全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

17 2019

檜山朔良ルート 感想

ソシャゲの周回に猛烈に飽きてきたので何かADVでもやるか~とふと手にとったダイナミックコードLiar-S編。これの前にやったレヴァフェが中盤辺りの中だるみ、かつ展開もおざなりな部分もそこそこあったのであまり期待してなかったというのが正直なところなのですが…………いやあーーもう最初から最後まで楽しかった。一気にプレイしてしまった。健やかに幸せに生きてくれ檜山朔良よ。


簡単にルートを説明すると、色々あって心が折れた男性を根気強く宥めてあやして体張って立ち直らせる話(性的な意味で)。正直これはレヴァフェでもそうだったし、それが描き切れていたかと言われると結構納得できなくてスルーした部分もあったので、今回も納得しにくい展開になるのかなーと思っていたら、そんなことはなかった。重厚な描写ではないのだけど、一つ一つポイントを抑えて衝突もあり迷いもありながらゆっくり立ち直っていく様を描いてくれるとは思わなくて、この人たちが傷つけ合いながらもどういうゴールを迎えるのか気になるぐらいまでには感情移入ができた。まあ気になるというか、見守りたいという気持ちのほうが強かったのだけれども。

導入部から引き込まれた。主人公は箱入りのお嬢様で、親が敷いたレールに疑問を持ちつつもやりたいことはなく、大学だけは共学に行かせてほしいと努力して行ったものの、これまた親に勝手に二年間留学に行くことを決められる。そんな自分を見失いそうなときにたまたま友人に連れられていったライブハウスできいたS-leeper(後のLiar-S)の音楽と檜山朔良の言葉に励まされる。驚いたのはそのまま留学に行くところで、戻ってきたら名前変わってるしライブはやる気ないしもう何ヶ月も新曲だしてないみたいな腑抜け状態になっていて、好きだったあの音楽はどこに行ったんだ、というところから物語が始まる。主人公が居ない間に元いた環境が大きく変わるのはよくある手法だけど、この長くないとわかっているシナリオでそれを使ってくるところにも少々驚いた。それが短いながらも効果的に働いている。
でもなにより良かったのは、親が勝手に決めた留学に戸惑う主人公にかけた檜山朔良の言葉が希望に満ち溢れていて、前向きで、押し付けがましくなくて、ほんのり暖かかったこと。主人公が前を向いて現状を受け入れることに説得力のあるものだったので、戻ってきた時の落差が効果的に働いて、「一体何があったんだろう」と物語に引き込ませてくれたのが良かった。

そんで、メンバーと幼馴染だったレヴァフェ主人公はともかく、Liar-Sとはメジャーデビュー前にちょろっと話したことがありメンバーの一人の親の取引先関係で顔見知り程度の関係の主人公がどう繋がってしていくのかなあと思ったら、その顔見知り程度の一人の結崎芹さんからLiar-Sと『トモダチ』になってほしいと言われる。(噂のこの人だけ友達がカタカナ表記なのプレイ前から本当に怖い)
メジャーデビューした人気のバンドに「いきなり友達になってほしい」は少々強引な展開ではあるし、レヴァフェを通過してきた私は思わずおセックスのお友達かと思ったら檜山さんもそれにお答えしてくれましたね、「ヤリ友なら困ってねーよ」と。いいぞ!よく言った!それでこそDYNAMIC CHORDの攻略キャラだ!!性病検査に行こう!!

もちろんこれは純粋な意味での「友達」で、まず檜山さんに色々あってやる気がなくなり、それに連なって作詞作曲担当の珠洲乃くんもやってらんねーよ!になり、主にこいつらと友達になって叱咤激励してまた過去の音楽を取り戻させてほしい、とのことだった。噂の結崎さんが本当に全く性的な意味を含まない意味での友達になってほしかったのだと願ったとはなかなか思えないのだけど、これは彼のルートを見て判断することにしよう。(一応本人談では「そういう意味で連れてきた子じゃない」とのこと)
あと、なぜ主人公が友達候補に選ばれたのかを理解させてくれるところも良い。顔が良いことで人気になってしまってやる気のなくなった音に気づかないファンが多い中主人公はそのことに気づいたこと、主人公に『人気バンドだから仲良くなりたい』というやましいという気持ちがないこと……などなどいくらか理由をつけてくれる。また、主人公側も「いきなり友達ってまじかよ……」みたいな感情を抱いて戸惑っていたし、この20歳を超えても箱入りで門限に縛られる純粋培養のお嬢様がどう彼らに立ち向かうのかが気になった。

いやあしかしこの仲良くなれそうにもない良い感じに空気がギスギスした中でどうやって彼らの心を絆していくのかなと思ったら、嫌な顔されたり襲われそうになったりして、当たりは優しくはなかったっすね。まあ当然だ。いきなり過去にちょろっと話した事があるお嬢さん連れてこられて「これお前の友達だから」とか言われても、はあ?とか言う反応されるのもよく分かる。それでも主人公は主人公なりに彼らと仲良くなろうとして、突っぱねられて、傷ついて、やはり友達なんてなれないと断ろうとしても、彼らの音楽が好きだとまた立ち上がって覚悟を決める……という展開には、純粋に頑張れと応援したい気持ちにさせてくれた。このへんの描写が一回二回ではなく結構数回順を追って叩きのめされてるのも良かったなあ。

