全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

20 2019

結崎芹ルート 感想

よ、よくもまあ……いたいけな女の子にこんなひどいことが出来ますねえ……。
ちょっと世間知らずで危機管理が甘いだけの箱入りのお嬢様ってだけで与えられる仕打ちがハードすぎるような気がするけど、ハニブラ主人公として生まれた以上これは仕方ない……で済ませられない問題だったので結崎さんにはおおいに反省して頂きたい。みんなもっと主人公に感謝しろ。だいぶ体張ってるぞ。


いやそれにしても、薬盛られるわ強姦されるわ監禁されるわ命に関わる悪戯仕掛けられるわでやりたい放題でしたね。同じお金持ちの久遠さんもまあ歪んでらっしゃいましたけど、ここまで他人の身体も精神も壊すことに躊躇ない人間ではなかった気がする。作中で芹がどうしてここまで酷い事が出来るのかは明かされなかったことだけが唯一といってもいい心残り。開始5分ぐらいで本性表してくれたので大体こういうことされるかもな~的な予測はついて大方それが当たったのでその部分での衝撃はなかったのだけど、一番驚いたのは行いの酷さよりも躊躇いのなさだった。実行に移す前の後悔や躊躇がほとんど見受けられなかった。
主人公がトリガーではあったのだけど、それでもここまで酷い事はなかなか出来ないんじゃないかなと思うぐらいの酷い事はなさっていた。まあこれは本人の素質と言われればそれまでだし、そこが主体のゲームじゃないと言われてしまえば黙るしかなくなるのだけど、ここまで過激なのだから彼が負ってきた人生をもうちょっと垣間見たかったなあという気持ちは拭えなかった。ちょろっとした発言から察するに、Liar-Sのデビューも実力ではなく親の力がきっかけだったらしいので、こういう家族関係でちょくちょく歪んじゃったのかなと脳内補完。

それでも、芹、朔良、主人公を巡った関係性はすごく萌えた。ハイパー萌えた。これぞ運命と呼べるほどの因果関係だった。
芹と主人公は高校生時代に親関係の社交界で出会っていて、自分の生き方に疑問を持っていた主人公の考えに芹は感化される。朔良は芹ががむしゃらになって作ったS-leeperが自分を支えてくれる居場所になる。主人公はそんな芹が作ったS-leeperに出会い朔良の言葉で前を向く。芹が前を向くスタートは主人公が、朔良は芹が、主人公は朔良がきっかけになっている。この関係性はとてもしっくり来たしすごく興奮した。そして全員が全員、Liar-Sというバンドを心の拠り所にしているのに、上手く噛み合わずに互いが互いを傷つけあってボロボロになってるところに超絶萌えた。この組み立てというか、構成は、短いながらよく纏まっていて解けようもない因果でとっても萌えた。
あと序盤も序盤で、芹にけしかけられて朔良の元へ行った主人公が朔良に掛けられた言葉がある。以下のこれは芹が本性を表す前の発言なので、芹がどういうことを考えていたのかおおよそ朔良もわかっていたのだろうなあ……わかっていたんなら止めんかい。いやでも、朔良の発言から、芹自身が主人公の『友達』がこの状況を変えてくれるのだと期待していたから、払い除け着れなかったんだろうなあ。それがとても心地よい苦しさだった。

「……あんた、かわいそうだな」
「芹に騙されて、かわいそうだ」

びっくりすることに、これを受けた主人公が終盤に芹に同じような発言をする。

「……芹君は、かわいそう」
「夢を叶えるために、たくさん、たくさん頑張ったのに、世間に振り回されて、挫折を味わわされた芹君は……かわいそう」

主人公は上記の朔良の発言を意識して吐いた言葉じゃないが、このあとに追い打ちをかけるが如く芹に対して怒涛の「お前はかわいそう」ラッシュを食らわせる。両者に共通しているのは相手に対しての心からの哀れみ。朔良がした発言が、結局巡り巡って芹に到達するのが胸に刺さる……描写はされなかったけど、きっと芹も朔良を『かわいそう』と思っていたような気がしてならない。三人して互いが互いのこと『かわいそう』って思っていたのかと思うと、本人の意図してないところで繋がっている絶対に欠けることのない輪のような関係性に思えて、とても悶えた。これを運命と言わずとして何というのか。そしてこの『かわいそう』にはおそらく、付随して、救ってあげたいって気持ちが含まれているところがミソ。

