全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

13 2018

サナララ 感想

いい話だった。……だけども、後に残らない話でもあった。

サナララ ~SA・NA・RA・RA~
ねこねこソフト (2005-04-29)

元々長くはない短編集的なゲームだとは知っては居たけれど、それ以上に中身が引っかからなかった。これは私が男性向けをやりすぎたせいなような気がしなくもないので、もっと前に出会っていればもっと感動できた気がする。その点、男性向けエロゲへの入門としては良いゲームなのかもしれない。エロシーンも薄いし。作画もおなじみのうめせんせーによく似た双子の方らしいです。

一生に一度のチャンスと称してお願いを叶えて貰えるシステムがある。叶えて貰えた人はナビゲーターと呼ばれ、お願いを叶えるための条件やルールを次の人に説明しなければならない。無事次の人の願いを叶えたら、それまでの期間のことはすべて忘れる。願いを叶えて貰ったことすらも忘れる。ナビゲーターは次の対象者が願いを叶える期限である一週間は限りなく影が薄い存在となり、願いを叶える対象者にしか認識して貰えない。
存在が薄い期間に悪い事したりグヘヘなことし放題出来るのでは?って汚れた脳内している自分は考えていたけど、きっとナビゲーターが持っているルールブックにそういうことも記載されているんだろう。おそらく禁止事項的な感じで。あとそういうことする人間は対象者には選ばれなさそう。ただこのシステムには他にも穴があって、4章ではそこが問題点にされていたりした。

どれもこれも優しくていい話で、読後は心地よく終われるけども、でも心には引っかからなかった。心に残るものが殆ど無かった。だからこの物語を読めたことに対しては良かったと思えても、すぐに次に行けてしまうような存在感の無さが物悲しい。もちろん、重苦しい話を求めていたわけではないしそういうのは提供されないとわかっていてプレイしたけれども、ただの『良い話』だけで終わってしまったのは残念。お願いのシステム自体は面白いと思うし、その期間あったことを忘れてしまう=無かったことになるという重みもあったけど、やはり幸福な物語ってだけで終わってしまうのが……あと登場人物を応援したいと思えるまで感情移入ができなかった、これに尽きる。例外は3章だったけれど、これは私が好きな題材(才能の壁に打ち崩される人)と全体的な物語の完成度が高かった。いや、どれも綺麗に上手く作ってはあるんだけど、3章以外は余り感情移入出来ない要素が幾つかあって……それは個別感想で語ろうと思う。

あとシステムは個人的にすっごい不便だった。プレイ続行不可なシステムってわけでは無いが、こちらに小気味よくストレスを与えてくれるシステムだった。
まず文字速度を一括表示に出来ない。自分は文字追い派の音声飛ばしな人間なので、最速にしても読むほうが早くてそこでいちいち読む作業を止められてしまって辛い。
あと音量の微調整が出来ない。自分はBGMをそこそこ下げてプレイする人間なのですが、最小にしてもそこそこでかい音が流れてそれも辛かった。細かく調整出来ると見せかけて、10段階ぐらいしかない。でもPCのマスタ音量を下げるのもなんだか負けた気がするので短い作品だしと思い最後まで音量とは戦い抜きました。BGMも良い曲たくさんあるんだけど、Keyで流れたような感じのBGMが泣き所で流れるのはちょっと気になった。
おまけシナリオも今作には関係のないキャラの物が含まれてて気持ちが濁った。

ちなみにリメイク版が出ていることにプレイしてから気づいた人間なので、上で密林地帯のリンクを貼ったとおりプレイしたのは旧作の方です。リメイク版は追加キャラも居たらしいけど、4人でコンパクトに纏まっていたのでこっちをプレイしていて良かったと思った。あと相性の関係で色々。


以下よりストーリー&キャラ感想。

・Story:01 のぞみ(椎名 希未)
お願いシステムをプレイヤーに説明するには丁度よい話だったとは思う。主人公がのぞみの話を信じないから説明に入るのも違和感が全く無かった。
しかしながらのぞみを心から応援したいとは自分は思えなかった。照れ屋で人の目を見られない、そんな自分を克服したいと思っているのは、がんばれとは思ったし、克服できると良いねとは思ったけど、それ以上に何故ここまでのぞみが人見知りが激しくなってしまったのか明かされることがなくて、のぞみに人見知りされた側の人間の気持ちを考えてしまうとのぞみを応援したい気持ちと相殺されてしまった。頑張って告白しても、持ってるもので顔を隠されるとか、顔も合わせて貰えないのかと思うと、やられた方は結構辛いのでは……しかものぞみに対して好意を持っていたのならなおさら。もちろん克服したいと思っていたのは良かったし、願い事で叶えてもらうのではなく自分で克服したいと思っていた心意気も良かったけれど。だからなおさら、どうしてのぞみがここまで極端な人見知りに至った理由が知りたかった。短い話だし敢えて明かさなかったのかもしれないけれど。
主人公のちょっとした悪戯心で二人が離れられなくなってしまうのはありがちな距離の縮め方でもあるんだけど、言い換えれば王道でそこは綺麗で違和感が無かった。あと欲を言うのなら、これはのぞみの為の話で、主人公の話って感じはしなかったのもちょっと物足りなかった。のぞみの克服のために主人公が配置されているだけのような気がして。最後に「のぞみを幸せにしてくれる人と出会えるように」と願う主人公は美しい感情でもあったし格好良くもあったし、それが幸せにしてくれる人=主人公だったっていうのもきれいな流れではあるんだけど、結局のぞみのためのパーツに過ぎなかったなと思ってしまうとやはり何処か物足りなかった。
のぞみのような子に過激な人間をあてても色々解決はしなさそうだから、なんだかんだ心優しい主人公が添えられたのは良かったんだけど……だけど、『それだけ』だったのかなと思ったのはこういうところにあったような気がする。

