全力で頭を抱える日記

おもに乙女ゲームの感想を中心に。ネタバレご注意。

23 2019

TRUEルート +総評

TRUEに相応しい、真実の総まとめなルートでした。このルートを最後に持ってくることでちゃんとこの作品丸ごとが締まった気がする。いや、だが、それでも……恋愛してほしかったなあーーーー。
物語の根幹に関わるネタバレですが、根幹には関わるけど知ったところで魅力が減るようには感じなかった。おおよその謎やそれぞれの行動や立場は明かされるけども、そこ自体は別にこの作品の魅力ってわけではないと感じた。


●TRUEルート(春日ルート)
なんといっても……恋愛してほしかったっすねえ。ええやないすか禁忌な恋愛。駄目か。何故駄目なんだ。誰が駄目といっているんだ。出てこい。

自分は最初、花咲ける青少年の立人のような奴かと思っていたのだが、全然違った。そもそも攻略できないって時点で、何らかの血縁関係者なんじゃないかと考えていたら、大方の予想通り実の兄の東条ツバメさんとのことでした。で、何故春日と名乗ってヒバリの執事をやっているのかというと、これまたハチャメチャな奴で笑った。なんでも幼少期から頭がよく他人を見下して居たのだが、妹が生まれた瞬間、妹に執着して子育ても全部自分がやると言い出し、周りの大人たちがそれにドン引きして引っ剥がすために取った行動で一時的に離れ離れになったが、見事に追いかけてきて離れ離れになったときの事故で記憶をなくしたヒバリの執事のポジションをゲットしたのだとか。

論理的に生きてきた人間が、特に理由もなく、赤ん坊の妹を見て「可愛い」という感情を覚えて本能に目覚める点は不思議と腑に落ちた。論理的っていうか感情が乏しい感じの人間が、人間として生きていく上で抗いようもない本能みたいなものを爆発させる反動みたいなものだったんだろう。彼が執着してまでヒバリを追いかける理由はある意味人間らしい感情の延長線上にあって(もちろん度は激しく越しているが)、バリバリならではのポップでありながらも明るすぎず暗すぎない程よいテンションで描かれていったのは楽しかった。
お互いがお互いに恋愛感情を抱いていなかったのは、これまた本能的な意味で兄妹だとお互いわかっていたからなんだろうが……個人的には恋愛混ぜてくれよ乙女ゲーなんだから、となんとも理不尽な理由で恋愛展開を望んでいた。ええやないすか禁忌で惹かれ合う二人。駄目か。何故だ。(二回目)

大我さんのルートで「ヒバリには依存体質がある」とどの口ほざいていってましたが、妹が物心付く程度まで彼がヒバリを育て彼に執着するように出来上がって居たし、春日として現れたときも自分に執着するよう育てていたから、あの発言ってホント卑怯だなと今更ながらに思った。全部わかっててあえてヒバリを依存体質に仕立て上げたんだろうが、ツバメはそれでも良いと思って行っていたのだから、『ヒバリのため』にヒバリを可愛がっていたのではない気がした。だから、汐音ルートで『ヒバリが堕落したら離れる』発言がとてもよく納得できた。全部自分のためだったからだ。
ヒバリを『可愛い』と思えたのは彼にとっての本能の芽生えみたいなものだったのかもしれないが、ツバメは一貫して自分の為に動いている。妹を可愛いと思えても、妹のために何かをしてあげても、口では妹のためとも言おうとも、それはすべて『自分が理想とする妹を作り上げるため』にほかならない。ラストシーンで「こんなに可愛いからただのご令嬢なんかで満足できない」から東条家の女帝に仕立て上げたいのだと本音を漏らすシーンを見て、どこまでも突っ切ったやつだなと思いつつも、いずれまた何かしらの軋轢を生みそうな気がしてならない。まあでもそれでも東条家はなんやかんややりながら良い方向へ進みそうな気がするなあ。

ツバメのおかげで拗れた人間関係が修復していき、ツバメとの関係も修復するのはなんとも楽しかったし、上述したように、締めのルートに相応しい総まとめっぷりで、この作品を綺麗かつ明るく終えることが出来たのがなんとも嬉しかった。ヒバリの両親もご健在のようだし、本編でもあったように「俺たちの戦いはこれからだ!」なENDだったけれど、なんとも楽しく明るく素敵な未来を想像させるよい締めのお話でした。