作中では明言はなかったものの、察するに芹は主人公のことは最初から恋愛的な意味で好きだったんだろう。まあそれまでぼんやり生きてきたらしい芹の意識を大きく変えるほどの出会いだったし、人がごちゃ混ぜのライブハウスの中から居るはずのない人を見つけることが出来るくらいなのだからよほど芹にとって衝撃的な出会いだったと思われる。スイッチが入ったきっかけも朔良から主人公へのキスだったし。芹は洞察力に優れた人なので、朔良を慕う主人公も、主人公に惹かれ始める朔良もわかっていた。自分でけしかけたくせして自分一人が置いていかれる状況に我慢ならなくなったのだろうか。つーかそれだけ他人を見る目に優れているのに、自分のことはまるでわかってないってのがすごいが……芹の奇妙さを表していてそこは結構好ましく見ていた。
主人公を友達としてけしかけた理由は、「目標を失くしたうちのメンバー達に、その平和ボケした心を、すべてめちゃくちゃにされちまえばいい」らしいが、自分の始まりとも言える人間にもう一度救ってほしかったのだとしか感じられなかった。可愛さ余って憎さ1万倍。主人公の姿に憧れて、追いかけて、二度も音信不通になって失われて、再び出会えたと思ったら自分が作った大事なものに最終宣告を下された時の芹の激情は計り知れない。芹だけ「トモダチ」とカタカナ表記だったのは不穏さを演出していて良い表現だったと思う。
朔良に惹かれていたから朔良に傷つけられてしまえ、と思っていたらしいが、側から見ている人間としては、単純に嫉妬としか思えないし、実際そうだったように思う。序盤無理やり朔良にあてがう芹を見て、寝取られ属性でもあるのかと思ったら違った。でも朔良の思いを芹は言わずとも気づいていたから、朔良に対する救われてほしいという思いと、自分が救われたいという思いの軋轢で弾け飛んだ行動がアレだったのかなと。実際朔良ルートでは芹は全く本性を見せないし、また前を向けてバンド活動出来ていることに純粋な喜びを感じられている。これは芹が無自覚無意識的に主人公を好きだったからこそであって、芹が無自覚でなければこの物語はスタートせずに終わると思った。光の速さで監禁してそう。だから、作中で明言されなかったことに妙にとても納得がいった、プレイヤーだけが察することが出来るようになっているのが面白いなと。

正直、狡猾な芹が人を疑うことを知らない可愛らしいお嬢さんを、自分の黒々とした感情へ陥れる様はとても楽しく見れた。朔良ファンからの最初の嫌がらせは芹も予期してなかったみたいだが、それを上手く利用して、自分の立場や状況をフル活用して、主人公の心も身体もボロボロにしていく様子は流れるような動作で面白かった……と評するのは自分でもいかがなもんかと思うけど、面白かったです。主人公の両親があっさり芹に預けるのは流石に単純すぎるしどうかと思うが、まあ長くないお話だし、と思ってスルーした。このゲームにはちょいちょいスルースキルが求められる。
ただ主人公が本当に芹を好きになったのかと思うと、これマインドコントロールじゃないかという思いは消えなかった。強姦に拉致監禁したあとで主人公の髪の毛を洗ってあげるシーンなんかは、DVから抜け出せなくなる人にじわじわなっていってるようで恐ろしくもあって良かった。いやこれを良かったと評するのもアレなんだけど……こういう飴と鞭って洗脳に使われる手法でもあるし、実際主人公はLiar-Sへの思いも重なって『芹の本意はどこか?』を探ろうとする。いやまず、酷い行為という事実が大前提になると思うのだが、優しい部分を見せることでその酷い行為の優先順位が下がる。酷い行為をされたという事実は変わりようもないことなのに、相手の真意が『仕方のない』ことであれば許そうとする受け入れ体制を無自覚で取ろうとしていて、とてもヒヤッとした。
結局主人公は芹の本意を知ることになるし、全部知った上で判断はしたのだけど、芹が他の女といちゃこらしてるところを見せた時の「私以外の女の人を抱きしめちゃ嫌」って発言はついに堕ちたな洗脳完了だなとしか思わなかったし、このままBADEDで芹が主人公をそのまま飼うオチのほうがしっくりきたし興奮した。
あと前述した怒涛のかわいそうラッシュも、同情の意味での方が強くて、芹自身を好きになった感じがあまりしないのがなんともかんとも。主人公自身も「恋なのか同情なのかはよくわからない」と言っていたし、まあ母性と一言で済ませることも出来るけど、そこに萌えがあったかと言われれば微妙なところ。
主人公は「芹がどういう感情を持っていてもそれが嘘でも騙され続ける」と言っていたけど、自分は騙されるのではなく信じ続けることを選んでほしかったなあ。騙されるというのは真実が見えたとしても見えないふりをするような感覚を残すので、騙されることで自分の痛みを鈍らせているように思える。それは相手と対峙することより逃避のように感じてしまう。だから「騙されていてもそれでも信じる」という決意をして欲しかった。そちらのほうが困難なことのように思えるから。それでもこんな行いをした芹を受け入れるには、こう思うことが到底受け入れがたいことをされてしまった主人公の逃げ方だったのかなとも思うと、私の好みでは無いけれど、納得は出来る気がした。

とにもかくにも、芹も主人公という心の支えを得て、腫れ物に触るようにしていたLiar-Sに対して向き合うことを決意する。本音の話し合いだけで解決していたのを見てびっくりした。今まで本音で今後の方針を語ったことなかったんか。それでも彼らに必要だったのは彼らの音楽を心から良いと思ってくれる彼ら以外の存在なので、主人公はLiar-S再生に欠かせない存在だったことには非常に満足でした。