あ、今気づいたんだけど、のぞみという名前は「望み」=願いを掛けていたのか……。(節穴)


・Story:02 Sweet days, Sour days(高槻 あゆみ)
これも綺麗にまとまっては居たんだけど、のぞみルートよりも退屈だった。あとエロゲらしく朝に弱い主人公を起こしに来る勝ち気な幼馴染に思わず『うわ…』と思ってしまった。懐かしくもあったんだけど、のぞみもこういう昔からあるギャルゲのヒロインって感じだったので連続して来られてしまってかなり食傷気味だった。まあ終わった後は全員昔ながらのギャルゲのヒロインだったことに気付いたんですが。
ナビゲーターと対象者は知りもしない人だからこそ面白いのかなとこのルートをプレイした後に思った。幼馴染同士だったのである程度の信頼関係は出来ているし、もちろんその上でこういう状況下に置かれる様子を見守るのも面白い部分はあったんだけども、物足りなさの方が勝ってしまった。あと「素敵な恋がしたい」ってお願い事は、のぞみルートでのぞみが対象者だった時のナビゲーターの人が『そう願ったら自分で得た感情って気がしない』的な事を語っていたので、このルートで思いっきり願われて、どうしようもなくなった。のぞみルートのナビゲーターの人のシーンが中々胸に響いたのもあったので。
時間がループするという緊迫感も無かったし、緩い感じの二人がのほほんとエンディングを迎えてしまい、山も谷もあったけどピクニックに最適だったよね的な割と平坦な感じで終わってしまったのが引っかからなかった要因。別に断崖絶壁が欲しいわけでもないし、これはこれで良い温かい空気感であるとも思うんだけど、だからこそ意識に残る要素も無かった。

あとお菓子のくだりは唐突過ぎてあまり感情移入ができなかった。あれだけ向いてなければ諦めそうなものなのに、ああいうのも意固地に続けるのもギャルゲでありがちなヒロイン像の一つではあるんだけど、そういう所も合わなかった。それだけあゆみが自分の居場所を探していたと言われれば理解は出来るんだけども、応援したいという気持ちまでは到達しない。

色々言ったけど、一番引っかかったのはこの二人はお願いシステムが無くてもいずれくっついただろうなと察せられること。意味がないとまでは言わないが、悪い意味で何も残らない話だった。


・Story:03 センチメンタル・アマレット・ネガティブ(三重野 涼)
1章、2章と立て続けに引っかからなかったのでどうしたもんかと頭を抱え始めていた。三重野のキャラも最初は「またギャルゲヒロインかあ」とまあ当たり前の事を感じて居たんだけど、この短い話の中に上手く伏線や感情やその他色々を織り交ぜて感動させるシナリオだったのはとても胸に響いた。後半は思わず目頭が熱くなった。
このシナリオはこの主人公とヒロインがいてこそで、それが少し話したことのあるクラスメイトっていう、存在するかどうかすら危ういようなうっすい糸で繋がっていながらもこのお願いシステムでしっかり繋がる点が非常に良かった。あるかどうかわからない縁が何よりも強固になっていく過程にとても惹かれた。

自分は、越えられない才能の壁の前で挫折している人間が好きっていう、悪趣味と言われてもしゃあない趣味をしているんだけど、越えられないからこそバリバリ感情移入が出来るから好きなのである。人間生きていれば絶対に挫折と言うものは味わうものだし、そこで苦悩する感情こそ見えないものと戦う美しさみたいな物が感じ取れるからだ。だから、この短い話の中で『足が人よりも早かった』という馴染み深い設定を主人公に組み込まれていたのは感心したし、それがこの主人公らしい言葉で語られるのがたまらなかった。

「『クラスで一番足の速い、陸上部の高畑君』結局はそれが俺の全てだったんだ。
俺さ、将来陸上選手になりたいなんて、ただの一度も思ったことないんだぜ。ただ、人よりほんの少し足が速いってことで、皆からちやほやされたかったんだ」