押して押して、その主人公の純粋な気持ちが伝わったのか檜山さんもちょっとずつ心を開いていく。結崎氏の家に入り浸っていたのを絶妙なタイミングで家に戻されたり、その「家」にも色々トラウマを負うエピソードが盛り込まれていて、伏線を回収していく心地よさもあった。家に入れてくれて主人公が作った料理を全部平らげた瞬間、もう勝ったと思った。胃袋握りつぶさんが如くがっしり掴んで離すなよ主人公、と思ったらほんとに結構しっかり掴んでて笑った。
自己を犠牲にしても檜山朔良を救いたいと思った主人公に、迷い戸惑いながらも歌に力が入らなくなった経緯と心情を吐露するシーンは心に響いた。今まで自分がたどってきた音楽の始まりや、母が病気で亡くなり、姉が結婚し、父が過労で急逝して家に一人取り残されたところで支えにした音楽でも、ファンはビジュアル面でしか見てこず求められるのは売れたメジャーデビュー曲ばかり。支えにしていた心の支柱がほぼ同時に全部折られたことで立ち上がれなくなったのは、なんとも言えない気持ちにさせてもらえた。
彼は自分を弱いと評していたけど、私はそうは思わないなあ。人間いくらか大事にしているものはあるだろうし、家族がその代表である人は多いだろう。かつ音楽も彼にとってはライフワークでもあっただろうし、それだけ音楽に情熱を持って取り組んできたという証拠でもある。思い入れが強ければ強いほど、逆に作用する反動も強いように思える。どちらか片方があればまだ片足でもなんとか立てて居たかもしれないものが、両方なくなって倒れるしかなくなったのを弱いとは思えなかった。
そんで「寂しくなくなるまで側にいる」と門限を無視して身体の関係まで持って彼を支えようとする展開には、セックスしないと寂しさ埋まらないんか?とは思ったけど、性的な関係がある方がグズグズ感が増したのでそれはそれで面白く読めた。あと抱いてる最中の檜山さんの思考も読めるんだが、抱きながら自己嫌悪に陥ってて檜山さんには申し訳ないが笑った。救われたいと思いながらずっと泥沼から抜け出せなくてゴボゴボやってる感じがとても良い。

もちろん愛を語り合ったわけでもなし、主人公に心情を吐けてもそれが根本的な解決には至らず、檜山朔良は自分の歌を取り戻せないままで居た。主人公もただ朔良を慰めることはただ一時の痛みを鈍らせることにしかならないことに気づくのは、お互いぶつかりあって傷ついてそれでもなんとか前を向こうと探っている様を見ているようで妙な感動を得た。
それでも「音楽から離れたい」と希望を持てない檜山朔良を「じゃあ逃げましょう」とスパッと結論を決めて宛てもなく電車に乗って海にたどり着く。純粋培養なお嬢様も揉みに揉まれて男よりも男らしく強くなりました。ちなみに好感度が低い?と『何言ってんだお前』みたいな反応をされて突っぱねられてBADになるのも腑に落ちた。好感度というのは信頼度の高さでもあるように思うし、朔良がどれだけ主人公のことを信じられるかをここで試されているんだろうなと。恋人になるか他人になるかの境目。
もちろん主人公も朔良も、放浪しても逃げ場所なんてないことは理解していただろうし、本気で放浪しようと思っていたのではないと思うけど、一人で居るしかなかった家から連れ出してこれまでの生活とは関係のない別の場所に行って、穏やかに語りながら互いが互いの存在の大きさを確認するシーンは、二人でゆっくり立ち上がれたように思えて穏やかな気持ちにさせてもらえた。お互い苦しみボロボロになりながら前を向けた様子は萌えというよりも感動の方を強く呼んだ。
これで檜山朔良の心の二本柱の一本が完成し前向きな気持ちになれたところで、空気を呼んだ結崎さんがメンバー全員を連れて迎えに来てくれる。そこでまたLiar-Sが再び団結していく様子を見て、「このバンドの音楽を聞いてみたい」という気持ちにもさせられたのが自分でも驚きだった。

ラスト、自分を取り戻した檜山朔良が夏フェスで初めてやったMCでのシーンも、短くて単純な言葉だからこそ、率直でどれだけLiar-Sへの思いを抱えていたかを計り知ることが出来たような気がして明るい気持ちになった。つーかこれまでMCなしでライブやってきたんかそれもすごいな。
プレイしながらずっと、どうしてスパッと「音楽やめる」と言えなかったのかな、と思っていた。本当にすべてを諦めたのなら、ED3のように跡形もなく居なくなるような気がしてならない。諦めたくても諦めきれなくて、それほどLiar-Sでやる音楽が好きで、それでも立ち上がれなくて、でも自分では止めを刺せなくて、誰かにその役目を担ってほしかったのかなと。それがいつかしびれを切らしそうな珠洲乃でもいいし、事務所側でもいい。自分ではない誰かに止めを刺してもらうことでようやく諦められると考えていたのかなあと思うと、どこにも逃げ出せないゴールの見えない暗闇の中でずっと苦しんでいたのかと切ない気持ちにさせられた。
いや、でもそれ以上に迷惑かけた他のメンバーには心から感謝してほしい。特に主人公を連れてきた結崎芹さんにはもっと感謝してもいいと思うぞ。友達どころか嫁連れてきてくれたようなもんだ。