あ、Liar-S=嘘つきたち=何かしら偽っているメンバーたちのこと、という意味なのにはなるほどと思ったけど、嘘つきっていうより本音を隠してるって感じだったので、嘘つきとは思わなかったなあ。騙されたというよりも、表も裏もどちらも芹だった。芹はやはり主人公に救いを求めていたと思うので、『友達になってほしい』は本音の一部だったんじゃないかなと自分は思う。つーか騙されたこともそうだがされた行いもかなり酷いからそこも忘れないでいてほしい。
ちなみにEND2が夏フェスライブ成功のあとに青姦EDだったのは思わず笑ってしまった。もう君たちにセックスするなとは言わないから、せめてお盛るのは建物内と衛生状態のいい場所にしてくれ。いやしかし純粋培養な主人公も色々なものにもみくちゃにされて青姦まで出来るようになりましたと考えると、ここまで清く正しく美しく大事に大事に育ててきたご両親の思いを考えると本当に泣けてくるな…………。


・アンコール
友人が彼氏から大事にされている話を聴いて、主人公が芹との関係の始まりを憂いて「ちゃんと告白してくれるまでは友達に戻ろう」と提案する話。「今更そんなこと言われても」みたいな反応をする芹には大爆笑でしたけど、それよりもすぐ「お前が本当に大事なんだ愛してる」ぐらいのこと言やあいいのに、お互い意地張って一悶着あるところでこのカップルホントに大丈夫か??と思った。いやお互い意地はらなければ話進まないからなのかもしれんけど。
あと主人公と雑貨屋に行ってピアス開けるかどうかみたいな話になった時に「俺もお前の身体に傷つくのは嫌だからそのままでいてほしい」とか言われた時は、こいつ一体何を言ってんだろうと思った。お前はピアス以上の傷をつけたこともう忘れてるのか。
でもよくよく考えてみれば芹視点で「いつかまた壊そうとしてしまうかもしれない。そうなった時、きちんと自分を止められるか、自信がない」とか言ってるし、あんまり反省してない節がある。檜山さんが同情セックスで傷つけてたこと憂いていて反省が甘いと思ったけど、まさか芹がほとんど反省してないとは思わなくてしばき倒したい気持ちに駆られた。
反省していないというよりも罪の意識が薄いというか。主人公が過酷なことをされてもケロッとしてる強靭な精神力と体力と、芹が両親に事実を話して謝ろうとしたところを主人公が止めたらしいので、主人公の態度もそれを助長させているのかとも感じた。まあ親に話したところで芹と二度と会えなくなるだけなのでここは止めるしかないんだろうが……。
卑屈になるほど反省しろとは思わないが、心から悪いと思っていたら『ありのまま自分を受け入れてくれ』みたいなスタンスはやはり違うのではないかなとも。まあそこが芹の魅力であり売りであるからそこは消せないのか……いややっぱマリアナ海溝どころかマントル突き抜けるぐらいまで反省してくれと願うばかりであります。


……プレイ前はもっと自分は怒り狂ってドッタンバッタン大騒ぎな殴り合いにでも発展するのかと思いきや、意外と楽しく読めてしまって、終えてしまった。ただそれと芹の行いを許したかというとそれはまた別問題だ。股間の実りを全部もぎりとってやるぞぐらいのことは思った。
芹が魅力的に描かれていたかというとそこも別問題。これは好みも大きいとは思うが、もっと苦悩して欲しかった。芹が悩んだり苦しむ描写はあまりないので、芹の痛みがこちら側に伝わりにくい。こんな突拍子もないことが出来るまで煮詰まったのか、それとも潜在的にこうだったのかも伝わりづらいし、実際どうったのかもよくわからんから、芹は『こんな酷い事が出来る人間』だという事実だけが残る。でも自分はその裏側を知りたかったな……と思うけど、安価な作品なので、これ以上を求めるのもなあという気持ちも残る。これは似たようなことをレヴァフェのときも思った。
展開がザルな部分もやはりあって、朔良ルートであんなにいちゃついても誰も何も言わなかったのに、このルートだけ急に出てくる朔良ファンのいじめには笑った。君らなんで朔良ルートで出てこなかったんだよずっとあっちのルートで待ってたんだぞ。
あと睡眠薬使ってなにかするのかと思いきや、序盤の一回きりだった。一応今後監禁する流れへの布石だったんだけど、これがもっと酷いことに使われるんだと思いきや意外とそうでもなかったっすね。妙なところで全年齢に配慮したんだろうか。

Liar-Sに主人公が必要な存在になっていく物語かと思いきや、最初から主人公あってのLiar-Sだったと知れるのは面白かった。朔良ルート時の芹の心情と、芹ルートの時の朔良の心情を思うといい感じに心苦しくなれて、その痛みがまた心地いい。いい三角関係っすね。できれば各ルートに入らない状態でLiar-Sが再生して、その状態でグダグダの恋愛関係に発展するところも見てみたかった。

お次は癒やしと名高い珠洲乃さんルートに参ります。この道を通ったのでもう多少ひどい言葉掛けられても優しさを感じてしまいそうだな。
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