この主人公はそのことを「ちっちゃい自分に気付いた」と称したんだけど、でも何かを好きになるスタートなんてそんなもんなんじゃないだろうか。それは全然小さくもなんともないことで、人に認められるから好きになる。認められたいから苦悩する。当たり前で格好悪くもなんともない。もちろん認められなくても好きなこともたくさんあるけど、それはまた別の話。
そしてこの話の良いところは主人公は既に願いを叶えて貰ったナビゲーター側だということ。誰よりも足が速くなることを願ったのかと思いきや、願いを叶えてもらっても惨めになるだけだと、結局別のことを願うことになる。それは自分の力で得なければ意味のないことだと主人公が知っていたのだろうし、自分の力で勝ち取りたいという矜持があったのだろう。それだけ主人公が走ることが好きだったという証明なような気がして、この主人公が自分の思いを吐露するシーンは苦しいのにとても心地が良かった。

そして主人公は『自分よりも願いを必要としている次の人間に回せ』と願った。選ばれたのは、既にその資格を失っていた三重野だったっていうのがもう。これも泣きゲにありがちな病気モノだと言われればそれまでなんだけど、綺麗に伏線が繋がっていくところは美しくて、そしてオチも安易なご都合主義に走らなかったところがとにかくもう美しい。これで三重野が生きていても良い話を見せてもらったという気持ちにはなったんだろうが、そうはならなかったからこそ重さが胸に響くし記憶に残った。お願いという奇跡のような力が確かにあるのに、それが叶わないところがどうしようもなくさせてくれる。
三重野も他人準拠で自分の意志を通せないところを悔いて居たんだけれど、それを自分が気になっていた人に叶えて貰えて、最後の最後でたくさんのワガママを叶えて貰って、それがまた主人公の力になる。演劇も魔法の鏡の話も伏線だとは分かるのだけど、それでもこの短い話の中で上手く完結させた所はお見事。靴紐が解ける→三重野が固く結ぶ、これが挫けた主人公の心を三重野が繋いだというささやかな暗示だったことに気づけた時は主人公と一緒に目頭が熱くなった。三重野が「たくさん走っても大丈夫だよ」と主人公の背中を押すのも、温かで優しい後押しだ。

最後に三重野が「よーい、どんっ」をするところも良かった。小学校を思い出した。きっとそれは主人公が走ることを好きになった年代なんだろうなと思って最後の最後まで胸が締め付けられた。


・Story:04 “Summer Holiday”(矢神 由梨子)
これまた上手く心に引っかからなかったのは、ネタが被ってるって点がある。主人公が自分は絵が上手いと思って美大に行ったら井の中の蛙だった事を知るのだけど、それは直前の3章で既にやられていたので「また?」と思ってしまった。でもこれは美大を卒業したシナリオライター殿の感情を落とし込んだのだろうとも感じたけど、でも上手く落とし込めていたようには感じなかった。これが順番が先だったらまた心に引っかかる部分もあったのだろうけど、3章は最初から最後までキレイな流れで完成度が高いので、どちらにせよ4章には不満を持った気が。

お願いシステムの欠陥を上手くついて、誰からも隔絶した世界を楽しんでいた気持ちはわからなくもない。触れなければ傷つくことはないが、触れなければ前に進まないのもまた事実で、由梨子との触れ合いで前に進み始めるのも感動的ではあったんだけど……これまた由梨子への感情移入が出来なかったのが。由梨子が何で挫折したのか、苦しんでいたのかが上手く理解出来なかった。両親との時間があまりなくて、やきもきした感情からお試しのお願いで「みんな居なくなれ」と願ったのか。目立ちたくないとかそういう気持ちからなのか。
たまたま『絵を描くこと』が共通していて、主人公が自分の感覚で由梨子の絵を見て「これは絵を描くのが好きな人の絵だ」と分かるのは、二人の感覚も気持ちも繋がったように思えて良かった。そこから二人の距離が近づいて行くのも良かったんだけど、由梨子は絵で挫折したわけじゃなさそうだし、どこにどう感情移入すれば良いのかがブレていた気がする。あと押しに弱そうで目立つことが嫌いな由梨子が最初何故あんなに主人公に強気に出たのもよくわからない。

そんなわけで題名であるサナララのネタばらしも上手く響かなかった。エメラルドグリーンがテーマに使われてるのはそういう意味だったんだ、と違う納得の仕方をしていたぐらいだ。

あとショタ同人を隠し持っていた点としては同じ二次元ショタコンの身としては親近感を湧くべきところなんだろうけど、単なるネタにされただけなのでなんともかんとも。あと好きしょネタがあったのでねこねこソフトと何か関係があったんだっけ?と調べたけど関係はなさそう。好きしょはショタゲーでもなかった気がする。でも好きしょタイトルを言いたくなるのは分かる、語感が良すぎる。


困ったように『ふぇ…』っていうギャルゲーキャラに久々に出会って懐かしい気持ちになった。ちなみにこれを乙女ゲー主人公でやられると怒髪天衝くんだけどギャルゲーだと好まないけど許せる不思議。
不満が残ってしまったけれど、優しい心地にさせてもらえる作品ではあるし、うめ先生によく似たキャラデザも可愛らしくて良かった。こういう言い方はアレかもしれないのだけど、一息つくにはジャストフィットな作品だった。