れない。暴力的な事が嫌いなくせして、自分に対しては暴力的なことを厭わないのは狂気としか思えない。人には暴力を震えないのに、自分には厭わない。脅す材料にさえ出来てしまう。しかもそれを計算でやるのがなあ。これは春埼にも、色んな人にも指摘されていたけども。

本当に、恐ろしく頭の良い子だった。記憶保持の能力の前から、彼は頭の回転がすこぶる良いのだろう。記憶力が良いからと言ってそれを知識として使えるかどうかはまた別だと思った。私に記憶保持の能力があったとしてものた打ち回るだけだきっと。
そんな頭の良いケイに、記憶保持という最強の能力が与えられたのは鬼に金棒。普通の人なら苦しむだろうこの能力を扱えているのはケイだからこそなんだろうな。真っ直ぐで痛々しいけれど、どこまでも優しい主人公だった。

あ、どうでもいいことではあるんだけど、中の人が春埼と相麻の二人の添い寝シーツを広げながら真ん中でドヤ顔している写真を見た時、ケイもこの位力強く居てほしいなと思った。超笑った。


●春埼美空
春埼可愛かった……可愛かった(噛みしめるように)。なんだかんだ恋愛面に関してはやっぱり春埼を応援してしま……った……。相麻菫さん本当にごめんなさい。
自己を押し込めたのは相麻菫も同じなのに、彼女がより純粋でその感情が美しかった点で軍配が上がったのがなんとも辛い。しかもそれはきっかけに過ぎず、いろんなものを見聞きして吸収して普通の女の子になっていく様さえケイに好かれるのだから本当にもう相性の良いカップルなのだなと。春埼も春埼で常に正しく在ろうとするケイが好ましいのはよく理解できるし。

はなざーさんの演技も可愛かったなあ。棒読みではない感情のない演技が本当に上手で、そして春埼がどんどん感情を芽生えさせていって声も色がついていく。春埼の感情が豊かになって行く様子は本当に温かい気持ちにさせてもらえたし、そこに惚れるケイの気持ちもよくわかった。ただし相麻菫さんのことを考えると私はひたすら胸が苦しいのだ……。私は春埼派なのに天秤が傾かなかった方に感情が行くというのもなんだか不思議で心地よかった。

相麻菫の想いはケイだけが知っていて、相麻菫はケイの前では泣くことができて、ケイは春埼の前では泣くことができて、春埼はケイの前では一番に笑える。この構図が、なんだかもう、辛いなあ。ケイが春埼の前では苦しんだり辛いと言葉に出せたりしたのが嬉しくもあり、同時に苦しくもあった。相麻菫の前では見られない、春埼の前だけに居る特別な浅井ケイ。それを相麻菫が未来視で知っちゃってるのがなあ……重力に押しつぶされそうだ。
特殊だった彼女が普通になっていく様さえ好きになられたらもう相麻菫には太刀打ち出来ないよなあ。それでいて春埼はケイの『正しさ』を好きになって、最終的にはケイの間違いも込みで好きになる相思相愛ってのが……ッハアーーーアアアーー。嬉しいはずなのに辛さが同居するような感情にさせてもらえたのは、ある意味とても幸福なことだ。これはなかなか味わえない。

ちなみに私も長髪派です。短い方も愛着かなり湧いたけど、長髪春埼が見た目的な可愛さナンバーワン。


●相麻菫
彼女の目的は、「浅井ケイの幸せ」。これに尽きる。
未来視能力が相手の感情が伝わらないものだったのなら、相麻菫は死ぬこと無くケイの力を頼ったのかもしれないが、ケイが春埼と居ることに一番の幸福を感じてしまったことで彼女の運命は大きく変わってしまった……しかしそれを決断した相麻菫の意志の強さがすごい。絶対に自分は幸せにはならない、何度も何度も現実に打ちのめされるとわかっていながら、ケイの幸せだけを支えにして行動に移す。一途で、ひたむきで、誰よりも自分の思う人の幸せを祈っている……自分が幸せにならないと知っていたとしても。そんな相麻菫の強さと、愚かなようにも思える選択が胸にガッツリ突き刺さった。