でもハッピーエンド後にファーストキスと同情セックスで処女奪ったことに対して「俺、最低じゃん……」とか言っていたけど、別に初めてじゃなくても普通に最低だからなそれ。
主人公がツッコまなかったから私がツッコまざるを得なかったが、同意があったからまだ良かっただけで、行いは普通にマリアナ海溝レベルで最低ですのでもっといっぱい反省はしていただきたい。
しかしこんな純粋培養のお嬢さんで色々経験してないことはわかっていたのだと思っていたが、そんなこと後々になってようやく分かるくらい夢中になってお励みになっていたんか……と思うとよくわからないが頭が痛くなってきた。もはや今更だが主人公主導で色々意識を叩き直したほうがいいぞ。


・アンコール
タバコを止められない人の話。ヘビースモーカーな朔良がメンバーや主人公の集中攻撃にあってタバコをやめようとするのだけど、禁断症状を抑える方法が主人公へのキスという、マーライオンが如く口から砂が吐ける甘々な話だった。授業中に抑えきれなくなってキスされたときは思わず「勉強しろ!!」と叫んだ。タダじゃないんだぞ大学は。
ちなみに自分はタバコは吸ったことがないんですが、身近にタバコを止めた人、一回止めたけどまた吸い始めた人、朔良のように全くやめようと思ってない人の三種族に出会ったことがある。タバコって不思議なもんでヘビースモーカーだったのにスパッと止められる人もいれば、朔良のように止めたくても止められずに吸い続けている人も居る。今だと徐々にニコチンの量を減らしていく一ヶ月で止められる禁煙グッズもあるらしいのでそちらで頑張ってください。あと副流煙の問題もあるから主人公のこと考えると止めたほうがいいとは思いますよ檜山さん。
主人公の父親が過労で倒れたのは朔良を揺さぶるという意味では効果的だったけど、唐突な印象でどうもなあ……。それよりお宅が大事に大事に育ててきたお嬢さんがバンドマンに付き合っても居ない状態で慰みものとして食われたのを思うと、むしろそれが父親に伝わったんじゃないかと思ってヒヤヒヤした。お父さん、これ知ったら卒倒するんじゃなかろうか。



いやーほんとに檜山朔良さん電気のついてない暗い部屋がよく似合う。出てくる檜山さんの部屋の背景が大体カーテン閉めきってるし部屋なんか暗いしでよく似合ってました。
ここまで大体褒めちぎったように自分でも感じているけれど、正直ツッコミどころは結構たくさんあった。まず檜山家はアパートなんだけどそれが築年数が結構行ってそうなアパートで、そこを家族との場所だとずっと大事にしている朔良は可愛らしくもあったんだけど、顔で売れた部分もあるのにそんな警備ザルそうな家にファンが寄り付かないのも微妙なところだ。寄り付いていたのは過去に関係があった?程度に匂わされていたMERIという芸能人の女の子なんだけど、これも物語に深く関わるわけじゃない。
あと主人公の家庭は門限に厳しく箱入りっていうのが大前提の設定だったのに、なし崩しに身体の関係持った以降は門限を全く気にすることもなくなった。まあこれは朔良が大事だったからと言う理由で納得するにしても、親から入ってた鬼電すら描写されなくなったのはなんかなあ。親を説得する描写でもあれば別なんだけど、それもなかったので。
でもそれをひっくるめて檜山朔良を救う物語はとても楽しかった。檜山朔良がのたうち回り出口が見えないと苦しむ様子はなかなかに胸に響いた。主人公もどうしたら良いのかと暗中模索する姿も応援したくなったし、最後にゆっくり立ち上がるのも心救われた。
惜しむらくは檜山朔良が救われたあとに主人公が何らかの理由で傷つけられたり失われるところがBADで見られなかったこと。こういうキャラが大切なものが出来て、それがまた失われた時にどういった行動に出るのかが気になる。とても気になる。

いやしかしながら未だにアニメの記憶が強い。今更ながらLiar-Sをプレイして、確かに彼らは唐突に失踪しそうだなと思ったし、マネージャーが村祭り回でLiar-Sの演奏を聴いていたく感動していたのもこういう事情があったのを乗り越えてだったのか、と思うとよりアニメDYNAMIC CHORDの理解が深まったような気がしなくもないが勝手にそういう気になっているだけかもしれないのでやはりよくわからない。

次はお噂はかねがねな結崎芹さんに特攻します。絶対殴り合うことになるだろう。良いだろうやってやろうじゃねえか。かかってこい。
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