【サブキャラ雑感】
・主人公(東条 ヒバリ)
我らが主人公ヒバリ嬢。彼女はもう可愛かった。とにかく可愛かった。演じられた藤田咲さんの演技もかなり光ってらっしゃった。ときにいじらしく可愛く、ときにご令嬢とは思えない腹からのツッコミ、力強い絶叫などなど……彼女に声を付けてくれたのは英断だったと思う。テキストだけでは彼女の性格は違って見えた気がする。ボイスを付けてくれた制作陣にただただ拍手。
大企業のご令嬢とは思えないぐらい純粋に育っているし、悪く言えば大勢の人の上に立てるような精神的な強さは持ち合わせていない。周りが大人で色々察しているからか、彼女を支えようと躍起になっている。ツンケンしつつも一人で立ち上がろうと頑張る意志がわかるから、そんな彼女に惹かれて支えようとする人間がいるのもよく分かる。
よく惑ったり悩んだり落ち込んだり怒ったりしていたけれど、ある意味とても年相応でとにかく可愛らしかった。これからもコブシが効いていてうねりのある力強いツッコミをする彼女で居て欲しい。

・鹿野 紬
自分の立場を受け入れ、それでもなんとか人生を楽しく生きようとしている子。ゴシックロリータなオタクさんで主人公の乙女ゲー環境にうっとりしながら状況を楽しんでる様子はとても共感を呼んだ。許嫁関係の話は印象に残ったけれど、彼女も彼女でなんだかんだ幸せに素敵な家庭を築きそうな気がするなあ。精神的大人であるがゆえに、色々好きなものを諦めるという大切なものを削ぎ落としてきたのだろうなと察せられる面もあったので、もし次があるのなら彼女が主体なお話も見てみたいなあと思った。私はこういう気丈なようで居て隠れて傷ついているタイプに弱い。あと美しい日本語が大好きな人間としては彼女が話すお嬢様言葉が大好きでした。

・有村 乃愛
表はおとなしい女子高生、裏では男漁りが趣味なギャルというなんともギャップが美味しい友人その2。なんだかんだ言いながらもヒバリ嬢の相談に乗ってあげてるところは優しい。主人公にRABIという自作ロボットを授けるんだが、相手企業かなんかのスパイになるのかな?と思ったら全然違って最後までいい人だった。彼女も思考が大人で紬ちゃんとは違った意味で将来を見据えているのは印象的だった。

・東条 鷹宗
物語のラスボスなようで居て実は優しいおじいちゃん。全部孫のためっていうのは察せられたので、その意志に気づいていないのが一番気づいて欲しいヒバリ嬢だったのはなんだか泣ける。ヒバリの父親(おじじの息子)も変わり者で孫も変わり者で、なんだか相当な苦労人だと思った。みんなもっとご老人は敬ったほうがいいぞ。

・カズ(真崎千哉)
どちらかとえいばこの人もツバメ寄りの人間。人の感情を察することは出来るがあくまでもそれは論理的な面で、ひとの気持ちに寄り添う事は出来ない。そういった点ではお祖父様がいっていた通りヒバリとの相性は合わないんだけど、なんだかんだヒバリに振り回されて色んな人からダメ出しされて恋愛で変化していくところも見てみたかったなあと思った。良いキャラをしている。
人の気持ちに寄り添うことはなかなか得意じゃなさそうではあるが、優しい感情を持ち合わせていないわけではなくて、弟に対する愛情をちゃんと持っていたところもある。ただその愛情表現がドヘタなだけで。ていうかこの作品、愛情表現拗らせ達のお祭りでしたね。


●総評
・システムについて

使いやすくはないが使えないことはない。いつものオトメイトシステム。
上述したように有村さんからRABIというロボットをもらってその位置を操作して婚約者候補たちの日常が見られるが、全く操作しなくてもいつの間にかコンプしていたのでシステムと呼ぶにはかなり物足りない。
バリケードボードはスキップがいちいち止められるのでとても使いづらかった。
選択肢によるバリケードバトルはちびキャラ演出のためのものなので、可愛く見られるところもあれば、話の腰を折られることもあると思った。一方自分は初回から無意識操作でこのバトルをスキップに設定したらしく、このシステムが存在したことに気づいたのは、今総評を打つために開いた公式サイトで知ったので別に無きゃ無いでも楽しめました。

・グラフィックについて

かねてより麗しいと評判だった薄葉カゲロー氏のイラストを初めて乙女ゲーで体感したが、評判通り威力は抜群だった。キャラデザも良かったが、何よりも壱哉ルートの壱哉の表情はこのイラストレーターだからこそ、というのを感じられた気がしてとても楽しみました。素晴らしく美麗なイラストでした。
ちなみにちびキャラ演出も、作品のポップさを表現していて楽しく可愛く見ることが出来ました。スチルまで行かなくとも入ることで状況が一見出来るし、見れて良かったと思える良い演出になっていた。

・シナリオについて
びっくりすることに、とても完成度が高かった。私がオトメイトのゲームにこんなことを思う日が来ようとは。私がいつもオトメイトゲーに思っていたのは、萌えが凄くて完成度を殴り倒している、だったのだけど、このゲームは話の完成度が抜群に良かった。