「馬鹿みたいでしょう?愚かだと思うでしょう?私の好きな人が、別の女の子に好きだと伝えるのを待つために、私は長い間、何も話さなかった」

たったこれだけの一文で、相麻のしてきた壮大で愚かな事が語れるのがすごいな。相麻菫は作中誰よりも純真な乙女だった。私は春埼よりも相麻の方が尊い気がするし、人間からより離れた美しさを感じる。だって普通ならこんな選択は出来ない。好きだという感情のために自分の命さえ投げ出して、好きな男の子の幸せを守るためにその好きだという気持ちさえも殺す。でも自分はそんな相麻菫の愚かさが大好きだ。ここまで己の感情を犠牲にしている人を見ると思わず幸せになって欲しいと願わざるをえないのだ。
相麻はきっと自分が幸せになる未来も探したんじゃないかなー。自分とケイが想い合える未来を探しただろうけど、多分ケイは相麻のことを好きにはならなかったんじゃないか。嗚呼、打ってて自分まで辛くなってきた。そもそも「好き」という感情を形容することが難しいんだけど、なんだかタイプ的に相麻はケイの恋愛的な好みではなかったように思える。相麻は興味を引く女の子ではあるけれど、色々達観しすぎていてケイと同等の思考能力を持っている。でも、やっぱ、ほら、可愛さって必要じゃないですか。相麻菫は強くて脆くて美しいけれど、可愛いとはまた違う。ここが春埼との大きな差なのかもしれないなあ、恋愛的な意味で。ケイはきっと春埼のことは「可愛い」と思っていただろうなと思います。ああ、打ってて辛い本当に。
あとケイは自己を犠牲にするタイプだけども、自己の感情まで犠牲にするタイプではないと思っている。相麻菫は正しくそれだけれども。自分を偽ってまで相手に合わせようとはしないだろうなと、相手に対しては誠実で居たいタイプだ。だからこそ相麻は作中何度も振られることになった、辛い。何度も何度もケイの未来を見て、一番幸福だと感じる未来が「春埼美空と思いが通じ合う」という未来だった。相麻は相麻なりの意志と強さで、浅井ケイの幸せを願うこととなったのでした。嗚呼、辛い。

「ねぇ、ケイ。貴方が望むなら、きっとそうなるのでしょう。でも、私はその未来が怖いの。貴方を手に入れられないのに、それでも笑えてしまう未来が怖いの。わかる?」

このセリフが一番胸に来たなあ。命を投げ出してでも幸せを望んだ相手に思われないのに、笑えてしまう未来が怖いって相麻さんは本当に乙女だなと思った。好きな男の子にいちばん好きになってもらえないのに君も笑えて幸せな未来があると好きな男の子に言われる辛さ、浅井ケイにはきっとわかるまい。そしてケイもそれが「わからないことを理解できている」その察しの良さがほんとムカつくなーーー。これで察しが悪くてもまたムカつくんだろうけど。
スワンプマンの相麻菫は、自分のアイデンティティさえケイに背負わせたことを悔やんでいたけど、もうこんだけ振ってるんだからそのぐらい背負わせてやれって見ている自分は思った。相麻菫の行動も独善的で愚かではあるんだけども、それはケイが選択して進んだ道でもあるのだから、せっかく背負うぐらいがちょうどいいって言ってるし背負って貰って欲しい。彼が重くて辛くなっても、隣に春埼美空が居ればなんだかんだ癒やされるのだから。胸に手を当ててもらっただけで痛みが無くなるのだからーーああぁ。

悠木碧ちゃんの演技は本当に素晴らしかった。どちらかが合わせたのかはわからないけれど、作中の魔女と同じような演技をしていたのはとても感心したし、彼女の泣きの演技の右に出るものはいないなと思うぐらい胸を打つ演技でした。自分は途中から我慢できなくなって小説の最終巻辺りを先読みしたのだが、あのセリフこのセリフ、どう演じるのか気になって気になって仕方がなかった。私の中の相麻菫を大きく塗り替える演技力で相麻菫を演じてくれて嬉しかった。これと同時期にアホガールとシンフォギア見てたのですが、改めて彼女の演技力の高さに脱帽です。

なんだかんだ言ったけど、私の答えもただ一つ。相麻菫ちゃん幸せになってくれ。彼女には「男は他にも居る」だの「ケイがいなくても幸せになれる」だのの言葉は禁句だけど、でも幸せになってくれ。それだけが私の望みだ。私は相麻菫が心から笑えているそんな表情が見たいのだ。


まさかここまでこの作品を気に入るとは自分でも思わなかった。でも登場人物みんな好きだし、中でも浦地さんみたいなタイプは激好みだった。この自分の意志に忠実で、ケイがあーだこーだと言っていてもそれでも自分の意志を変えないところが本当に好きだった。あと声が櫻井孝宏な所もポイントが高い。

久々に一話を見直したらあれもこれも伏線で感心した。二週目ではセリフの一つ一つが重く苦しく感じるのが心地よいな。来週からもうケイや春埼に会えないのが本当に寂しい。これからのケイ達の未来に思いを馳せながら、リセットして一巻から読み直したいと思う。実はアニメと同時進行で読んでいて5巻ぐらいからしか読んでいないので。原作を読んで心情を理解出来て二重に楽しめるのもメディアミックスの良いところだな。

何度も言うけれど、この作品に出会えて良かった、と思えたのはこの上ない収穫だった。視聴継続を判断したあの時の自分を褒めたい。そしてこの作品に関わって作り上げてくれた人たちに感謝申し上げたい。いやあ、楽しかった。例えようもないほどよい時間をいただけました。
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