何よりも面白かったのは、乙女ゲーにおいてある程度の男性に対する「格好良さ」が表現されていないといけないものだとは思うのだが、このゲームはそれを敢えて捨てるような設定を盛り込んで、格好良さとは別のやり取りで主人公との恋愛を描いていった。一風変わってはいるし、萌えを主体にした乙女ゲーを数多く作ってきたオトメイトが、まさかその格好良さを捨てででもある程度話をまとめて、プレイヤーに「このキャラクターとはどういうものか」を考えさせてくれたことが、なんだかとても嬉しかった。楽しい、面白いという感情はゲームをしていて主体になる感情ではあるのだけど、「嬉しい」という感情を主体的にくれたゲームはなかなか無くてそういった意味では思い出の一作になった。
もちろんかっこよさもあるにはあるし、「かっこ悪さ」が可愛らしく見える女性特有の感情をくすぐられたような気もして、そういう意味でも嬉しかったし、楽しかった。

ヒーローと思わせつつ真逆の行動に走りだすひともいるし、結構錯乱するひともいるし、明後日の方向の人もいるし、なかなか個性的な面々だが、その個性的な面々をちゃんとプレイヤー側に理解させてくれて納得させてくれたのは驚きもしたし、これがまた色々「乙女ゲーとは何か」を考えさせてくれた気がした。さらにはその乙女ゲーのアンチテーゼ的な展開を盛り込んで、この作品なりにきちんと答えを示してくれたことも、なぜだかありがたいという気持ちにもなった。

敢えて悪く言えば、物語が重厚というわけではないし、心理描写が巧みだったというわけではない。しかしそれを逆手に取るがごとく、展開は飽きさせずにテンポよく進んでいくし、冗長にならずに短い時間で物語に集中できたところも良かった。私がシナリオ面でマイナスに感じるようなところも計画的にそうしているんだろうなと察せられて、そういった意味でもとにかく感服でした。

萌えというよりも各キャラの生い立ちや、何故そのキャラの『今』があり何を考えて何故その言動に至ったか、がとても丁寧に描かれていて、きちんと丁寧に彼らを作り上げてくれたことに嬉しいという感情が発生したのかもしれない。
最初から最後までまるっと丸ごと明るく楽しくときにシリアスでバタバタなバリバリの世界観を楽しむことが出来て、この作品に出会うことが出来てよかったと心から思えた。



永遠に6人で生活しててくんないかなあ……。
共同生活本当に楽しかったです。というか男性陣が仲良くなりすぎてて最初めっちゃヒバリ嬢と一緒に疎外感を感じていたんだが、あまりにも仲良すぎてむしろもうそのまま仲良くしていてくれ……と思うようになった。男性の友情尊いし可愛い。ずっと見ていられる。

あくまでも目線的な意味での主人公は東条ヒバリだけども、どのルートも攻略対象たちが主人公になっていたし、その視点がまた新鮮で楽しかった。オトメイトゲーにないシナリオの構成の仕方で、それが乙女ゲーでもなかなか見るものじゃなくて驚いたと同時にとても楽しかったと言いますか……。一視点だけでなく両側の視点で描くことで、それがまた効果的に現れていた気がする。

オトメイトのゲームを楽しい面白いと思うことは数多くあったし、萌えもたくさん貰っていたが、まさかこの作品でそれとはまた違った完成度の高さを見せてくれるとは思わなかったし、萌えやときめきを描くのが上手いオトメイトのゲームで、恋愛とは違う感情をくすぐられる事になるとは思わなかった。
特に、乙女ゲーにおいての攻略対象の『格好良さ』ってなんなんだろう?ということを考えさせられた。主人公を守ってくれたら格好いいのか、主人公だけを愛し、愛を囁いてくれたら格好いいってことになるのか。自分を確立させて、立ち上がることもまた、『格好良さ』の一つであるような気がしたし、互いが互いに相手のことで傷ついたり、理解できなくて苦しんだり、理解できるから苦しんだりしているところはなかなか描かれない面で感心しきりだった。
いや、制作陣がそこまで考えて作っているとは思わないが、とにもかくにも私はこのシナリオが凄く好きだし、このゲームでオトメイトを見る目がとても変わったのが自分でも驚きです。

次オトメイトゲーやるときに全く視野に入れてなかったゆのはなやレンドフルールを購入しようかどうか迷うぐらいには結構興奮してプレイできた。縮小気味な乙女ゲー業界で、自分もやや離れ気味だったが、この作品で『乙女ゲーはやっぱり楽しい』と思わせてくれたところは大きかった。良いものを見させて頂けました。
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